図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 2
高 2: 運動と波を深める
高 2 からは、4 単位の「物理」を選んで学べます。一直線の上で考えてきた運動を平面に広げ、運動量、円運動と振り子、水面の波や光の干渉へと進む 1 年です。

ひとことで言うと
線路の上から、グラウンドの上へ
物理基礎では、線路を走る電車のように、一直線の上の運動を考えました。物理では、グラウンドを転がるサッカーボールのように、平面を自由に動く物も扱います。横と縦に分けて考えれば、一直線の知識がそのまま使えます。

01
高 2 の科目: 物理(4 単位)と、文系・理系の選び方
物理は標準 4 単位の科目で、原則として物理基礎の後に学びます。内容は「様々な運動」「波」「電気と磁気」「原子」の 4 つです。高 2 で運動と波、高 3 で電気と磁気と原子を学ぶのが一つの例で、学ぶ順や学年は学校によって異なります。
高 2 から文系・理系のコースに分かれる学校では、高 1 のうちに次の年の科目を決めることになります。理科のどの科目を選ぶかは、学校のコースの決まりと、志望する学部の入試科目で考えます。
迷ったら、まず興味のある学部を 2〜3 つ書き出し、募集要項で理科の指定科目を確かめてください。機械・電気電子・建築などの学科では、多くの大学で 1 年から力学や電磁気学の授業があります。物理基礎の運動の単元の手応えも、判断の材料になります。
大学入学共通テストの令和 8 年度の受験者数を見てみます。物理は 14 万 5,203 人、化学は 18 万 1,584 人、生物は 5 万 6,314 人、地学は 2,701 人でした。物理は、化学に次いで多くの人が選んでいる科目です。
物理は、物理基礎の 4 つの分野をそれぞれ深める科目です。
図解物理基礎と物理で学ぶこと
物理基礎(2 単位)
- 一直線の上の運動と力
- 直線状に伝わる波・気柱の共鳴
- 電気抵抗・発電と送電
- 放射線とエネルギーの利用
物理(4 単位)
- 平面の運動・円運動・単振動
- 水面の波・音・光の干渉
- 電界と磁界・電磁誘導
- 電子と光・原子と原子核

02
振り子の実験: 糸の長さを 4 倍にすると、周期は 2 倍
物理の「円運動と単振動」では、円を描く運動と、ばねや振り子の往復運動を学びます。学習指導要領の解説は、単振り子の糸の長さと周期の関係を調べる実験を例に挙げています。周期は、1 往復にかかる時間です。
振れ幅が小さいとき、単振り子の周期は T = 2π√(L/g) で表せます(L は糸の長さ、g は重力加速度)。式に、おもりの質量は入っていません。重いおもりも軽いおもりも、糸の長さが同じなら同じリズムで揺れます。糸を 4 倍に伸ばすと、周期は 2 倍になります。
長さ 1 m の振り子の周期は約 2.0 秒、25 cm なら約 1.0 秒です。1851 年、フランスのフーコーは、パリのパンテオンに長さ 67 m の鋼鉄線で 28 kg の鉄球をつるしました。振れる向きが時間とともに少しずつ回ることで、地球が自転していることを示したのです。
下の例は、このパンテオンの振り子の周期を、教室の振り子と同じ式で計算したものです。日本の科学館にも、同じしくみのフーコーの振り子を展示している所があります。
振り子の周期は糸の長さで決まり、おもりの重さにはよりません。
図解パンテオンの振り子の周期を計算する
- 1周期の式 T = 2π√(L/g) を使う(振れ幅が小さいとき)
- 2L = 67 m、g = 9.8 m/s² を入れる
- 3√(67 ÷ 9.8) ≒ 2.61
- 4T ≒ 2 × 3.14 × 2.61 ≒ 16.4 秒


03
運動量: ぶつかっても、合計が変わらない量
物理の「運動量」では、質量と速度をかけた量を学びます。運動量は、向きをもつ量です。解説は、バットやラケットでボールを打ち返す様子を、写真や動画で示す例を挙げています。打ち返したボールは向きが逆になるので、運動量の変化は大きくなります。
2 つの物がぶつかったり分かれたりしても、外から力が働かなければ、運動量の合計は変わりません。これが運動量保存の法則です。授業では、2 台の台車をぶつける実験で、ぶつかる前と後の速さをセンサーなどで測って確かめます。
一方、運動エネルギーの合計は、ぶつかり方によって減ることがあります。下の図の例では、くっついた後の運動エネルギーが、ぶつかる前の 3 分の 1 です。残りは、音や熱、台車の変形などに変わったと考えます。運動量は保存されても、エネルギーは形を変えるのがポイントです。
解説は、物が分かれる「分裂」の実験も挙げています。止まっている 1.0 kg と 2.0 kg の台車の間でばねを放すと、2 台は逆向きに走り出します。運動量の合計は 0 のままなので、軽い台車のほうが 2 倍の速さで動きます。
外から力が働かなければ、運動量の合計はぶつかる前と後で変わりません。
図解台車がぶつかってくっつく前と後(例)
ぶつかる前
- 台車 A: 1.0 kg・秒速 0.60 m
- 台車 B: 2.0 kg・止まっている
- 運動量の合計 0.60 kg·m/s
- 運動エネルギーの合計 0.18 J
ぶつかった後
- A と B がくっつき 3.0 kg
- 速さは秒速 0.20 m
- 運動量の合計 0.60 kg·m/s
- 運動エネルギーの合計 0.06 J

04
波の実験と、つまずきやすい「向き」の計算
物理の「波」では、水面を伝わる波で、反射・屈折・干渉・回折を観察します。解説は、浅い水槽に波を立てる水波実験器で、2 つの点から出た波の重なり方を調べる例を挙げています。動く波源から広がる波面を見て、音のドップラー効果と結びつける観察もあります。
光の干渉では、ヤングの実験や回折格子を学びます。解説は、CD や DVD の反射光に色がつく現象を調べる例も挙げています。CD の表面には細い溝が等間隔に並んでいて、回折格子と同じ働きをします。
運動の単元でつまずきやすいのが、向きをもつ量の引き算です。秒速 10 m で壁に当たったボールが、秒速 8 m で逆向きにはね返ったとします。速度の変化は 2 m/s ではありません。はね返る向きを + にすると、8 −(−10)= 18 で、変化の大きさは秒速 18 m です。運動量の変化も、向きを + と − で表してから計算します。
平面の運動は、横と縦に分けて考えるのが基本です。速度も力も、横の成分と縦の成分に分けると、物理基礎で学んだ一直線の運動の考え方がそのまま使えます。
向きを + と − で表してから計算すると、ベクトルの引き算で迷わなくなります。


05
授業の外で: 物理チャレンジに挑戦する
物理オリンピック日本委員会の「物理チャレンジ」は、中学生・高校生を中心とした全国規模の物理のコンテストです。開催年の 4 月 1 日に 20 歳未満で、大学などに在学していない人が参加できます。申し込みは例年 4〜5 月ごろです。
第 1 チャレンジでは、自宅で受けるオンラインの理論問題と、自宅や学校で取り組む実験課題のレポートに挑みます。2025 年からは、理論問題だけの「理論コース」も選べます。成績上位のおよそ 100 人が、夏休みの第 2 チャレンジに進みます。
第 2 チャレンジは 3 泊 4 日の合宿形式で、理論と実験の問題に 5 時間ずつ取り組みます。特に優秀な成績を収めた高 2 以下の上位 12 位以内から、日本代表の候補が選ばれます。実験課題のレポートは、授業の実験と同じ書き方で取り組めます。
授業で身につけた実験とレポートの力は、全国のコンテストでも生きます。
図解物理チャレンジの流れ
- 1申し込み例年 4〜5 月ごろ
- 2第 1 チャレンジオンラインの理論問題と実験レポート
- 3第 2 チャレンジ夏休みに 3 泊 4 日・約 100 人
- 4日本代表の候補高 2 以下の上位 12 位以内から
高校生のうちに試せること
5 円玉の振り子で周期を測る
糸に 5 円玉を結び、糸の長さを 25 cm と 1 m にして、10 往復する時間をストップウォッチで測りましょう。10 で割ると周期です。約 1.0 秒と約 2.0 秒になるか、5 円玉を 2 枚に増やすと周期が変わるかも確かめてください。
シミュレーションで振り子と衝突を試す
PhET の「振り子の実験」では、糸の長さやおもりの質量、振れ幅を変えて周期を測れます。同じ PhET の「衝突実験」では、2 つの球の質量や速さを変えて、運動量とエネルギーの変化を比べられます。
PhET「振り子の実験」物理チャレンジに申し込む
物理チャレンジの公式サイトで、参加資格や日程を確かめましょう。申し込みは例年 4〜5 月ごろです。実験課題のレポートに取り組むと、授業で身につけた実験の力を試せます。
物理チャレンジ(物理オリンピック日本委員会)CD で光の干渉を見る
使わなくなった CD の表面に、懐中電灯や部屋の明かりを当てましょう。見る角度を変えて、色の並び方がどう変わるかを観察してください。太陽を直接見ないように気をつけましょう。
「高 2: 運動と波を深める」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 50 件から探せます。
機械力学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 機械工学プログラム・機械工学・菊植 亮 教授
ロボティクス、メカトロニクス、ロボット制御などを研究している。
猿渡研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科システム情報学専攻・音声音響信号処理・音楽情報処理・統計的信号処理・猿渡 洋 教授

流体音響工学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 機械・材料・海洋系学科 機械工学教育プログラム・流体音響学・草野 和也 助教
流体騒音の発生の仕組みを解明し流体機械の静音化を目指す。

機械音響工学研究室
新潟大学(新潟県)
工学部 工学科 機械システム工学プログラム・機械音響工学・坂本 秀一 准教授

音響システム研究室【通信・農業施設・情報化施工】(通信システム研究室)
筑波大学(茨城県)
知能機能システム・海老原 格 准教授

生物機械システム研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 機械・材料・海洋系学科 機械工学教育プログラム・機械力学・バイオメカニクス・白石 俊彦 教授
機械の振動制御や振動刺激による組織再生など機械と生物の融合を探る。
よくある質問
物理と生物、どちらを選ぶか迷っています。
まず、興味のある学部の入試で、理科のどの科目が指定されているかを募集要項で確かめてください。指定がなければ、物理基礎と生物基礎で手応えのあった単元や、大学で学びたい内容から考えます。先生や先輩に相談するのも一つの方法です。
高 2 で物理を選ばなかったら、理系の学部に進めませんか?
入試で物理を課すかどうかは、大学や学部、入試の方式によって異なります。物理を課さない理系の学部もあります。志望校の募集要項で、理科の指定科目を確かめてください。
物理チャレンジには、だれが参加できますか?
開催年の 4 月 1 日に 20 歳未満で、大学などの高等教育機関に在学していない人が参加できます。外国籍の人は、日本の学校に在籍していることも条件です。くわしくは公式サイトで確かめてください。
