図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 3
高 3: 電気と磁気、原子へ
高 3 では、物理の後半の「電気と磁気」と「原子」を学びます。目に見えない電界や磁界の向きを図と式で描けるようにしながら、大学入学共通テストなどに向けて 3 年分をまとめ直す 1 年です。

ひとことで言うと
見えない矢印を、図に描き出す
電気や磁気の力は、離れた物どうしの間にも働きます。磁石の上の紙に砂鉄をまくと、目に見えない磁界の形が浮かび上がります。高 3 の物理は、こうした見えない矢印を、図と式で描けるようになる 1 年です。

01
高 3 の内容: 電気と磁気、そして原子へ
物理の「電気と磁気」は、中 2 の「電流とその利用」と、物理基礎の「電気」の続きです。前半の「電気と電流」では、電荷と電界、電位、コンデンサー、電気回路を学びます。後半の「電流と磁界」では、電流がつくる磁界、電流が磁界から受ける力、電磁誘導、電磁波を学びます。
最後の「原子」では、電子と光、原子とスペクトル、原子核、素粒子を学びます。学習指導要領の解説は、真空放電や陰極線の観察と、電子に関する歴史的な実験に触れることを示しています。写真のクルックス管は、陰極線の研究に使われたガラス管です。
教科書の締めくくりは「物理学が築く未来」です。解説は、光格子時計や量子コンピュータ、核融合発電の開発、暗黒物質の研究などを例に挙げています。高校で学ぶ法則が、今の研究の最前線につながっていることが分かる単元です。
共通テストの『物理』は、物理の内容全体が出題範囲です。教科書の後ろにある単元ほど、演習に使える時間は短くなります。授業の進み方を見ながら、原子の章を早めに読んでおくのも一つの方法です。
電気と磁気、原子まで学ぶと、物理の 4 つの分野がそろいます。
図解高 3 で学ぶ順(例)
- 1電界と電位電荷・電界・電位・コンデンサー
- 2電気回路キルヒホッフの法則・内部抵抗
- 3電流と磁界磁界・電磁誘導・交流・電磁波
- 4原子電子と光・原子核・素粒子


02
実験: 乾電池の中にも抵抗がある
電気と磁気の単元でも、実験が続きます。解説は、方位磁針で電流のまわりの磁界を調べる実験や、コイルを貫く磁束を変えたときの電圧をオシロスコープで調べる実験を挙げています。コンデンサーの充電と放電を、センサーで測る実験もあります。
電気回路では、電池の起電力と内部抵抗を測る実験が例に挙がっています。乾電池の中にも小さな抵抗があり、大きな電流を流すほど、電池の外に取り出せる電圧(端子電圧)が下がります。解説は、新しい電池と古い電池の違いを、話し合って予想してから測る進め方を示しています。
測り方は、電流を変えながら端子電圧を測り、グラフにします。下の例のように、点を結んだ直線の傾きから内部抵抗が、電流が 0 のときの電圧から起電力が分かります。グラフの傾きと切片に意味があるのは、物理基礎の v-t グラフと同じです。
測った点をグラフにすると、電池の中の見えない抵抗まで数字で分かります。
図解乾電池の起電力と内部抵抗を求める(測定の例)
- 1端子電圧 V = 起電力 E − 内部抵抗 r × 電流 I
- 2電流が 0.40 A 増えると、電圧は 0.08 V 下がる
- 3r = 0.08 V ÷ 0.40 A = 0.20 Ω
- 4E = 1.46 V + 0.20 Ω × 0.20 A = 1.50 V

03
つまずきやすい点: 電気と磁気の「向き」
高 3 でつまずきやすいのが、向きの決まりです。電流のまわりの磁界の向きは右ねじの法則で、電流が磁界から受ける力の向きはフレミングの左手の法則で考えます。電磁誘導で流れる電流の向きは、レンツの法則で決まります。
混乱の元は、3 つの向きが紙の面からはみ出すことです。紙に垂直な向きは、手前向きを ⊙、奥向きを ⊗ の記号で描きます。電流・磁界・力の矢印を立体の図に描き、自分の手を当てて確かめると、向きを取り違えにくくなります。
もう一つの落とし穴は、電流の向きと電子の動く向きが反対なことです。電流の向きは、電子が見つかる前に決められました。レンツの法則は、コイルは磁束の変化をじゃまする向きに電流を流す、と覚えます。磁石の N 極を近づけると、コイルは N 極を押し返すように電流を流します。
コイルの性質を表す単位ヘンリー(H)は、アメリカの物理学者ジョセフ・ヘンリーの名前からきています。ヘンリーは、絶縁した導線を鉄心にきつく巻いて、強い電磁石を作りました。イェール大学のために作った電磁石は、900 kg 以上の物を持ち上げたといいます。自己誘導の発見も、ふつうヘンリーの業績とされています。
向きの決まりは、立体の図と自分の手で確かめると身につきます。


04
共通テストの物理基礎・物理: 時間と配点、平均点の動き
大学入学共通テストの理科は、5 つの出題科目から最大 2 つを選んで受けます(令和 9 年度試験の出題方法)。『物理』は 60 分・100 点です。『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』は、4 つの基礎のうち 2 つを選び、60 分で各 50 点の問題を解きます。
大学入試センターの問題作成方針は、『物理』で、基本的な法則の理解を問う問題とあわせて、次のような問題も含めて考えるとしています。観察や実験の結果を数学的な手法で分析し解釈する問題や、初めて見る資料に示された現象を考察する問題です。基礎を付した科目との関連も考えるとしているので、物理基礎の単元とのつながりも意識して準備します。
『物理』の受験者数と平均点(100 点満点に換算)を見ると、令和 7 年度は 14 万 4,761 人・58.96 点でした。令和 8 年度は 14 万 5,203 人・45.55 点です。物理基礎は、令和 8 年度に 1 万 8,486 人が受け、平均は 69.36 点です。
このように、平均点は年によって 10 点以上変わります。過去問を解いたら、点数よりも、どの大問で時間を使ったかと、まちがえた理由を記録しておくほうが、次の復習に役立ちます。
試験の時間と配点を知り、大問ごとの時間配分を練習しておきます。
図解共通テストの物理基礎と物理(令和 9 年度試験)
物理基礎
- 4 つの基礎から 2 つを選ぶ
- 2 つで 60 分・各 50 点
- 令和 8 年度は 1 万 8,486 人
物理
- 1 科目で 60 分・100 点
- 物理基礎との関連も考えて出題
- 令和 8 年度は 14 万 5,203 人

05
高 3 の 1 週間: 新しい単元と、3 年分の復習を並べる
高 3 の前半は、電気と磁気、原子の新しい単元が続きます。並行して、高 1・高 2 で学んだ力学や波の復習を進めます。下の図は、高 3 の 1 週間の例です。時間割や単元の順は学校によって異なります。
大学入試センターのサイトでは、過去 3 年分の試験問題と正解を見られます。まず大問 1 つを時間を決めて解き、慣れてきたら 60 分で 1 回分に挑戦してください。
まちがえた問題は、答えを写すのではなく、力や電流の向きを図に描き直してから解き直します。図を描き直すと、どこで考えがずれたかが見えてきます。
図を描き直してから解き直すと、同じまちがいが減ります。
図解高 3 の 1 週間(例)
- 月物理(電磁誘導)磁束の変化と電流の向きを図にする
- 火力学の復習運動の法則の問題を解き直す
- 水物理(原子)教科書の歴史的な実験を読む
- 木大問 1 つ時間を計って解き、かかった分を記録
- 金波の復習干渉の図を自分で描き直す
- 土・日60 分で 1 回分大問ごとの時間配分を見直す
高校生のうちに試せること
シミュレーションで回路を組んで測る
PhET の「直流回路キット」で、電池と抵抗、電流計と電圧計を使って回路を組みましょう。抵抗を直列と並列につなぎかえ、測った電流と電圧で、キルヒホッフの法則が成り立つかを確かめてください。
PhET「直流回路キット」スマートフォンのカメラで赤外線を見る
テレビのリモコンのボタンを押しながら、先端の部分をスマートフォンのカメラで見てみましょう。目には見えない赤外線が、画面では光って見えることがあります。解説も、デジタルカメラで赤外線を観察する例を挙げています。カメラによっては見えにくいこともあります。
共通テストの『物理』を時間を計って解く
大学入試センターのサイトで、令和 8 年度の本試験の『物理』の問題を見られます。まず大問 1 つを時間を計って解き、慣れたら 60 分で 1 回分に挑戦しましょう。
大学入試センター 令和 8 年度 本試験の問題
「高 3: 電気と磁気、原子へ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 90 件から探せます。
よくある質問
共通テストの理科は、何科目まで受けられますか?
理科の出題科目は、『物理』『化学』『生物』『地学』と『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』の 5 つです。令和 9 年度試験の出題方法では、この中から最大 2 つを選んで受けます。どれを課すかは大学や学部によって違うので、志望校の募集要項で確かめてください。
電磁気の向きの決まりが覚えられません。
右ねじの法則、フレミングの左手の法則、レンツの法則を、1 つずつ立体の図に描いて確かめるのが近道です。紙に垂直な向きは ⊙(手前向き)と ⊗(奥向き)で描きます。方位磁針と導線で実際の向きを見ると、図と結びつきます。
原子の単元まで授業が進むのは、いつごろですか?
単元の順や進み方は学校によって異なります。共通テストの『物理』は、物理の内容全体が出題範囲です。教科書の原子の章を早めに読み、分からない用語を書き出して先生に質問しておくと安心です。








