図 1 世界史の広がり世界史の広がり 3
結び付く世界
産業革命、大西洋をはさんだ革命、帝国主義、二つの世界大戦を通して、世界が一つに結び付いていった時代を学ぶ分野です。インドの綿布、人権宣言、日本の標準時など、遠い出来事が今の暮らしにつながっています。

ひとことで言うと
クラスのグループチャットができた日
クラスの連絡用のグループチャットができると、1 人の発言がすぐに全員に届き、良い知らせも悪い知らせも一気に広がります。19 世紀の世界も、蒸気船や鉄道、電信でつながり、ある地域の出来事が、遠くの地域にすぐ影響するようになりました。

01
産業革命: きっかけの一つは、インドの綿の布
世界史探究の「諸地域の結合・変容」では、産業革命と大西洋をはさんだ革命、帝国主義、二つの世界大戦を学びます。全員が学ぶ歴史総合でも、近代化や大衆化を、日本と世界を合わせて学びます。解説は、公文書や手紙・日記、風刺画、写真、統計、地図などの資料を使うよう示しています。
17 世紀の終わり、イギリス東インド会社は、インドの綿布を大量に輸入しました。港町カリカットから運ばれたので、キャラコ(キャリコ)と呼ばれます。インドの綿布の輸入が急に増えたことで、イギリスの伝統的な毛織物や絹織物の業者は苦しみ、大きな政治の問題になりました。
イギリスは 1700 年と 1720 年の法律で、インドの綿布の輸入や使用を禁じました。ところが百科事典によると、この禁止は毛織物を守るより、かえって国内の綿工業を育てる結果になりました。これが、綿工業を中心に産業革命が進む原因の一つになったとされます。
解説は、ヨーロッパ・アフリカ・アメリカを結ぶ大西洋三角貿易も、イギリスの産業革命の一つの要因だったと説明しています。その一方で、奴隷貿易で人々を奪われたアフリカは、大きな損害を受けました。一つの国の発展を、ほかの地域の側からも見ることが大切です。綿はその後も世界を結び付けました。解説は、アメリカの南北戦争が、イギリスの綿花の不足やインドの綿花ブームにつながったことにも気付くよう求めています。
一つの国の産業の変化も、ほかの地域とのつながりの中で起こりました。
図解インドの綿布から産業革命へ
- 117 世紀末インドの綿布の輸入が急に増える
- 21700 年染めた綿布の輸入を禁止
- 31720 年綿布の輸入をほぼすべて禁止
- 4その後国内の綿工業が育ち、産業革命へ


02
環大西洋革命: 人権宣言の「人」に入っていたのはだれ?
18 世紀の終わりから、大西洋の両側で革命が続きました。アメリカの独立、フランス革命、そしてラテンアメリカの国々の独立です。解説は、一つの国の政治の変化が、ほかの国の運動を促したことに気付くよう求めています。
1789 年のフランスの人権宣言は、第 1 条で「人は自由で、権利において平等なものとして生まれ、生き続ける」とうたいました。ところが 1791 年、劇作家のオランプ・ド・グージュは、この宣言が女性を無視していると考え、「女性と女性市民の権利宣言」を発表します。その第 1 条は、女性も生まれながらに自由で、権利において男性と平等だというものでした。
同じ 1791 年、カリブ海のフランス領サン=ドマング(今のハイチ)で、大きな蜂起が始まりました。8 月 22 日から 23 日にかけての夜のことです。ユネスコは、この蜂起が大西洋の奴隷貿易の廃止に大きな役割を果たしたとしています。そして、8 月 23 日を「奴隷貿易とその廃止を記念する国際デー」にしました。ハイチは 1804 年に独立し、ラテンアメリカで最初の独立国になりました。
同じ「自由と平等」という言葉を、だれが、どの立場で使ったのかを資料で比べると、革命の姿が立体的に見えてきます。
同じ言葉でも、使う人の立場によって指す範囲が変わります。
図解「自由と平等」を比べる
1789 人権宣言
- フランスの国民議会
- 人は自由で権利において平等
- 全 17 条
1791 女性の権利宣言
- 劇作家グージュ
- 女性も男性と平等だと主張
- 全 17 条
1791〜 ハイチ
- サン=ドマングで蜂起
- 1804 年に独立
- ラテンアメリカ初の独立国

03
世界の一体化と帝国主義: 1884 年、時刻をそろえ、アフリカを分けた
19 世紀、鉄道や蒸気船、電信が世界を結びました。解説は、主にイギリスが整えた電信や国際標準時、国際法などが、世界の共通のしくみになったことに触れています。1884 年、アメリカのワシントンで開かれた国際会議で、イギリスのグリニッジ天文台を通る子午線が、経度 0 度と決まりました。
日本もこの流れに加わります。1886 年の勅令で、1888 年 1 月 1 日から、東経 135 度の時刻を日本の標準時と定めました。この子午線は兵庫県明石市を通り、グリニッジとの時差は 9 時間です。それまで日本では、鉄道は東京や大阪の時刻、気象の観測は京都の時刻と、使う時刻がばらばらでした。
同じ 1884 年の 11 月から翌年 2 月まで、ドイツのベルリンでも国際会議が開かれました。オスマン帝国を含む欧米の 14 か国が、アフリカ分割の決まりを話し合いました。時刻をそろえる会議と、土地を分ける会議が、同じ年に開かれていたのです。地図帳でアフリカの国境を見て、まっすぐな線が多いのはなぜか、問いを立ててみてください。
帝国主義の時代、アジアの国々では武装した抵抗が起こりました。一方で、西欧型の教育を受けて、行政官や法律家、教師として活躍する人も現れたと解説は説明しています。同じ出来事でも、支配した側と支配された側の資料を並べて読むことが欠かせません。人の移動も世界を結びました。解説は、ヨーロッパからアメリカやオセアニアへの大規模な移民や、日本からハワイやアメリカへの移民の始まりにも気付くよう求めています。
世界が結び付くと、時刻や法のような共通のしくみが必要になります。
図解なぜ標準時が必要になった?
- 1資料 1: 鉄道は東京と大阪で別々の時刻を使っていた
- 2資料 2: 電信は 1878 年から東京の正午で時計を合わせた
- 3根拠: 鉄道が全国でつながると、時刻の違いで混乱するおそれ


04
二つの世界大戦: 総力戦のあと、女性の参政権が広がった
20 世紀の二つの世界大戦は、国の人と物をつぎ込む総力戦になりました。歴史総合の解説は、参戦した国の数や戦死者の数の増え方を示す資料を読み、それまでの戦争との違いを考える学習を例に挙げています。
戦争は、暮らしと政治の形も変えました。イギリスでは第一次世界大戦中、女性の参政権を求める団体も戦争に協力し、1918 年に 30 歳以上の女性に選挙権が認められます。1928 年には、21 歳以上の男女が同じように選挙権を持つようになりました。アメリカでは 1920 年、憲法の修正第 19 条で女性の参政権が認められています。
フランスで女性の参政権が認められたのは 1944 年です。日本では 1946 年の総選挙で、女性が初めて投票しました。国によって時期がずれるのはなぜか。戦争との関係だけで説明できるのか。年表と統計を並べると、「なぜ」と「その結果」を確かめる問いがいくつも生まれます。
大きな出来事のあとに何が変わったかを、国ごとに比べて考えます。
図解女性の参政権が認められた年
- 11918 年 イギリス30 歳以上の女性に選挙権
- 21920 年 アメリカ憲法の修正第 19 条
- 31944 年 フランス第二次世界大戦の終わる前年
- 41946 年 日本総選挙で女性が初めて投票

05
大学では: 新聞や議会の記録、統計で近代を読み直す
この分野でつまずきやすいのは、革命や戦争の名前と年号を、地域ごとにばらばらに覚えてしまうことです。インドの綿布とイギリスの法律、ハイチの蜂起とフランス革命、ワシントンとベルリンの会議を思い出してください。同じ時代の出来事を線で結び、「なぜ」と「その結果」を矢印で書き込むと、因果の流れが見えてきます。
資料は 1 つだけで判断しないことも大切です。解説は、同じ出来事についての複数の風刺画やポスターを比べ、だれが、何のためにつくったのかを考える学習を挙げています。同じ資料をもとにしても、読み方によって複数の歴史の書き方がありうると知るためです。
大学では、西洋史や東洋史、経済史、国際関係史、ジェンダー史などで、この続きを学びます。多くの大学では、当時の新聞や議会の記録、日記、統計を読み、自分で立てた問いを確かめる卒業論文に取り組みます。
高校生のうちに試せること
明治の公文書で標準時の始まりを探す
国立公文書館アジア歴史資料センターでは、明治から戦前の公文書を無料で見られます。「標準時」で検索し、1888 年の元日に各地で臨時の号砲を鳴らしたときの記録を探してみましょう。
国立公文書館アジア歴史資料センター人権宣言と女性の権利宣言を読み比べる
図書館で人権宣言の日本語訳を探し、グージュの女性の権利宣言と条文を並べましょう。「人」が「女性」に置きかえられた条文に印をつけると、何が足りないと考えたのかが見えてきます。フランス語の原文は、フランス憲法院のサイトで読めます。
フランス憲法院「1789 年の人および市民の権利宣言」(フランス語)服のタグで綿の来た道を調べる
家にある綿の T シャツやタオルのタグを見て、どこの国でつくられたかを書き出しましょう。地図に印をつけ、300 年前にインドの綿布がイギリスへ運ばれた流れと比べてみてください。
「結び付く世界」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 74 件から探せます。
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
産業革命は、イギリスだけの話ですか?
イギリスで始まりましたが、インドの綿布や大西洋三角貿易、アメリカの綿花など、世界のほかの地域と深く関わっていました。世界史探究では、一つの国の出来事を、地域どうしのつながりの中で考えます。
戦争の歴史を学ぶのがつらいときは、どうすればいいですか?
無理に細かい場面を追う必要はありません。参政権の広がりや国際機構の誕生のように、戦争のあとに人々が何を変えようとしたのかに目を向けると、学ぶ意味が見えてきます。気持ちが重くなったら、先生や友達と話しながら進めてください。
出典
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 地理歴史編」
- コトバンク「キャラコ禁止法」(「キャラコ」「グージュ」「ハイチ」「本初子午線」「ベルリン会議」「婦人参政権運動」も同じ辞書サイト)
- ユネスコ「International Day for the Remembrance of the Slave Trade and its Abolition」
- フランス憲法院「Déclaration des Droits de l'Homme et du Citoyen de 1789」
- 沼田尚道「日本のインフラ・グランドデザインの時代に思いを馳せる: 日本標準時施行 120 周年」(ITU ジャーナル Vol.38 No.1、2008 年)