図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 4
その先: 大学で生かす
高校の物理は、多くの大学の理学部や工学部で、1 年の力学・電磁気学の講義と物理学実験につながります。機械・電気電子・建築などの学科では、物理が設計の道具になります。

ひとことで言うと
どの学科でも使う、基本の工具箱
大工さんの工具箱には、家を建てるときにも家具を作るときにも使う道具が入っています。高校の物理も同じで、物理学・機械・電気電子・建築のどの学科でも使う基本の道具がそろっています。大学では、その道具を微分積分と組み合わせて使います。

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大学 1 年: 力学と電磁気学を、微分積分で学び直す
多くの大学では、理学部や工学部の 1 年に、力学と電磁気学の授業があります。高校で学んだ運動や電気と磁気の法則を、微分積分を使って、少ない基本の法則から導き直します。科目の名前や必修かどうかは、大学や学科によって異なります。
物理学科では、その先に熱力学・統計力学・量子力学などが続きます。工学部では、同じ物理を道具として使い、機械・電気電子・建築などの専門の授業に進みます。下の図は、高校の物理が続く学科の例です。
高校で物理を選ばなかった人も、入学後の授業で基礎から学び直す大学があります。入学前に物理基礎の教科書を読み返し、運動の法則と力学的エネルギーを確かめておくと、1 年の力学に入りやすくなります。
高校の物理の単元は、学科ごとの専門の授業の入口になります。
図解高校の物理が続く学科(例)
- 物理学力学・電磁気学・量子力学
- 機械工学材料・機械・流体・熱の 4 つの力学
- 電気電子工学電気回路・電磁気学・電力・通信
- 建築学構造力学と、音・光・熱の環境工学
- 材料工学物の強さや、電気・磁気の性質
- 航空宇宙工学空気の流れと、飛ぶ物の運動
- 医療の技術X 線や放射線を扱う技術

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物理学実験: 高校の実験を、測る技術に育てる
大学の物理学実験では、測った値のばらつきから不確かさを計算し、結果をどこまで信じてよいかを数字で示します。物理学科だけでなく、工学部などの学生が 1 年で物理学実験を受ける大学もあります。
その土台は、物理基礎の最初に学ぶ「物理量の測定と扱い方」です。測定誤差、有効数字、表とグラフの作り方は、大学の実験でもそのまま使います。高校で振り子の 10 往復をまとめて測るのは、時間を測るときのずれの影響を小さくするための工夫です。
大学では、測った値や気づいたことを、その場で実験ノートに書くのが基本です。実験 1 回の流れや 1 週間のようすは、このサイトの「物理学」のページの「1 年: 基礎をかためる」で紹介しています。
有効数字とグラフの書き方は、大学の実験までそのまま使う基本の技術です。
図解高校の実験と大学の学生実験(例)
高校の実験
- 手順に沿って値を測る
- 有効数字をそろえてグラフにする
- 予想と結果のずれを考察する
大学の学生実験
- 実験ノートにその場で記録する
- ばらつきから不確かさを計算する
- ずれの原因を量で見積もる

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電気電子工学: 送電線の電圧が 50 万 V もある理由
電気電子工学科では、電気回路や電磁気学の先に、電力、電子回路、通信などの授業があります。物理基礎で学ぶ「発電と送電」は、電力の分野の入口です。学習指導要領の解説も、発電所で作った交流を変圧して送ることや、送電線での発熱に触れるとしています。
東京電力パワーグリッドによると、同社には主に 6 万 6,000 V から 50 万 V までの送電設備があります。発電所から遠くへ大量の電気を送るのは、27 万 5,000 V と 50 万 V の超高圧の送電線です。消費地に近づくにつれて電圧を下げ、電柱の電線では 6,600 V にして届けます。
電圧を高くするのは、電線で失われる電力を減らすためです。同じ電力なら、電圧を高くすると電流は小さくなります。電線での発熱は電流の 2 乗に比例するので、電圧を 10 倍にすると、失われる電力は 100 分の 1 になります。下の例は、話を単純にした計算です。
高い電圧の電線は、高い鉄塔で地面から遠ざけて支えます。同社で最も高い鉄塔は地上 149 m で、40 階建てのビルに相当します。この鉄塔も、50 万 V の送電に使われています。
電線での損失は電流の 2 乗で増えるので、高い電圧で送ります。
図解電圧を変えて同じ電力を送る(単純にした例)
- 1電流 I = 電力 P ÷ 電圧 V
- 25 万 V なら I = 2 万 A、50 万 V なら I = 2,000 A
- 3電線で失われる電力は I² × 抵抗
- 45 万 V なら 40 万 kW、50 万 V なら 4,000 kW


04
機械・建築・医療: 物理を設計と仕事の道具にする
日本学術会議の参照基準は、機械工学の土台となる力学の分野を挙げています。質点や固体の運動、固体の強度、流体の力学、熱の力学(熱学)です。多くの大学では、これを機械力学・材料力学・流体力学・熱力学の 4 つの力学として学びます。
建築学では、柱や梁にかかる力を構造力学で、部屋の音の響きや明るさ、暖かさを環境工学で考えます。どちらも、高校の力のつり合いや、波と熱の単元の続きです。くわしくは、このサイトの「機械工学」と「建築学」のページで紹介しています。
医療の分野では、X 線や放射線を扱う仕事に、原子と原子核の知識が生きます。物理を生かす仕事は、このページの図 3 でも紹介しています。同じ高校の物理が、学科によって研究の対象にも、設計の道具にもなるのです。
高校の物理は、学科によって研究の対象にも、設計の道具にもなります。

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高校のうちに: 課題研究を発表する場に出てみる
大学の物理につながる経験を、高校のうちに積むこともできます。日本物理学会は、中学生・高校生・高専生(3 年まで)が物理の研究を発表する「Jr.セッション」を毎年開いています。研究レポートの書類審査を通ると、オンラインで口頭発表し、第一線の物理学者の審査を受けます。
第 23 回は 2027 年 3 月 13 日に、オンラインで開かれる予定です。応募の受付は 2026 年 10 月 30 日から 12 月 10 日までの予定で、発表は 1 件 15 分(講演 10 分と質疑 5 分)です。応募するには、研究倫理を学ぶ無料のオンライン講座を受けておく必要があります。
文部科学省は 2002 年度から、理数系の教育に力を入れる高校を、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定しています。SSH の学校でなくても、総合的な探究の時間や部活の研究を、発表につなげられます。身近な「なぜ」を測って確かめることが、研究の出発点です。
オープンキャンパスで、研究室や学生実験の部屋を公開している大学もあります。高校の物理で面白かった単元を 1 つ決めて、その先にどんな研究や授業があるかを学生や先生に聞いてみると、学科選びの手がかりになります。
高校の課題研究は、大学の研究と同じ流れで進められます。
図解課題研究から発表まで(例)
- 1問いを立てる身近な「なぜ」を 1 つ選ぶ
- 2測って確かめる条件を変えて、何度も測る
- 3レポートにまとめる目的・方法・結果・考察を書く
- 4発表に応募するJr.セッションや校内の発表会へ
高校生のうちに試せること
志望校のシラバスで 1 年の物理を探す
志望する大学のシラバス(授業の計画)で、1 年の「力学」「電磁気学」「物理学実験」を探しましょう。何単位で、どの学科の必修なのかを確かめると、高校の物理のどこが大学の入口になるかが見えてきます。
Jr.セッションの募集要項を読む
日本物理学会 Jr.セッションの公式サイトで、募集要項や応募レポートの見本、過去の大会の情報を見られます。高校生がどんな問いを立てて研究しているかを知ると、課題研究のテーマ選びの参考になります。
日本物理学会 Jr.セッション物理学・機械工学・建築学のページを読み比べる
このサイトの大学の学問のページで、「物理学」「機械工学」「建築学」の 4 年間の流れを読み比べましょう。高校の物理のどの単元が、どの学年のどの授業につながるかを書き出すと、学科選びの手がかりになります。
「その先: 大学で生かす」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 80 件から探せます。

生体分子物理工学研究グループ
名古屋大学(愛知県)
応用物理学・寺田 智樹 准教授
低電力集積回路デザイン分野
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・集積システム工学・新津 葵一 教授
結晶物理工学研究室
北海道大学(北海道)
応用物理工学
上原研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 物理工学教育プログラム・物性物理(磁性・超伝導材料)・上原 政智 准教授
磁性と超伝導を示す新しい物質・材料を開発する。

物性基礎工学研究グループ
名古屋大学(愛知県)
応用物理学・田仲 由喜夫 教授

電力変換システム工学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 エネルギー・エレクトロニクスコース・パワーエレクトロニクス・平木 英治 教授
パワーエレクトロニクスと超電導を応用し、非接触給電装置や電気自動車用電源などを開発する。
よくある質問
工学部に進むなら、物理はどのくらい大切ですか?
機械・電気電子・建築などの学科では、力学や電磁気学が専門の授業の土台になります。入試で物理を課すかどうかは大学や学部によって異なるので、志望校の募集要項で確かめてください。
高校で物理を選ばなかったら、物理を使う学科は難しいですか?
入学後の授業で、基礎から学び直す大学もあります。入学前に物理基礎の教科書を読み返し、運動の法則と力学的エネルギーを確かめておくと、1 年の力学に入りやすくなります。
高校生でも、学会で研究を発表できますか?
日本物理学会の Jr.セッションは、中学生・高校生・高専生(3 年まで)が研究を発表する場です。応募には保護者や先生などの承諾が必要です。くわしい条件は、公式サイトの募集要項で確かめてください。


