図 1 法学の広がり法学の広がり 2
暮らしと取引の法(民事法)
買い物、アルバイト、スマートフォンの契約、家族、会社。人と人とのあいだの約束や争いを扱う法です。中心にある民法は 1896 年に作られ、いまも暮らしの土台になっています。

ひとことで言うと
契約は、自分たちで作るルール
部活の練習時間や当番を、部員どうしの話し合いで決めることがあります。民法の契約も同じで、当事者が合意すれば、その約束が二人のあいだのルールになります。日本学術会議の参照基準も、民法で学ぶことの中に「契約という自分たちでのルール作り」を挙げています。

01
契約: おにぎり 1 個の買い物も契約
コンビニでおにぎりを買うのも、民法では「売買」という契約です(555 条)。契約は、一方の申込みに相手が承諾したときに成立します(522 条)。書面を作らなくても、口約束で成立するのが原則です。アルバイトの採用も、スマートフォンの購入も、すべて契約です。
契約が成立すると、お互いに約束を守る義務が生まれます。約束どおりに商品が届かなければ、契約を解除したり、損害の賠償を求めたりできます。約束が守られないときにどうするかを、細かく決めているのが民法です。
民法は 1896 年に作られ、契約などのルールは約 120 年間ほとんど改正されませんでした。2017 年に大きな改正が成立し、2020 年 4 月 1 日に施行されました。ネット通販やアプリの利用規約のような「定型約款」のルールも、このとき新しく加わりました。
毎日の買い物も、民法の目で見ると契約の連続です。
図解買い物で契約が成立するまで
- 1申込み「これを買います」とレジに出す
- 2承諾お店が会計に応じる
- 3契約の成立売買契約が成り立つ(民法 555 条)
- 4約束を果たす代金を払い、商品を受け取る

02
18 歳から、ひとりで契約できる
2022 年 4 月 1 日、民法の成年年齢が 20 歳から 18 歳に下がりました。成年年齢の見直しは、明治 9 年(1876 年)の太政官布告以来、約 140 年ぶりです。18 歳になると、親の同意がなくても、スマートフォンの契約や、一人暮らしの部屋を借りる契約ができます。
裏返すと、守ってくれていたしくみが 1 つなくなります。未成年者が親の同意なしに結んだ契約は、原則として取り消すことができます(民法 5 条)。18 歳になると、この未成年者取消権が使えなくなります。高校 3 年生のうちに、契約の基本を知っておくことが大切です。
一方で、お酒やたばこ、競馬などの公営競技は、これまでどおり 20 歳からです。結婚できる年齢は、男女とも 18 歳にそろいました(民法 731 条)。
18 歳は、自分で契約し、その責任も自分で負うようになる年齢です。
図解18 歳と 20 歳、何が変わった?
18 歳から
- 親の同意なしで契約できる
- 部屋を借りる・ローンを組む
- 結婚できる(男女とも)
- 10 年有効のパスポート
20 歳から(変わらず)
- お酒・たばこ
- 競馬などの公営競技
- 国民年金への加入

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家族の法: 家族の変化に合わせて見直す
民法には、結婚・親子・相続など、家族のルールも書かれています。家族のかたちが変わると、ルールも見直されます。2026 年 4 月 1 日には、父母が離婚したあとの子どもの養育についての改正法が施行されました。
これまでは、父母が離婚すると、親権者をどちらか一方に決める決まりでした。改正後は、父母の話し合いで、双方を親権者とすることも、一方だけとすることも選べます(民法 819 条)。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所が子どもの利益を考えて決めます。その際、暴力のおそれがあるときなどは、裁判所は一方だけを親権者にしなければなりません。
家族の法は、心理学や福祉ともつながる分野です。家庭裁判所の調査官は、心理学・社会学・社会福祉学・教育学などの知識を使って、子どもや家族と面接し、裁判官に意見を伝えます。
家族のルールは、社会の変化に合わせて、子どもの利益を中心に見直されています。

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会社と知的財産: アイデアや作品を守る
会社のルールを定めるのが、会社法や商法です。2006 年に施行された会社法で、株式会社をつくるときの最低資本金の決まりがなくなりました。法律の上では、資本金 1 円でも株式会社を設立できます。
知的財産法は、目に見えない作品やアイデアを守る法律です。マンガや音楽、写真には著作権があり、その期間は原則として作者の死後 70 年です(著作権法 51 条)。2018 年 12 月 30 日に、それまでの 50 年から延びました。発明を守る特許権は、出願から 20 年です(特許法 67 条)。
SNS に他人が撮った写真やイラストを無断で載せると、著作権の侵害になることがあります。一方で、自分や家族で楽しむためのコピーのように、許可なく使える場合も法律で決められています(著作権法 30 条)。どこまでが自由で、どこからが侵害かを考えるのが、知的財産法の面白さです。
形のない作品やアイデアにも、法律が守る財産としての価値があります。


05
民事裁判: 話し合いで決まらないとき
貸したお金を返してもらえない、借りていた部屋の敷金が戻ってこない。当事者の話し合いで解決しないときは、裁判所に判断してもらえます。その手続を定めるのが民事訴訟法です。
求める金額が 140 万円以下なら主に簡易裁判所、それを超えると地方裁判所が担当します(裁判所法 33 条)。60 万円以下のお金の支払いを求める場合は、原則 1 回の審理で終わる少額訴訟も使えます(民事訴訟法 368 条・370 条)。
2026 年 5 月 21 日には、改正民事訴訟法が全面的に施行されました。だれでも、裁判所のシステムを使ってオンラインで訴えを起こしたり、書面を出したりできます。弁護士などの代理人には、オンラインでの手続が義務づけられています。
裁判は、話し合いで解決できない争いを、法にもとづいて終わらせるしくみです。
高校生のうちに試せること
「社会への扉」で契約のクイズを解く
消費者庁が高校生向けに作った教材で、契約のしくみやクレジットカード、ネット通販の注意点を 12 のクイズで学べます。PDF は無料で読めるので、18 歳になる前に一度解いておきましょう。
消費者庁「社会への扉」アプリの利用規約を読んでみる
いつも使っているアプリやサービスの利用規約を開き、解約の方法やトラブルのときの決まりを探してみましょう。民法の「定型約款」のルールが、身近な画面の中で使われていることが分かります。
パテントコンテストに応募する
文部科学省・特許庁・日本弁理士会・INPIT が、高校生や高専生、大学生から自分で考えた発明やデザインを募るコンテストです。優秀作品に選ばれると、弁理士の支援を受けて特許庁への出願に挑戦できます。
INPIT「パテントコンテスト/デザインパテントコンテスト」
「暮らしと取引の法(民事法)」に関連するコミュニティ
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よくある質問
民法は条文が多いと聞きました。全部覚えるのですか?
民法の条文は 1,050 条まであり、大きな法律です。ただ、大学で目指すのは暗記ではなく、条文を読んで事実に当てはめ、筋道を立てて結論を出す力です。多くの大学では、1 年生で民法総則から学び始めます。
民事裁判と刑事裁判は、何が違いますか?
民事裁判は、お金の貸し借りや損害賠償など、人と人との争いを解決する裁判です。刑事裁判は、検察官が起訴した人について、罪を犯したかどうかと、どんな刑にするかを決める裁判です。同じ出来事について、両方の裁判が開かれることもあります。

