図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2
報道・広報
取材した出来事をニュースで伝えたり、会社や自治体の取り組みを分かりやすく知らせたりする仕事です。高校の国語で学ぶ話し言葉と書き言葉の違いや、相手に合わせた言葉選びが、毎日の原稿づくりで生きています。

ひとことで言うと
校内放送で、明日の連絡を全校に伝える
校内放送は、聞く人が原稿を見られず、一度しか聞けません。だから文を短くし、聞き違えにくい言葉を選びます。ニュースや広報の仕事は、これを何十万人もの人に向けて行うものです。

01
どんな仕事?: 書いて・話して・組織から伝える
報道の仕事の中心は、新聞社や放送局の記者とアナウンサーです。記者は取材して記事やニュースの原稿を書き、アナウンサーはそれを声で伝えます。中継で現場の様子を話したり、インタビューで話を聞いたりもします。
広報は、会社や自治体、大学などで、自分たちの取り組みを外に知らせる仕事です。報道機関に向けた発表資料を書き、広報紙や Web サイト、SNS で発信します。記者とは逆に、取材を受ける側に立つ仕事でもあります。
高校の「現代の国語」では、話し言葉と書き言葉の特徴や役割を学びます。目で読む文と耳で聞く文の違いを知っていることが、この仕事の出発点です。
書く・話す・言い換えるが、報道と広報の両方で毎日使われます。
図解報道・広報で使う高校の国語
- 話し言葉耳で一度で分かる原稿に直す
- 要約する発表資料から大事な点を抜き出す
- 論理的に読む資料の数字と主張を確かめる
- 話すニュースを読み、中継で伝える
- 言葉を選ぶ役所の言葉を日常の言葉に直す
- 敬語広報の文の丁寧さをそろえる

02
話し言葉: 耳で聞いて一度で分かる文に
放送のニュースは、聞き返すことができません。NHK には、放送で使う言葉を話し合う放送用語委員会があります。2025 年 12 月に福岡放送局で開かれた委員会では、九州と沖縄の放送局のニュースが取り上げられました。
その一つが、催しを伝えるニュースの最初の文です。「骨粗しょう症や妊娠・出産への影響など、健康障害を起こすおそれがある若い女性の『やせ』について正しい知識を得てもらおうという催しが、福岡市で開かれました。」という一文でした。長い修飾の言葉がすべて「催し」にかかり、外部の委員から「頭に入りにくい」と指摘されました。
言い換えの案では、文を 2 つに分けました。まず「若い女性の『やせ』は、…健康障害を起こすおそれがあります。」と言い、次の文で催しのことを伝えます。何が何にかかるかを確かめる文法の力が、そのまま原稿を直す力になります。
同じ委員会では、名詞で文を終える体言止めも話題になりました。多く使うと、聞く人に推論を強いて理解の負担が増す、という意見です。和歌の技法として習う体言止めも、ニュースでは使いどころを選ぶ必要があります。
修飾が長い文は、分けて並べると耳で一度で分かります。
図解耳で聞くニュースの文に直す(例)
- 1何が何にかかるかに線を引く
- 2主語と述語を一組ずつの文に分ける
- 3伝えたい事実を先の文に置く
- 4声に出して、一度で分かるか確かめる

03
広報: 役所の言葉を、伝わる言葉に直す
国の文書の書き方の手引きとして、文化審議会は 2022 年 1 月に「公用文作成の考え方」をまとめました。この手引きは、広報やパンフレット、SNS などを「解説・広報等」と呼んでいます。そこでは、特別な知識を持たない人にとっての読みやすさを優先するとしています。
言い換えの例も載っています。役所の中でよく使う「喫緊の課題」は「すぐに対応すべき重要な課題」に、「可及的速やかに」は「できる限り早く」に直します。文化財保護法の言葉の「埋蔵文化財包蔵地」も、多くの場合は「遺跡」と言えば伝わります。
記者に向けて書く報道発表資料についても、必要に応じて法令に特有の用語をかみ砕いた表現に直すよう求めています。専門の知識はなくても関心のある人に、どう伝えるかを工夫するためです。記者は、その資料を読んで要点をつかみ、記事やニュースにまとめます。
敬語にも目安があります。文末は「です・ます」を基本とし、「ございます」は使わないとしています。「御利用たまわる際には」とせず「利用される際には」と書くなど、丁寧すぎない敬語で正確に伝えるのが広報の文です。
広報では、正確さを保ったまま、読む人の言葉に置き換えます。


04
地方の放送局のアナウンサーの 1 日(例)
ここでは、地方の放送局で、夕方のニュース番組を担当するアナウンサーの 1 日の例を紹介します。スタジオでニュースを読むほか、町に出て取材やリポートもします。
放送の前には、原稿を声に出して読む下読みをします。読み方やアクセントに迷う言葉は、辞典で確かめます。耳で分かりにくい文があれば、記者や上司と相談して直すこともあります。
放送のあとは、読み間違いや言いよどみがなかったかを振り返ります。災害などがあれば予定を変えて、すぐに情報を伝えます。働き方は、放送局や担当する番組によって大きく異なります。
声に出す前に、言葉を確かめる時間が長い仕事です。
図解地方の放送局のアナウンサーの 1 日(例)
- 9:30打ち合わせ今日のニュースと担当を確かめる
- 10:30取材商店街の新しい取り組みを撮影する
- 12:00昼休み
- 13:30リポートを書く1 分半で話す原稿をまとめる
- 15:30下読み読み方とアクセントを辞典で確かめる
- 18:10ニュース番組スタジオでその日のニュースを伝える
- 19:30振り返り録画を見て読み方を見直す

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、放送部や新聞部の活動がそのまま練習になります。NHK 杯全国高校放送コンテストには、アナウンス、朗読、ラジオやテレビのドキュメントなど 6 つの部門があります。2026 年の第 73 回は、7 月に東京で開かれました。
報道の会社では、文学部、社会学部、法学部、理系の学部など、さまざまな学部を出た人が働いています。大学の放送研究会や新聞会で経験を積む人もいます。広報は、会社や自治体に入ってから広報の部署に配属される形がよく見られます。
人の話を聞くのが好きな人、相手に伝わったかを気にかけられる人に向いています。経験を積むと、記者は専門の分野を持って解説する立場に、アナウンサーは番組の進行役やナレーションに進む道があります。自治体の広報は、災害のときの情報発信にも関わります。
声に出す・書く経験を、高校のうちから重ねておくと強みになります。
図解報道・広報の仕事への道(例)
- 1高校で学ぶ放送部・新聞部で伝える練習
- 2大学で広げる専門の学問と放送研究会など
- 3入社・採用新聞社・放送局・会社・自治体
- 4現場で鍛える取材・中継・発表資料づくり
高校生のうちに試せること
ニュースの文を 2 つに分けて読む
新聞の記事から、修飾の言葉が長い一文を選びましょう。何が何にかかるかに線を引き、2 つの文に分けてから、元の文と声に出して読み比べると、耳で分かりやすい文の形が見えてきます。
役所の言葉の言い換え表をつくる
市役所や県のサイトから、ふだん使わない言葉を 5 つ集めましょう。「公用文作成の考え方」の例を参考に、中学生にも分かる言葉に言い換えた表をつくると、広報の仕事の目線で文章が読めます。
公用文作成の考え方(文化庁)放送用語委員会の記録を読む
NHK 放送文化研究所のサイトでは、放送の言葉を話し合った記録や、読み方の疑問への答えを読めます。「0 はゼロかレーか」など、気になる話から読んでみましょう。
ことばの研究(NHK 放送文化研究所)
「報道・広報」に関連するコミュニティ
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よくある質問
話すのが苦手でも、報道や広報の仕事はできますか?
できます。記者や広報の仕事の多くは、取材して書くことです。アナウンサーをめざす人も、原稿の下読みや発声の練習を重ねて、少しずつ力をつけていきます。
SNS での発信も、広報の仕事ですか?
はい。「公用文作成の考え方」も、府省庁の SNS アカウントを、広報やパンフレットと同じ「解説・広報等」の例に挙げています。SNS の広報では、一文をより短くすべきだという指摘も紹介しています。
記者やアナウンサーには、どの学部から進めますか?
決まった学部はありません。さまざまな学部の人が働いています。大学で得意な分野を深めておくと、取材や解説で強みになります。



