図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2
高 2: 数学 II・B・C で広げる
三角関数、指数・対数、微分と積分の入口、数列、ベクトルと、学ぶ単元が一気に増える 1 年です。文系・理系のコース選びと重なる時期ですが、数学 II・B・C はどちらに進んでも大学入学共通テストの数学②の範囲です。

ひとことで言うと
料理で、焼く・煮る・蒸すを一度に覚える
高 1 で包丁の使い方を覚えたら、高 2 では調理法が一気に増えます。指数・対数は倍々に増えるもの、三角関数は回るもの、微分は変わる速さを扱う方法です。組み合わせるほど、解ける問題が増えていきます。

01
高 2 の科目と、文系・理系の選び方
高 2 の中心は数学 II です。標準 4 単位で、いろいろな式、図形と方程式、指数関数・対数関数、三角関数、微分・積分の考えの 5 つを学びます。数学 I → 数学 II → 数学 III の順に学ぶのが原則です。
数学 B と数学 C は、数学 I のあとならいつ学んでもよい科目で、2 つを並行して学ぶこともできます。数学 B の内容は、数列・統計的な推測・数学と社会生活の 3 つです。数学 C は、ベクトル・平面上の曲線と複素数平面・数学的な表現の工夫の 3 つです。どちらも、この中から学校が選んで教えます。
学校によっては、高 2 から文系・理系のコースに分かれます。選ぶときに確かめたいのは、志望する学部の入試で数学のどの科目が必要かです。共通テストの数学は『数学 I、数学 A』と『数学 II、数学 B、数学 C』の 2 つで、数学 III は含まれません。理工系の学部では、個別試験で数学 III まで出題する大学があります。
数学が得意かどうかだけでなく、行きたい学部で必要かどうかで考えると、あとで困りにくくなります。大学によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。
コースは、得意・不得意だけでなく、志望する学部の入試で必要な科目から考えます。
図解文系・理系のコースで学ぶ数学(例)
文系のコース(例)
- 数学 I・A・II・B・C が中心
- 共通テストで数学①・②を受ける人も
- 大学では統計の授業で生かす
理系のコース(例)
- 数学 I・A・II・B・C に数学 III を加える
- 個別試験で数学 III が出る大学もある
- 大学 1 年で微分積分と線形代数へ

02
指数・対数: 2 の 100 乗は何桁?
指数・対数でつまずきやすいのは、log という記号の意味です。log₂ 8 = 3 は、「2 を何乗すると 8 になるか」の答えが 3 だという意味です。計算に迷ったら、この定義に戻ると落ち着いて考えられます。
対数が役に立つのは、大きすぎる数の大きさを見積もるときです。2 の 100 乗をふつうの電卓で計算しようとすると、桁があふれてしまいます。ところが、log₁₀ 2 ≒ 0.3010 という 1 つの値を知っていれば、紙と鉛筆だけで桁数が分かります。
下の図のとおり、2¹⁰⁰ は 10³⁰ 以上 10³¹ 未満なので、31 桁の数です。かけ算を足し算に、累乗をかけ算に変えるのが対数の働きで、このおかげで何桁もの計算を手で扱えるようになります。
対数は、とても大きな数を「何桁か」で見積もる道具です。
図解2¹⁰⁰ の桁数を対数で求める
- 1log₁₀ 2¹⁰⁰ = 100 × log₁₀ 2
- 2≒ 100 × 0.3010 = 30.10
- 330 ≦ log₁₀ 2¹⁰⁰ < 31 なので、10³⁰ ≦ 2¹⁰⁰ < 10³¹
- 410³⁰ は、31 桁の数のうちいちばん小さい数

03
三角関数とベクトル: 内積から加法定理が出てくる
三角関数では、角度を度ではなく弧度法(ラジアン)で表すことと、加法定理でつまずく人が多くいます。加法定理は式の形が似ていて、符号を取り違えやすいからです。単位円を自分で描き、点がどこにあるかを見てから計算すると、間違いが減ります。
実は、加法定理は数学 C のベクトルを使うと自分で導けます。学習指導要領の解説も、cos(α − β) の式をベクトルの内積で示すことを例に挙げています。単位円の上の 2 点を向くベクトルの内積を、成分と角度の 2 通りで計算するだけです。
別々の単元だと思っていた三角関数とベクトルが、1 本の式でつながります。こうしたつながりに気づくと、公式は暗記するものから、忘れても作り直せるものに変わります。
単元どうしのつながりが分かると、公式を自分で作り直せるようになります。
図解内積で cos(α − β) を導く
- 1OA と OB は、どちらも長さ 1 のベクトル
- 2成分で内積を計算すると cos α cos β + sin α sin β
- 3なす角で内積を計算すると 1 × 1 × cos(α − β)
- 4同じ内積なので、2 つの計算結果は等しい

04
数列と数学的帰納法: 奇数を足すと平方数になる
数学 B の数列では、等差数列・等比数列の和、Σ の記号、前の項から次の項を決める漸化式、数学的帰納法を学びます。記号が多く、式だけを見ると何をしているのかが見えにくい単元です。コツは、n = 1、2、3 と具体的な数を入れて、最初の何項かを書き出すことです。
書き出すと、規則が見えてきます。1 = 1、1 + 3 = 4、1 + 3 + 5 = 9、1 + 3 + 5 + 7 = 16。奇数を順に足すと、1、4、9、16 と平方数が並びます。ここから「1 から (2n − 1) までの奇数の和は n² では?」と予想できます。
予想が正しいことを、すべての自然数で示す方法が数学的帰納法です。n = 1 で成り立つことと、n = k で成り立てば n = k + 1 でも成り立つことの 2 つを示します。1 枚目が倒れ、どの 1 枚も次の 1 枚を倒すなら、ドミノは最後まで倒れる、という考え方です。
数列は、n に 1、2、3 を入れて書き出すところから始めます。
図解奇数の和を数学的帰納法で確かめる
- 1書き出す1、1+3=4、1+3+5=9。平方数が並ぶ
- 2予想する1+3+…+(2n−1) = n² では?
- 3n = 1 で確かめる左辺も右辺も 1 で、成り立つ
- 4k から k+1 へk² に次の奇数 2k+1 を足すと (k+1)²
- 5結論すべての自然数 n で成り立つ


05
統計的な推測と、共通テストの数学②
数学 B の統計的な推測では、一部の人への調査(標本調査)から全体の様子を推し量る方法を学びます。二項分布や正規分布を使い、区間推定や仮説検定まで扱います。数学 I で学んだ仮説検定の考え方を、確率の計算で確かめられるようになります。
ここで出会う正規分布は、大学では心理学や経済学、医学など、多くの分野の統計の授業に出てきます。高 2 で学ぶ統計は、文系に進む人にとっても大学への準備になります。
共通テストの『数学 II、数学 B、数学 C』では、数学 B・C の 4 つの項目から 3 つを選んで解きます(令和 9 年度試験)。4 つの項目は、数列、統計的な推測、ベクトル、平面上の曲線と複素数平面です。どれを選ぶかは高 3 で決めても間に合いますが、学校の授業でどの単元を学ぶかは、高 2 のうちに確かめておくと安心です。
高校生のうちに試せること
碁石で奇数の和を並べる
碁石やおはじきを 1 個、3 個、5 個と L 字の形に足しながら並べましょう。いつも正方形になることを確かめたら、なぜそうなるかを数学的帰納法の言葉で説明してみてください。
2 の累乗の桁数を予想する
log₁₀ 2 ≒ 0.3010 を使って、2 の 20 乗、30 乗、50 乗の桁数を予想しましょう。そのあとスマートフォンの電卓で計算し、予想が当たったかを確かめてください。
単位円の上で内積を動かす
無料のグラフ作成ツール GeoGebra で単位円を描き、円の上に 2 つの点をとりましょう。点を動かしながら、内積の値と cos(α − β) の値がいつも同じになるかを確かめられます。
GeoGebra グラフ計算機
「高 2: 数学 II・B・C で広げる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 64 件から探せます。
多様幾何グループ
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 数学プログラム・数学・藤森 祥一 教授
微分幾何学、位相幾何学、多様体論などを研究している。

計算機統計学
岡山大学(岡山県)
環境生命自然科学研究科 数理情報科学 数理データ科学・統計学・飯塚 誠也 教授
多変量データや質的データ、テキスト・画像など多様なデータを計算機で分析する統計手法を開発する。
橋詰研究室
新潟大学(新潟県)
理学部 理学科 数学プログラム・代数幾何学・橋詰 健太 助教

物理統計学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・数理物理学・梅野 健 教授

統計モデル学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・統計科学・坂本 亘 教授
環境・生命科学データの解析に使う統計モデルと、最適なモデルを選ぶ方法を研究する。

熊坂研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・遺伝統計学・応用統計学・熊坂 夏彦 教授
よくある質問
文系に進むなら、数学 B・C は学ばなくてもよいですか?
数学 B・C は、数学 I のあとに学校が内容を選んで教える科目です。共通テストの数学②は数学 II・B・C の範囲から出題されるので、受験に数学②が必要かどうかを、志望校の募集要項で確かめてから考えてください。
数学 II の微分と、数学 III の微分はどう違いますか?
数学 II では、三次までの関数を中心に微分を学びます。数学 III では、三角関数・指数関数・対数関数の微分や、積・商・合成関数の微分へと広がります。
Σ の記号がよく分かりません。
Σ は「足し合わせる」という記号です。Σ の下と上の数字を見て、n = 1、2、3 と順に入れ、足す式を最初の数項だけ書き出してみてください。式の形が見えると、公式を使えるようになります。


