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図 1 世界史の広がり世界史の広がり 4

地球世界の課題

国際機構づくり、冷戦とその終わり、経済のグローバル化、科学技術の発達を通して、今の世界の課題がどう生まれたのかを考える分野です。ニュースで見る国際連合や宇宙ステーションにも、100 年分の歴史が詰まっています。

白い石造りの国際会議場、古いコンクリートの壁の一部、夜空を横切る宇宙ステーション、コンテナを積んだ大きな船を背景に、話し合う大学生たち

ひとことで言うと

けんかのあとの「クラスのルール」づくり

クラスで大きなけんかがあったあと、同じことをくり返さないように、話し合いのルールをつくることがあります。うまくいかなければ、また作り直します。国際連盟から国際連合への流れも、戦争のたびに、国どうしのルールと話し合いの場を作り直してきた歴史です。

01

国際機構と平和: 国際連盟の事務局次長は、新渡戸稲造だった

世界史探究の最後の大きなまとまりが「地球世界の課題」です。国際機構と平和、経済のグローバル化と格差の是正、科学技術と知識基盤社会の 3 つを学び、最後に自分で主題を決めて探究します。歴史総合でも「グローバル化と私たち」で、冷戦や今の課題を学びます。

第一次世界大戦のあと、1920 年 1 月 10 日に国際連盟が正式に発足しました。国連ジュネーブ事務局によると、同じ年の 11 月に開かれた最初の総会には 41 か国が集まり、世界の人口の 7 割以上を代表していました。国どうしが力を合わせて侵略を防ぐ「集団安全保障」の、最初の試みとされています。

その事務局で、1926 年まで事務局次長を務めたのが新渡戸稲造です。一方で、アメリカは国際連盟に加わらず、世界の多くの地域は植民地のままでした。第二次世界大戦が起こり、国際連盟は 1946 年に解散して、建物や財産を国際連合に引き継ぎます。

国際連合は 1945 年 10 月 24 日に発足しました。同じ年につくられたユネスコ憲章の前文は、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」で始まります。続けて、おたがいの風習と生活を知らないことが、疑いと不信の共通の原因だったと述べています。世界史を学ぶことも、このとりでを築く方法の一つです。

国際機構は、うまくいかなかった経験から作り直されてきました。

図解国際連盟と国際連合

国際連盟

  • 1920 年発足、本部はジュネーブ
  • 最初の総会に 41 か国
  • アメリカは加わらなかった

国際連合

  • 1945 年発足、本部はニューヨーク
  • 武力による制裁もできる
  • 冷戦では五大国の拒否権が壁に
青空の下、白い石造りの大きな建物と、その前に広がる芝生と石畳の中庭
スイス・ジュネーブのパレ・デ・ナシオン。国際連盟の本部として建てられ、1936 年に連盟が移りました。今は国際連合のジュネーブ事務局が使っています。写真: Vassil(CC0・Wikimedia Commons)

02

冷戦とその後: ベルリンの壁は、28 年間立っていた

第二次世界大戦のあと、アメリカを中心とする国々と、ソ連を中心とする国々が対立しました。冷戦です。ドイツは東西に分かれ、東ドイツの中にある西ベルリンは、西ドイツの飛び地になりました。

1961 年 8 月、東ドイツ政府は、住民が西ベルリンへ移るのを防ぐため、西ベルリンを有刺鉄線で囲みました。1975 年には、高さ 3 m あまり、全長 155 km のコンクリートの壁が完成します。壁を越えて逃げようとして、命を落とした人もいました。

1980 年代の終わり、東ヨーロッパの国々で民主化を求める声が高まります。1989 年 11 月 9 日、東ドイツ政府が国外への旅行の自由化を発表すると、それを知った人々が集まり、壁は壊されていきました。翌 1990 年に東西ドイツは統一します。

壁が立っていたのは、1961 年 8 月 13 日から 1989 年 11 月 9 日までの 10,315 日です。2018 年 2 月 5 日、壁がなくなってからの日数が、壁が立っていた日数に並びました。今の高校生にとって、冷戦は生まれる前の出来事です。だからこそ、資料で確かめる意味があります。

生まれる前の出来事こそ、資料と数字で確かめると実感がわきます。

図解ベルリンの壁の 28 年

  1. 11961 年 8 月有刺鉄線で西ベルリンを囲む
  2. 21975 年コンクリートの壁が完成
  3. 31989 年 11 月旅行の自由化の発表で壁が開く
  4. 41990 年東西ドイツが統一
草地の横に、灰色のコンクリートの壁が長く続き、表面に黒いしみが縦に流れている
ベルリンのベルナウアー通りに残るベルリンの壁。今は記念の場所として保存され、壁のあった場所をたどることができます。写真: Ansgar Koreng(CC BY 3.0 de・Wikimedia Commons)

03

経済のグローバル化: 箱の大きさをそろえたら、世界が近くなった

冷戦が終わると、地域どうしの連携が進み、市場経済が世界中に広がりました。解説は、情報通信技術の進歩とともに多国籍企業の活動が活発になり、人や商品、お金が国境を越えて動く量が大きく増えたことを扱うとしています。

その物の流れを支えるのが、コンテナです。船で運ぶコンテナの大きさは国際規格で、幅と高さが約 2.4 m、長さが約 6 m か 12 m に決まっています。箱ごと船からトラックや鉄道に積みかえられるので、荷物の積み下ろしの時間が大きく短くなりました。太平洋の航路では、1967 年にアメリカの会社がコンテナ船を走らせたのが始まりです。日本の船会社も、アメリカ西海岸やオーストラリアへのコンテナ船の定期航路を開いていきました。

一方で、グローバル化の中で、豊かさの差も問題になりました。解説は、国と国の間や国の中の経済格差と、それを縮めようとする国際連合などの取り組みを学ぶよう求めています。2015 年 9 月に国連のサミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」も、その流れの中にあります。箱の大きさをそろえる小さな決まりが、世界の暮らしを大きく変えたのです。

解説は、1970 年代の石油危機のあと、先進工業国の政治や経済がどう変わったのかを考える学習も例に挙げています。そこで示される問いの一つが、「その中で、なぜ日本の経済は成長を続けられたのか」です。日本の歩みも、世界の動きと比べて考えるのが世界史探究です。

規格をそろえることは、国と国を近づける力を持っています。

図解コンテナで荷物が届くまで

  1. 1工場で詰める決まった大きさの箱に荷物を入れる
  2. 2トラックで港へ箱ごと港のコンテナ置き場へ
  3. 3船で海を渡るクレーンで箱ごと積み下ろし
  4. 4列車やトラックへ箱を開けずに目的地まで運ぶ

04

科学技術と社会: 宇宙で競った国どうしが、宇宙で手を組んだ

1957 年 10 月 4 日、ソ連は人類で初めての人工衛星スプートニク 1 号を打ち上げました。直径 58 cm、重さ 83.6 kg の金属の球です。冷戦の時代、アメリカとソ連は宇宙開発でも競い合いました。解説も、冷戦の時期の米ソの宇宙開発競争と、冷戦のあとにアジアやヨーロッパの国々が加わったことを扱うとしています。

今、地上約 400 km を回る国際宇宙ステーション(ISS)は、15 か国が協力して計画を進めてきました。アメリカ、日本、カナダ、ヨーロッパの 11 か国、ロシアです。JAXA によると、計画は 1984 年にアメリカで正式に始まり、冷戦が終わったあとの 1993 年にロシアの参加が決まります。最初の部品が打ち上げられたのは 1998 年です。

冷戦の時代に宇宙で競い合った国の宇宙飛行士が、同じ実験施設で一緒に働いているのです。JAXA は ISS を、国際協力と平和のシンボルとも説明しています。一方で解説は、原子力や宇宙の技術が、大きな成果とともに、意図しなかった負の結果ももたらしてきたことに気付くよう求めています。

科学技術の歴史は、国どうしの対立と協力の歴史でもあります。

図解冷戦の時代と冷戦のあと

冷戦の時代

  • 1957 年 スプートニク 1 号
  • 米ソが宇宙開発を競う
  • 国が計画を大きく動かす

冷戦のあと

  • 1993 年 ロシアの参加が決まる
  • 1998 年 ISS の組み立てが始まる
  • 15 か国が協力して進める
黒い背景の前に置かれた、4 本の長いアンテナが後ろへ伸びる銀色の金属の球
人類初の人工衛星スプートニク 1 号の複製(アメリカ国立航空宇宙博物館)。本物は 1957 年に打ち上げられ、直径 58 cm の球に 4 本のアンテナが付いていました。写真: NASA(Public domain・Wikimedia Commons)

05

自分で主題を決める: 世界史探究のゴールは、自分の問い

世界史探究の最後には、紛争の解決や共生、経済格差の是正や経済発展、科学技術の発展や文化の変容の中から、自分で主題を決めて探究します。たとえば「国際連盟の経験から、国際連合は何を変えたのか」「ISS のような協力は、ほかの分野でもできるのか」といった問いです。

問いを立てたら、資料を集めて根拠を並べます。国際連盟の規約は 26 条でできていて、ユネスコ憲章の前文は日本語でも読めます。統計や新聞記事と組み合わせ、「なぜそう言えるのか」を自分の言葉で説明できれば、立派な探究です。

つまずきやすいのは、現代の話になるほど、ニュースの意見と事実が混ざってしまうことです。だれが、いつ、どの立場で書いた資料なのかを確かめ、反対の立場の資料も読むようにしてください。

大学では、国際関係論や国際政治学、国際法、現代史、科学技術史などで、この続きを学びます。国際機構の文書を読む授業のほか、大学には模擬国連のサークルも数多くあります。

クイズ地球世界の課題クイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1国際連盟が正式に発足したのは何年?

  2. Q2ユネスコ憲章の前文によると、戦争はどこで生まれる?

  3. Q3国際宇宙ステーションの計画に、ロシアの参加が決まったのは何年?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 国際宇宙ステーションを自分の目で見る

    国際宇宙ステーションは、条件がよければ夜空を横切る明るい光として見えます。JAXA の支援を受けたサイト「#きぼうを見よう」で、住んでいる地域で見える日時を調べ、家族や友達と見上げてみましょう。

    #きぼうを見よう
  • ユネスコ憲章の前文を読む

    文部科学省が公開している日本語訳で、前文を全部読み、心に残った 1 文を書き出しましょう。その文を今のニュースの出来事と結び付け、200 字で説明すると、探究の練習になります。

    文部科学省「ユネスコ憲章」
  • JICA 地球ひろばで世界の課題に触れる

    東京・市ヶ谷の JICA 地球ひろばは入館無料で、開発途上国の課題や国際協力を、見て、聞いて、さわって体験できます。経済格差や国際協力を主題にするときの入り口になります。

    JICA 地球ひろば
  • 模擬国連に参加する

    国の代表になりきって、国際的な課題の決議を話し合う活動です。全日本高校模擬国連大会など、高校生向けの大会や体験会があるので、学校の先生に情報を聞いてみましょう。

「地球世界の課題」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 46 件から探せます。

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よくある質問

現代の出来事も、歴史として学ぶのですか?

学びます。世界史探究の「地球世界の課題」では、20 世紀の後半から 21 世紀にかけての出来事も扱います。今の課題がどのように生まれてきたのかを、資料をもとにさかのぼって考えるのが、この分野の学び方です。

国際関係に興味があります。どんな学部で学べますか?

法学部や国際関係学部、外国語学部、経済学部などで学べます。大学によって学部の名前や科目は異なるので、志望校の科目の一覧で「国際関係」「国際政治」「国際法」などを探してください。