大学カタログ

図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 4

その先: 大学で生かす

高校で学んだ数学は、大学では理系・文系を問わず多くの学部で道具になります。理工系では 1 年から微分積分と線形代数を学び、経済学や心理学では統計を使い、数学の先生を目指す人は教職課程で数学をさらに深めます。

大学の講義室でノートをとる学生、計算機の棚が並ぶ部屋を見学する学生、教壇に立つ教育実習の学生、グラフを囲んで話し合う学生たち

ひとことで言うと

高校の数学は、どの学問でも通じる共通語

物理学・情報学・経済学・心理学は、話す内容はまったく違いますが、微分・ベクトル・統計という同じ言葉で書かれています。高校の数学は、その共通語の文法です。身につけておくと、どの学問に進んでも話にすぐ加われます。

01

大学 1 年の数学: 微分積分と線形代数

理学部や工学部の多くでは、1 年で微分積分学と線形代数学を学びます。たとえば東京科学大学の理工学系(旧 東京工業大学)の学修案内(2025 年度)では、「微分積分学第一・演習」と「線形代数学第一・演習」が必修です。案内は、これらを理工系の学生なら皆知っていなければならない基本的な事項だと説明しています。

微分積分学は数学 III の続きで、変数が 2 つ以上ある関数の微分(偏微分)や、重積分に進みます。線形代数学では、ベクトルと行列を使って、たくさんの式をまとめて扱います。行列は、高校では数学 C の「数学的な表現の工夫」で少し触れるだけなので、多くの人にとって大学で本格的に出会う道具です。

数学科に進む人は、ここから定義と証明を中心とした数学に入っていきます。4 年間の流れは、このサイトの「数学」のページで紹介しています。

大学 1 年の微分積分と線形代数は、理工系のどの分野にも共通する道具です。

図解高校の数学が続く大学の学問

高校の数学
  • 数学微分積分学・線形代数学から証明へ
  • 物理学運動や電磁気を微分方程式で表す
  • 情報学ベクトル・行列で画像や AI を扱う
  • 工学設計や制御を微分積分で計算する
  • 経済学微分で利益を、統計で景気を調べる
  • 心理学・社会学調査や実験の結果を統計で確かめる

02

線形代数の出番: スーパーコンピュータは連立方程式で競う

線形代数の中心にあるのは、連立一次方程式を行列で解く方法です。中学で解いた 2 つの式の連立方程式も、行列で書くと、式が 1,000 個、100 万個に増えても同じ手順で扱えます。

その例が、スーパーコンピュータの世界ランキング TOP500 です。順位は、LINPACK という、行列計算で連立一次方程式を解くプログラムの速さで決まります。理化学研究所と富士通が開発した「富岳」は、2021 年 11 月の発表で、TOP500 の 4 期連続の世界 1 位になりました。

理化学研究所は、TOP500 が、多くの科学技術計算や産業での計算に使われる演算の能力を測るものだと説明しています。高校の連立方程式の延長に、世界一の計算機の性能争いがある。そう考えると、線形代数の授業が少し違って見えてきます。

線形代数は、たくさんの式をまとめて扱うための道具です。

図解連立方程式を行列の形で解く

入力2x + y = 5 と x + 3y = 10 を同時に満たす x、y
  1. 1係数だけを並べて (2 1 | 5)、(1 3 | 10) と書く
  2. 22 行目を 2 倍して 1 行目を引くと (0 5 | 15)
  3. 3y = 3。1 行目に戻して x = 1
  4. 4式が何万個あっても、同じ手順を計算機がくり返す
結果x = 1、y = 3。この手順を巨大な規模で速く解けるかを競う
展示会場の赤いじゅうたんの上に置かれた、赤い側面と黒い網の扉をもつ大きな箱形の計算機の棚
2019 年 11 月の国際会議 SC19 で富士通が展示した、富岳と同じ CPU を使うスーパーコンピュータの棚。TOP500 の順位は、毎年 6 月と 11 月に開かれるこうした国際会議で発表されます。写真: Raysonho(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

文系の学部でも数学: 経済学とデータサイエンス

数学が生きるのは理系だけではありません。早稲田大学の政治経済学部は、2021 年度から一般選抜で大学入学共通テストの数学(数学 I・A)を必修にしました。学部の教員による報告では、ねらいの 1 つとして、政治学・経済学の学びに必要な論理的思考力と数学的素養を測ることを挙げています。

同じ学部では 2019 年度から、学科を問わず全学生が公共哲学・政治学・経済学・統計学の基礎を学ぶカリキュラムになっています。経済学では、利益が最大になる量を微分で求め、景気や物価の動きを統計で調べます。

文部科学省は、大学・短大・高専の数理・データサイエンス・AI の教育プログラムを認定する制度を設けています。そのうちリテラシーレベルは、大学などの全学生が身につけておくべき素養と位置づけられています。高校の数学 I のデータの分析と、数学 B の統計的な推測が、その入口です。

文系の学部でも、統計と関数は大学の授業で使う道具です。

図解学部によって違う、数学の使い方(例)

物理学・工学

  • 微分方程式で運動や電気を表す
  • ベクトル・行列で力や形を計算する
  • 数学 III・C の内容が土台

経済学

  • 微分で利益が最大になる量を求める
  • 統計で景気や物価の動きを調べる
  • 数学 I・A・II・B の内容が土台

心理学・社会学

  • 実験や調査の結果を統計で確かめる
  • 平均・分散・相関係数をよく使う
  • 数学 I・B の統計が入口

04

数学の先生になる: 教職課程で免許をとる

中学校や高校の数学の先生になるには、数学の教員免許状が必要です。文部科学省によると、まず、その免許に対応した教職課程のある大学に入ります。法令で定められた科目と単位をとって卒業したあと、都道府県の教育委員会に授与を申請します。

数学の免許に対応した教職課程は、数学科や教育学部の数学の専攻などに置かれています。どの学部で数学の免許がとれるかは大学によって異なるので、各大学の教職課程のページで確かめてください。大学の数学を幅広く学んだうえで、教育実習で実際に教壇に立ちます。

先生として働くには、免許をとるだけでなく、採用されることも必要です。高校で「どうしてこうなるの?」と悩んだ単元こそ、先生になったときに生徒の気持ちが分かる強みになります。仕事の様子は、このページの図 3 の「数学の先生・研究者」で紹介しています。

先生になるには、免許をとることと、採用されることの 2 つが必要です。

図解数学の先生になるまで

  1. 1教職課程のある大学へ数学の免許に対応した課程を選ぶ
  2. 2科目と単位をとる大学の数学と、教育の科目を学ぶ
  3. 3教育実習中学校や高校で実際に授業をする
  4. 4免許状の授与卒業後、都道府県の教育委員会に申請
  5. 5採用公立なら教育委員会の採用試験を受ける

05

数学を使う進路と、高校生のうちにできること

数学を使う仕事は、研究者や先生だけではありません。データから傾向を読み取るデータサイエンティストや、ゲームや CG の動きを計算するプログラマーがいます。保険料や年金の掛金を計算するアクチュアリーもその 1 つです。どれも、高校の確率・統計、ベクトル、微分積分の続きの上にある仕事です。

どの道に進むにしても、役に立つのは、高校の数学を「なぜそうなるか」まで説明できる力です。大学の授業で同じ考え方が出てきたときに、ぐっと分かりやすくなります。公式の導き方を 1 つでも自分で説明できれば、それが大学の数学への入口です。

このサイトの「数学」「物理学」「情報学」「経済学」のページでは、大学の 4 年間の学びを紹介しています。気になる学問のページで、高校の数学のどの単元が使われているかを読み比べてみてください。

クイズ大学と数学のクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1スーパーコンピュータの世界ランキング TOP500 で、速さを比べる計算は?

  2. Q2早稲田大学の政治経済学部が、2021 年度から一般選抜で必修にした共通テストの科目は?

  3. Q3中学・高校の数学の教員免許状を授与するのは?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 大学の学修案内で 1 年の数学を調べる

    多くの大学は、科目の一覧や授業の内容(シラバス)をサイトで公開しています。志望する学部の 1 年でどんな数学の科目が必修かを調べ、高校のどの単元が土台になるかを書き出しましょう。

    東京科学大学 理工学系 学修案内 理工系教養科目
  • 統計局のデータサイエンス・スクールを読む

    総務省統計局の「データサイエンス・スクール」では、統計の講座や力試しの問題を無料で読めます。「平均だけで大丈夫?」などの講座で、数学 I のデータの分析の続きを身近な例で学びましょう。

    総務省統計局 データサイエンス・スクール
  • 4 つの学問のページを読み比べる

    このサイトの「数学」「物理学」「情報学」「経済学」のページを開き、高校の数学のどの単元が使われているかを書き出しましょう。同じ微分やベクトルが、分野によって違う使われ方をしているのが分かります。

  • 教員免許のしくみを調べる

    文部科学省の「教員免許状に関する Q&A」で、免許の種類や取り方を確かめましょう。志望する大学に数学の教職課程があるかも、あわせて調べておくと安心です。

    文部科学省 教員免許状に関する Q&A

「その先: 大学で生かす」に関連するコミュニティ

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よくある質問

数学が苦手でも、理系の学部に進めますか?

大学 1 年の微分積分と線形代数は、高校の数学 III・C の内容を土台に進みます。苦手な単元は、高校のうちに教科書の例題から解き直しておくと、大学の授業についていきやすくなります。質問の窓口や学習の相談の場を設けている大学もあるので、オープンキャンパスなどで確かめてください。

文系の学部でも、入試で数学が必要ですか?

大学や学部によって異なります。早稲田大学の政治経済学部のように、一般選抜で共通テストの数学 I・A を必修にしている学部もあります。志望校の募集要項で確かめてください。

数学の先生になるには、数学科に行く必要がありますか?

数学の教員免許は、数学の免許に対応した教職課程のある大学・学部でとれます。教育学部の数学の専攻など、数学科以外でとれる大学もあるので、各大学の教職課程のページで確かめてください。