図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4
法律・行政の仕事
法律の条文や契約書を一語ずつ正確に読み、意味が一つに決まる文書をつくる仕事です。高校の国語で練習する、接続の言葉に注意して読む力や、相手に合わせて書き分ける力が、そのまま仕事の道具になります。

ひとことで言うと
誰が作っても同じ味になるレシピ
料理のレシピに「塩少々」と書くと、作る人によって味が変わります。法律や契約書は、誰が読んでも同じ意味に取れるように書かれています。言葉一つで、人の権利や義務が変わるからです。

01
どんな仕事?: 法律の言葉で読む・書く・説明する
法律の言葉を毎日使う仕事には、弁護士、公務員、行政書士などがあります。弁護士は、契約書を読んで危ない点を見つけ、裁判所に出す書面を書きます。公務員は、条例の案や役所の通知、住民へのお知らせをつくります。
行政書士は、お店を開くときの営業許可の申請など、役所に出す書類をつくる専門職です。契約書などの書類もつくります。依頼した人の話を聞き、法律の決まりに合う形の文書に整えます。
法律と国語のつながりは、法律そのものにも表れています。裁判所法 74 条は「裁判所では、日本語を用いる」と定めています。一方で、「日本の国語は日本語である」と定めた条文はありません(参議院法制局)。
法律の仕事は、読む・書く・説明するのすべてが言葉でできています。
図解法律・行政の仕事で使う高校の国語
- 論理的に読む長い条文を区切って意味をとる
- 言葉を選ぶ急ぐ度合いや条件を言葉で書き分ける
- 書く意味が一つに決まる文書をつくる
- 書き分ける法令の文を広報の文に言い換える
- 話す・聞く依頼者や住民の話を聞いて説明する
- 古典を読む文語体で書かれた昔の法令を読む

02
書く: 「又は」と「若しくは」で、選ぶ数を一つに決める
法令では、「又は」と「若しくは」が「どれか一つ」を、「及び」と「並びに」が「どれも」を表します。結び付きに段階があるときは、小さいまとまりを「若しくは」や「及び」、大きいまとまりを「又は」や「並びに」でつなぎます。
文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022 年)には、試験の科目を例にした説明があります。「英語若しくは中国語又は数学若しくは理科を選択し受験する。」は、「英語か中国語」か「数学か理科」のどちらかの組を選び、その中の 1 科目を受けるという意味です。「鉄道の整備及び安全の確保並びに鉄道事業の発達及び改善に配慮する。」なら、「整備と安全の確保」と「発達と改善」の 2 組すべてに配慮する、という意味になります。
同じ手引きは、広く一般に向けた広報では、「並びに」や「若しくは」を使わないよう工夫するとしています。公務員は、通知では法令の書き方を守り、住民へのお知らせでは同じ中身を日常の言葉に直します。一つの中身を、読み手に合わせて 2 通りに書き分けるのが行政の文章の仕事です。
行政の文章には、法令の正確さと広報の分かりやすさの両方が求められます。
図解法令の書き方と、広報での言い換え
法令・役所の文書
- 物理、生物、化学又は地学を選択する
- 委員及び臨時委員
- 可及的速やかに
広報での言い換え
- 4 科目のうち、いずれか 1 つを選ぶ
- 委員と臨時委員の両者
- できる限り早く

03
言葉を選ぶ: 「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」
「すぐに」を表す法令の言葉は、一つではありません。「公用文作成の考え方」によると、最も遅れが許されないときに使うのが「直ちに」です。それより差し迫っていないときは「速やかに」、正当な理由があれば遅れが許されるときは「遅滞なく」が使われることが多い、と説明しています。
たとえば道路交通法 72 条は、交通事故があったとき、運転者は「直ちに」運転をやめて、けが人を助けるなどの措置をとるよう定めています。人の命に関わるので、少しの遅れも許されない場面です。
条件を表す「場合」と「とき」にも決まりがあります。条件が二つ重なるときは、大きい条件を「場合」、小さい条件を「とき」で表します。「公用文作成の考え方」の例は、「該当する漢字が常用漢字表にない場合であって、代用できる同音の漢字があるときは」です。弁護士や公務員は、こうした言葉の違いを意識して、契約書や条例を読み書きします。
急ぐ度合いや条件の大きさまで、言葉で書き分けます。


04
町の行政書士の 1 日(例)
ここでは、町で事務所を開く行政書士の 1 日の例を紹介します。お店や会社を始める人の相談にのり、役所に出す書類をつくって申請します。
書類をつくる前には、依頼した人の話をよく聞き、何をしたいのかを確かめます。そのうえで、法律や役所の手引きを読み、必要な書類と手順を整理します。
法律や手続きは、改正で変わることがあります。新しい決まりを読んで確かめる時間も、仕事の一部です。働き方は、事務所や得意な分野によって異なります。
相談を聞き、法律を読み、書類に整える流れをくり返します。
図解町の行政書士の 1 日(例)
- 9:00メールの確認相談の予約と書類の進み具合を見る
- 10:00相談飲食店を開きたい人の話を聞く
- 12:00昼休み
- 13:00書類づくり営業許可の申請書を整える
- 15:00役所で申請窓口に書類を出し、担当者と話す
- 16:30契約書の案言葉の抜けや重なりを確かめる
- 17:30法令を調べる改正された決まりを読む

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、評論や説明文を、主語と述語、接続の言葉に注意して読む練習が役立ちます。小論文では、主張と根拠を分けて書いてみてください。住んでいる市の条例を一つ読んでみるのも、よい練習です。
弁護士になるには、法科大学院を修了するか予備試験に合格したうえで、司法試験に合格し、司法修習を終えます。公務員は、国や自治体の採用試験を受けます。行政書士は、行政書士試験に合格して登録します。法学部で学ぶ人が多い一方、ほかの学部から目指す人もいます。
細かい言葉の違いが気になる人、人の困りごとを聞いて一緒に考えられる人に向いています。経験を積むと、弁護士は会社の法務や専門の分野に、公務員は条例づくりを受け持つ法規の担当に進む道があります。行政書士には、得意な手続きを決めて事務所を開く人もいます。
言葉に注意して読む練習は、高校の国語の授業から始められます。
図解法律・行政の仕事への道(例)
- 1高校で学ぶ条文や評論を区切って読む
- 2大学で学ぶ法学部などで法律の読み方を
- 3試験に合格司法試験・公務員試験・行政書士試験
- 4仕事に就く事務所・役所・会社の法務など
高校生のうちに試せること
e-Gov 法令検索で「直ちに」を探す
e-Gov 法令検索で道路交通法を開き、ページ内の検索で「直ちに」を探しましょう。どんな場面で使われているかを書き出すと、法律が急ぐ度合いを言葉で書き分けていることが分かります。
道路交通法(e-Gov 法令検索)条例とお知らせを読み比べる
住んでいる市や県のサイトで、条例の本文と、その条例を説明するお知らせのページを見比べましょう。「及び」や「又は」が、お知らせではどう言い換えられているかを探してみてください。
行政書士への相談の例を見る
日本行政書士会連合会のサイトには、行政書士に寄せられる相談の例が並んでいます。飲食店の開業や相続、契約書など、暮らしの中にどれだけ多くの書類があるかが分かります。
こんなときにご相談を(日本行政書士会連合会)
「法律・行政の仕事」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 55 件から探せます。
よくある質問
法律の文章は、なぜあんなに読みにくいのですか?
誰が読んでも意味が一つに決まるように、言葉の使い方を細かく決めているからです。その代わり、広く一般に向けた広報では、「並びに」や「若しくは」を使わずに言い換える工夫をします(公用文作成の考え方)。
弁護士と行政書士は、何が違いますか?
弁護士は、裁判で依頼した人の代理人になったり、争いごとの交渉をしたりします。行政書士は、役所に出す書類や契約書などをつくる専門職です。どちらも、依頼した人の話を聞いて言葉で形にする点は同じです。
公務員の仕事でも、法律の知識は必要ですか?
必要です。役所の仕事は、法律や条例にもとづいて行います。許可を出すときも、お知らせを書くときも、もとになる条文を読んで確かめます。

