図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3
教える・本と人をつなぐ
国語の先生として言葉や作品の面白さを伝えたり、図書館で本と読む人を結びつけたりする仕事です。高校で古典を読み、意見を書いた経験が、そのまま授業づくりや本の紹介に生きます。

ひとことで言うと
好きな漫画を、友だちにすすめるとき
好きな漫画をすすめるときは、相手の好みを考え、いちばん面白い場面をひと言で伝えます。国語の先生や司書は、これを授業や図書館で、毎日たくさんの人に向けて行います。言葉で「読んでみたい」を引き出す仕事です。

01
3 つの仕事: 国語の先生・司書・日本語教師
国語の先生は、中学校や高校で、評論や小説、古文・漢文、話し合いや作文を教えます。教科書の文章を深く読み込み、生徒に何を問いかけるかを考えて授業を組み立てます。
司書は、図書館で本を選んで並べ、紹介し、調べものを手伝います。学校の図書館の仕事を専門に受け持つ職員は、学校司書と呼ばれます。文部科学省の調査では、学校司書を置く公立の高校は 71.6% でした(2023 年 5 月時点)。
日本語教師は、日本語を母語としない人に日本語を教えます。2024 年 4 月には、国家資格の登録日本語教員の制度が始まりました。どの仕事も、言葉で相手の「分かった」「読みたい」を引き出す点が共通しています。
教える相手は違っても、言葉で「分かった」を引き出す仕事です。
図解国語の力で教える・つなぐ 3 つの仕事
国語の先生
- 中学・高校で国語を教える
- 問いかけで作品の読みを深める
- 作文や意見文に助言を書く
司書・学校司書
- 本を選び、並べて紹介する
- 調べものの相談にのる
- 授業で使う資料をそろえる
日本語教師
- 日本語を母語としない人に
- 文法や敬語を分かりやすく
- 国家資格の登録日本語教員

02
国語の先生: 『徒然草』の笑いどころを問いで探す
『徒然草』第 52 段は、仁和寺の法師の話です。年をとるまで石清水八幡宮に参ったことのない法師が、ある日一人で歩いて出かけました。ふもとの極楽寺や高良神社を拝み、これで全部だと思って帰ってしまいます。
法師は仲間に「聞いていた以上に尊かった。それにしても、みな山へ登っていたのは何だったのだろう」という意味のことを話しました。本殿は、その山の上にあったのです。兼好は最後に「少しのことにも、先達はあらまほしきことなり」と書いています。
先生は、いきなり教訓を説明しません。「法師はどこを拝んだのか」「なぜ山に登らなかったのか」と、授業の問いかけ(発問)を順に重ねます。生徒が本文から法師の勘違いに気づくと、教室に笑いが起きることもあります。約 700 年前の話を、自分にも通じる話として読めるようにするのが発問の力です。
問いを順に重ねると、生徒が自分で古文の面白さを見つけます。
図解『徒然草』第 52 段の発問(例)
- 1声に出して読み、話の流れをつかむ
- 2「法師が拝んだのはどこか」を本文から探す
- 3「なぜ山に登らなかったのか」を話し合う
- 4自分が早合点した経験と比べてみる

03
本と人をつなぐ: 高校生の半分は、1 か月に 1 冊も読まない
全国学校図書館協議会の「学校読書調査」によると、2022 年度に 1 か月間に本を 1 冊も読まなかった高校生は 51.1% でした。中学生は 18.6%、小学生は 6.4% です。国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」(2023 年 3 月)が、この数字を示しています。
ただし、悪いことばかりではありません。高校生のこの割合は、2001 年度には 67.0% でした。1 か月に読む本の平均も、2001 年度の 1.1 冊から 2022 年度は 1.6 冊に増えています。計画は、探究の学習などで学校図書館や図書館を使う取り組みを進めるとしています。
学校司書の働き方は、学校の種類で違います。文部科学省の 2023 年の調査では、公立の高校の学校司書の 95.4% が 1 校だけを受け持っていました。小学校では 66.6% で、いくつかの学校をかけもちする人も少なくありません。
ここで生きるのが、高校の国語で身につける要約の力です。先生や司書は、本の面白さを短い紹介文やカードにまとめ、手に取るきっかけをつくります。あらすじを全部書かず、いちばん面白いところの手前で止めるのが、紹介のこつです。
本の面白さを短い言葉にまとめる力が、読むきっかけをつくります。


04
中学校の国語の先生の 1 日(例)
ここでは、公立中学校で 2 年生の国語を受け持つ先生の 1 日の例を紹介します。中学校の国語には、毛筆と硬筆を使う書写の授業もあります。
授業の準備では、教科書の文章を何度も読み、生徒がどこでつまずきそうか、どんな問いなら話が広がるかを考えます。生徒の作文には、よいところと直すところを短い言葉で書き添えます。
放課後は、部活動の指導や会議、次の授業の準備にあてます。働き方は、学校によって異なります。
授業の外でも、生徒の言葉に向き合う時間があります。
図解中学校の国語の先生の 1 日(例)
- 8:10朝の打ち合わせ職員室で今日の予定を確かめる
- 8:50古典の授業古文の一節を、みんなで声に出して読む
- 10:50書写の授業毛筆で行書の筆づかいを練習する
- 12:40給食・昼休み教室で生徒と一緒に食べる
- 13:40意見文の授業根拠を挙げて書く練習をする
- 15:40作文に助言よい点と直す点を一言ずつ書く
- 16:30部活動放送部の朗読の練習を聞く

05
向いている人と入り方・その先
高校のうちは、授業で友だちの考えを聞き、自分の読みと比べる経験を大切にしてください。本を読んだら、面白さを 3 行で人に伝える練習も役立ちます。
国語の先生になるには、大学で国語の教職課程の科目を取り、教育実習に行って免許を取ります。多くの大学では、文学部の日本文学や日本語学の学科、教育学部の国語の専攻などで取れます。司書は大学で図書館に関する科目を取って、日本語教師は日本語教員試験と実践研修を経て、資格を得ます。
言葉や本が好きで、人の成長を見守るのが好きな人に向いています。経験を積むと、学年や教科をまとめる立場や、教育委員会で授業づくりを支える仕事に進む道があります。国語の教科書や参考書づくりに関わる人もいます。
教室の外にも、国語を教える力が生きる場所があります。
図解国語を教える力が生きる仕事
- 中学・高校の先生授業・作文の指導・部活動
- 学校司書・司書本の紹介と調べものの手伝い
- 日本語教師日本語を学ぶ人に教える
- 塾・予備校の講師受験の現代文・古文・漢文
- 教科書づくり教材の文章と問いを選ぶ
- 地域の読書活動読み聞かせや読書会を開く
高校生のうちに試せること
『徒然草』の 1 段で発問をつくる
青空文庫で佐藤春夫の現代語訳『徒然草』を開き、短い段を 1 つ選びましょう。「なぜ」で始まる問いを 3 つ作って友だちに答えてもらい、どの問いでいちばん話が広がったかを比べると、発問のこつが見えてきます。
現代語訳 徒然草(青空文庫)本の紹介カードを 100 字で書く
最近読んだ本を 1 冊選び、100 字の紹介カードを書きましょう。あらすじを全部書かずに、いちばん面白い場面の手前で止めるのがこつです。学校の図書館に飾ってもらえないか、司書の先生に相談してみてください。
子ども読書の情報館をのぞく
文部科学省の「子ども読書の情報館」には、全国の図書館や学校の読書の取り組みや、本を選ぶ手がかりがまとめられています。図書館や学校がどんな工夫をしているかを見てみましょう。
子ども読書の情報館(文部科学省)
「教える・本と人をつなぐ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 72 件から探せます。
よくある質問
古典が苦手でも、国語の先生になれますか?
なれます。国語の教職課程では国文学や漢文学を学ぶことになっていて、大学で古典を読み直す機会があります。高校のうちは、現代語訳と並べて読み、話の面白さをつかむことから始めると入りやすくなります。
中学校と高校の国語の先生は、授業で何が違いますか?
中学校の国語には、毛筆と硬筆で字を書く書写があります。学習指導要領では、1・2 年生で年間 20 単位時間程度、3 年生で 10 単位時間程度を充てます。高校では、論理国語や古典探究など、選んで学ぶ科目も受け持ちます。
日本語教師になるのに、国語の先生の免許は必要ですか?
必要ありません。登録日本語教員になるには、日本語教員試験に合格し、実践研修を終えて登録を受けます。国語で学んだ文法や敬語の知識は、日本語のしくみを説明するときの土台になります。


