図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 3
3 年: 判例で考える
専門ゼミに入り、判例を読み込んで報告し、仲間と討論する 1 年です。裁判の手続きを学ぶ訴訟法や、会社・働く人・国と国のルールなど、社会に近い科目も増えます。

ひとことで言うと
将棋の名局を 1 手ずつ並べ直す
将棋の棋士は、過去の名局を 1 手ずつ並べ直し、なぜその手を選んだのかを考えて力をつけます。判例研究も同じです。裁判所が結論に至った理由を 1 つずつたどり、自分ならどう判断するかを考えます。

01
専門ゼミに入る: 先生とテーマを選ぶ
専門ゼミ(演習)は、1 人の先生のもとに少人数の学生が集まり、1 つの分野を深く学ぶ授業です。関西大学の法学部では、3・4 年にとる「専門演習」をゼミと呼んでいます。それまでの演習との違いは、学生自身の興味や関心にもとづいて、高度なテーマを探究する点です。
ゼミのテーマは先生の専門で決まります。関西大学の憲法のゼミでは、AI 技術が民主制に与える影響や、SNS での表現の法的な限界などを、判例と学説を手がかりに議論しています。知的財産法のゼミでは、ブランドやデザインを守る判例を分析しています。労働法のゼミでは、労働時間やフリーランスの保護など、各自が選んだテーマを報告します。
労働法のゼミの紹介では、最初は意見を言うのをためらっていた学生も、秋学期に入るころには慣れて、議論の時間が足りなくなることもあるそうです。憲法のゼミは、自分の頭で問いを立て、自分の言葉にする力を鍛えることを目標に掲げています。
授業では、会社法・労働法・国際法など、社会の具体的な場面のルールを学ぶ応用の科目も増えます。授業で学んだ内容は、そのままゼミの報告や討論の材料になります。
ゼミは、先生の専門と自分の関心が重なるところを選びます。
図解3 年のゼミのテーマ(例)
- 憲法AI と民主制・SNS の表現
- 知的財産法ブランドとデザインの保護
- 労働法労働時間・フリーランスの保護
- 商法・会社法現代の商取引の課題
- 国際法条約と国と国の争い

02
判例研究: 1 つの判決を深く読む
法学のゼミでよく行うのが、判例研究です。担当の学生が 1 つの判決を選び、事件の事実、裁判所の判断とその理由、関連する判例や学説を調べて報告します。報告のあとは、ほかのゼミ生との質問と討論が続きます。
よく取り上げられるのが、最高裁判所の判決です。最高裁判所には 15 人の裁判官がいて、5 人ずつの小法廷と、15 人全員がそろう大法廷で審理します。裁判所法 11 条により、最高裁の判決には各裁判官の意見が書かれます。多数意見と違う「反対意見」を読み比べるのも、判例研究の面白さです。
関西大学の卒業生は、3 年の商法のゼミで、毎回賛成と反対の立場に分かれてディベートをしました。どちらの立場でも論拠を示せるよう準備する習慣が付いたそうです。関西学院大学や西南学院大学との合同ゼミでは、「入店拒否は適法か違法か」をめぐって他大学の学生と議論しました。反対の立場からも考えることで、自分の主張が強くなります。
判決の結論だけでなく、理由と反対意見まで読みます。
図解判例報告の準備(例)
- 1事件の事実を 1 枚にまとめる
- 2判決の結論と理由を整理する
- 3反対意見や関連する判例・学説を調べる
- 4自分の意見と、その根拠を書く


03
訴訟法: 裁判の手続きを学ぶ
裁判の進め方を定める民事訴訟法と刑事訴訟法も、3 年ごろまでに学ぶ科目です。学ぶ学年は大学によって異なり、関西大学の卒業生は 2 年で民事訴訟法を受けています。2 年までに学んだ民法や刑法が、実際の裁判でどう使われるかが分かる科目です。
民事裁判は、お金の貸し借りなど、個人や会社の間の争いを解決する手続きです。裁判官が双方の言い分を聞き、証拠を調べて判決を出します。裁判所は訴訟のどの段階でも和解を試みることができ(民事訴訟法 89 条)、話し合いで終わる事件もあります。
刑事裁判は、犯罪の疑いがある人について、有罪か無罪か、どんな刑にするかを決める手続きです。裁判所に訴える(起訴する)のは検察官です(刑事訴訟法 247 条)。重大な事件では、国民から選ばれた裁判員が、裁判官と一緒に判断します。
同じ出来事でも、民事と刑事では目的も手続きも違うと押さえると、ニュースの裁判の話がぐっと分かりやすくなります。
図解民事裁判と刑事裁判
民事裁判
- 個人や会社の間の争いを解決する
- 訴えた人と訴えられた人が争う
- 判決のほか、和解で終わることも
刑事裁判
- 犯罪の疑いがある人を裁く
- 検察官が起訴して始まる
- 重大な事件には裁判員も加わる

04
進路の準備: 法科大学院・公務員・就職
3 年は、卒業後の進路に向けて準備が本格的になる年です。法曹コースの学生は、3 年で早く卒業して法科大学院に進む道があります。関西大学では、法曹コースの修了などの要件を満たすと、法科大学院の「特別選抜」の入試に出願できます。
公務員を目指して、3 年から勉強を本格的に始める人もいます。関西大学の卒業生の 1 人は、3 年の 6 月から学内の公務員講座を受け、1 日 6 時間前後を勉強に充てました。同じころ比較政治学のゼミにも入り、47 都道府県の投票率などのデータを集めて分析しています。
民間企業に進む人もたくさんいます。総合リース会社に就職した関西大学の卒業生は、ゼミで契約書の重要なポイントやリスク管理を重点的に学びました。法学部で身に付けた強みとして、事実関係を整理して「何が問題の核心なのか」を取り出す力を挙げています。
高校生のうちに試せること
最高裁判所の庁舎見学に参加する
最高裁判所では、大法廷などを見学できる庁舎見学を行っています。学校の団体向けのほか、一般向けのコースもあります。実施日や予約の方法を裁判所のサイトで確かめ、家族や友だちと参加しましょう。
最高裁判所の見学(裁判所)反対意見のある判決を読み比べる
「裁判例検索」で最高裁判所の判決を探し、反対意見が付いたものを 1 つ選びましょう。多数意見と反対意見の理由を並べて書き出し、自分はどちらに賛成か、理由とともに考えます。
裁判例検索(裁判所)志望校のゼミの一覧を読む
多くの法学部は、ゼミの先生と研究テーマの一覧を公開しています。志望校のゼミを 3 つ選び、どんな判例や社会の問題を扱っているかを調べて、自分なら入りたいゼミを決めてみましょう。
「3 年: 判例で考える」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 26 件から探せます。
よくある質問
判例を読むのに、特別な道具は要りますか?
要りません。裁判所のサイトの「裁判例検索」で、最高裁判所などの判決の全文を PDF で読めます。ゼミでは、大学の図書館にある判例集や法律の雑誌も使います。
ゼミは必ず入らないといけませんか?
大学によって異なります。必修の大学もあれば、選んで受ける大学もあります。少人数で報告と討論を重ねるゼミは、法学部の学びの中心の 1 つなので、志望校のゼミの数やテーマを調べておくと安心です。
民事裁判と刑事裁判が、同じ出来事で両方行われることはありますか?
あります。たとえば交通事故では、けがをさせた人の罪を問う刑事裁判と、損害の賠償を求める民事裁判が、別々に行われることがあります。目的が違うので、手続きも別です。


