図 1 法学の広がり法学の広がり 1
国のしくみの法(公法)
国や市役所が持つ大きな力を、どう使わせ、どうしばるのか。憲法・行政法・租税法・情報公開の法を通して、国と私たちの関係のルールを考える分野です。

ひとことで言うと
審判にも、守るべきルールがある
サッカーの審判は、笛ひとつで試合を止め、選手を退場させる強い力を持っています。それでも審判は競技規則に従わなければなりません。国も同じで、強い力を持つからこそ、憲法や法律で力の使い方が決められています。

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憲法: 国の力をしばるルール
法律というと、国民が守るルールを思い浮かべるかもしれません。ところが憲法は向きが逆で、まず国の側をしばるルールです。日本国憲法 99 条は、憲法を守る義務を負う人として、天皇・摂政のほか、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員を挙げています。そこに「国民」は書かれていません。
憲法が守ろうとしているのは、一人ひとりの人権です。13 条は「すべて国民は、個人として尊重される」と定めています。21 条は表現の自由を保障し、国が発表の前に中身を調べて差し止める「検閲」を禁じています。SNS で自由に意見を書けるのも、この条文が土台にあるからです。
2016 年 6 月からは、選挙権が 18 歳以上になりました(公職選挙法 9 条)。憲法を変えるには、衆議院と参議院でそれぞれ総議員の 3 分の 2 以上が賛成して国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得る必要があります(96 条)。1947 年 5 月 3 日の施行から 2026 年 10 月まで、日本国憲法は一度も改正されていません。
憲法は、国の力が行きすぎないように、国の側をしばるためのルールです。
図解法律と憲法、守るのはだれ?
法律(刑法など)
- 主に国民が守るルール
- 国会の多数決で作り、変える
憲法
- 主に国の側が守るルール
- 変えるには国会の発議と国民投票


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行政法: 役所の仕事にもルールがある
運転免許、飲食店の営業許可、マイナンバーカード、保育園の入園。国や市役所の仕事は、毎日の暮らしのすみずみに関わっています。こうした行政の活動に根拠を与え、行きすぎを防ぐのが行政法です。
「行政法」という名前の法律はありません。行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法など、たくさんの法律をまとめた呼び方です。役所の決定に納得できなければ、役所に見直しを求める審査請求や、裁判所に取消しを求める訴えができます。役所の違法な行為で損害を受けたときは、国家賠償法で賠償を求められます。
日本学術会議の参照基準によると、公法学を学ぶと、公権力を使うときに必要な法的根拠と手続が分かります。違法な公権力に対する不服申立てや賠償請求の手続も知ることができます。ニュースに出てくる「許可」「規制」「補助金」の意味が分かるようになるのも、行政法を学ぶ面白さです。
役所の大きな力も、法律の根拠と決められた手続があってはじめて使えます。
図解役所の決定に納得できないとき
- 審査請求役所に決定の見直しを求める
- 取消訴訟裁判所に決定の取消しを求める
- 国家賠償違法な行為による損害の賠償を求める
- 情報公開請求決定の理由が分かる文書を求める

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租税法: 税も法律で決める
税は、国や地方公共団体が国民から強制的に集めるお金です。だからこそ憲法 84 条は、新しく税を課したり、今の税を変えたりするには、法律で決めなければならないと定めています。これを租税法律主義と呼びます。税率を 1% 変えるのにも、国会で法律を改正する必要があります。
身近なのは消費税です。2019 年 10 月 1 日から、消費税は標準税率 10% と軽減税率 8% の 2 本立てになりました。軽減税率の対象は「酒類・外食を除く飲食料品」などです。コンビニのおにぎりも、持ち帰るなら軽減税率、店内のイートインで食べるなら外食として標準税率になります。
租税法は、会社の取引や相続など、お金が動く場面のほとんどに関わります。国税専門官として税務署などで働く人、税理士、企業の経理や法務の担当者など、租税法の知識を生かす仕事はたくさんあります。
税は国会が法律で決める。これが、国と国民のお金の約束です。
図解同じおにぎりでも税率が変わる
- 1店内で食べるなら、会計のときに申し出る
- 2持ち帰る → 飲食料品として軽減税率
- 3イートインで食べる → 外食として標準税率

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情報公開の法: 役所の文書はだれでも求められる
国の役所が持っている文書は、見せてほしいと求めることができます。2001 年 4 月に施行された情報公開法は、開示を請求できる人を「何人も」と定めています。年齢や国籍は問わないので、高校生も請求できます。
手数料は 1 件 300 円(オンラインなら 200 円)で、役所は原則として 30 日以内に開示するかどうかを決めます。個人のプライバシーに関わる部分などは、黒く塗られて出てくることもあります。何を公開し、何を伏せるべきかの線引きは、公法の大事な論点です。
日本で最初に情報公開のしくみを作ったのは、国ではなく山形県の金山町でした。1982 年に全国で初めて情報公開条例(公文書公開条例)を作り、その後、全国の自治体や国に広がりました。小さな町から始まったしくみが、いまは国の法律になっています。
役所の文書は、国民みんなで確かめられるようにしておく。それが情報公開の考え方です。

高校生のうちに試せること
憲法の全文を読んでみる
日本国憲法は、前文と 103 の条文でできています。e-Gov 法令検索で全文を開き、気になった条文に印を付けておきましょう。ニュースで憲法の話題が出たときに読み返すと、条文の意味がよく分かります。
e-Gov 法令検索「日本国憲法」税の作文に応募する
国税庁は毎年、全国の高校の協力を得て「税に関する高校生の作文」を募集しています(2026 年度の締め切りは 9 月 7 日でした)。税の学習コーナーで税のしくみを調べ、身近な税について自分の考えを書いてみましょう。
国税庁「税の学習コーナー」自分の町の条例を探す
市区町村のウェブサイトには、その町の条例や規則をまとめた「例規集」があります。自転車の安全利用やごみの出し方の条例を探して読んでみましょう。国の法律と町の条例の違いを考えるきっかけになります。
「国のしくみの法(公法)」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 12 件から探せます。
よくある質問
公法を学ぶと、どんな仕事に役立ちますか?
国や自治体で働く公務員は、法律にもとづいて仕事をします。制度を作る仕事でも、窓口で住民に説明する仕事でも、公法の知識は毎日使います。報道の仕事や企業の法務でも、表現の自由や規制のしくみを知っていると、判断の助けになります。
行政法は、どの法律を読めばよいのですか?
「行政法」という 1 つの法律はありません。大学では、行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法・国家賠償法などを横断して、行政に共通する考え方を学びます。多くの大学では 2 年生ごろに学びますが、時期は大学によって異なります。

