図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 4
4 年: 考えを書いて伝える
ゼミで自分の問いを深め、ゼミ論文や卒業論文にまとめる 1 年です。模擬裁判や大学対抗の大会、裁判の傍聴で、法が使われる現場にも近づきます。

ひとことで言うと
自由研究を、人に伝わる論文に仕上げる
夏休みの自由研究は、調べたことを並べるだけでなく、何が分かったかを筋道立てて書くと伝わります。4 年のゼミ論文や卒業論文も同じです。判例や文献を調べ、自分の主張を根拠とともに書き上げます。

01
ゼミ論文・卒業論文: 自分の問いに答える
4 年のゼミでは、3 年までに深めたテーマを、ゼミ論文や卒業論文にまとめます。自分の疑問から問いを決め、判例・文献・条文を調べて、筋道の通った文章に仕上げる作業です。
法学部では、卒業論文が必修でない大学もあります。関西大学の法学部もその 1 つで、専門演習で論文を書く指導を受けると、「研究論文」の単位を別に取れます。卒業の要件は、志望校の案内で確かめてください。
関西大学の卒業生の 1 人は、商法のゼミで、子会社が親会社の株を取得したときの取締役の責任をテーマに、約 4 万字の卒業論文を書きました。400 字詰めの原稿用紙なら 100 枚分です。法令の解釈が複数ありうる中で、実際の企業の事例も参照しながら判例を読み解き、法的思考の奥深さを感じたと話しています。
論文では、反対の考えにも答えながら自分の主張を示します。
図解論文ができるまで(例)
- 1問いを立てる身近な疑問を法の問題にする
- 2調べる判例・文献・条文を集める
- 3組み立てる主張と根拠の順番を決める
- 4書く反対の考えにも答える
- 5発表・提出ゼミで意見をもらって直す

02
模擬裁判: 裁判官・検察官・弁護人を演じる
模擬裁判は、架空の事件をもとに、学生が裁判官・検察官・弁護人などの役に分かれて、法廷のやりとりを再現する学びです。取り組む学年や形は、大学によって異なります。
立命館大学の 2016 年の記事によると、法学部では 2 年生の前期に、授業として模擬裁判を行っていました。裁判官・検察官・弁護人・被告人・証人の 5 つの役に分かれ、約 1 か月かけて準備します。実際の裁判と同じく判決は決まっておらず、証人からどんな証言を引き出すかで結論が変わります。
準備では、弁護士として働く卒業生が、争点になりそうな疑問点や矛盾を学生に問いかけます。模擬裁判のあとの 2 年の後期には、法律事務所で学ぶ実習に進みます。法科大学院のある朱雀キャンパスには、最新の設備を備えた法廷教室もあり、模擬裁判に使えます。
学生が自分たちで続ける模擬裁判もあります。山形大学では、学生の自主ゼミ「模擬裁判実行委員会」が、年に 1 度、市民に向けて裁判劇を公演しています。1〜3 年生の約 120 人が 1 年がかりで準備し、裁判所や検察などの協力を得て、企画や脚本、演出まで学生が担当します。2019 年の公演は 47 回目でした。
図解模擬裁判の進め方(例)
- 1事件を決める架空の事件と証拠を用意する
- 2役を分ける裁判官・検察官・弁護人など
- 3準備する主張と質問を練り上げる
- 4法廷で演じる証人に質問し、意見を述べる
- 5振り返る判決の理由を話し合う

03
大学対抗の大会: 交渉と仲裁で競う
学外の大会に挑む学生もいます。大学対抗交渉コンペティション(INC)は、大学どうしが交渉と仲裁の力を競う大会です。2002 年に始まり、2026 年 11 月には 25 回目が開かれる予定です。
大会は 2 日間で、1 日目は模擬仲裁、2 日目は模擬交渉です。どちらも国際的なビジネスを題材にした問題で、各大学は約 2 か月かけて、英文の契約書を含む数十ページの資料に取り組みます。日本語の部と英語の部があり、英語の部では書面から口頭のやりとりまで全て英語です。
2002 年の第 1 回は 4 大学・74 人の参加でしたが、2024 年には 29 大学・279 人に広がりました。審査員は実務家・裁判官・弁護士・研究者が務めていて、プロから直接学べるのも大会の魅力です。
図解模擬仲裁と模擬交渉
模擬仲裁(1 日目)
- 仲裁廷の前で主張を戦わせる
- 大会の前に準備書面を出す
- チーム全員が弁護団を務める
模擬交渉(2 日目)
- 相手の会社と直接話し合う
- 共通の情報と秘密の情報を使う
- 副社長などの役職を分担する

04
裁判の傍聴: 本物の法廷を見に行く
憲法 82 条は、裁判の審理と判決を、公開の法廷で行うと定めています。大阪地方裁判所の案内によると、公開の法廷で行われる民事・刑事の裁判は、誰でも傍聴できます。予約や身分証の提示などの特別な手続きは要りません。
当日の予定は、玄関ホールや各法廷の前にある開廷表で確かめます。大阪地方裁判所では、法廷が開かれるのは午前 10 時ごろから正午ごろと、午後 1 時ごろから 5 時ごろまでです。メモは自由ですが、裁判所の敷地内では写真の撮影と録音はできません。
教科書で学んだ手続きが、目の前で進んでいきます。民事と刑事の裁判を 1 つずつ傍聴して比べると、条文が人の暮らしを動かしていることが実感できます。
図解傍聴の 1 日(例)
- 9:30裁判所に着く玄関ホールで開廷表を見る
- 10:00法廷に入る携帯電話の電源を切っておく
- 午前刑事の裁判気づいたことをメモする
- 13:00民事の裁判別の法廷で争いの中身を聞く
- 帰り振り返る民事と刑事の違いをまとめる


05
卒業へ: 進路を決めて、次の学びへ
4 年の前半は、進路が決まっていく時期です。公務員を目指した関西大学の卒業生は、4 年の 6 月ごろまで試験の対策に集中し、人事院の面接や官庁訪問に臨みました。法学の知識そのものより、ゼミのグループワークで培った、論理的に考える力を伝えたそうです。秋からは卒業論文の執筆を進め、防衛省で働くことが決まりました。
法曹を目指す人は、法科大学院に進んで学びを続けます。企業に進む人も多く、関西大学の卒業生には、ゼミで学んだ契約書のポイントやリスク管理の知識を生かして、総合リース会社に就職した人もいます。
4 年間で身につけるのは、条文の知識だけではありません。事実を整理し、問題の核心を見つけ、根拠を示して相手に伝わる言葉で説明する力です。この力は、どんな仕事に就いても生きます。
高校生のうちに試せること
交渉の大会の問題をのぞく
大学対抗交渉コンペティションのサイトでは、その年の大会の問題や規則が公開されています。問題の一部を読み、自分が会社の担当者ならどんな条件を出すか考えてみましょう。
大学対抗交渉コンペティション社説に賛成・反対の意見文を書く
新聞の社説を 1 つ選び、賛成の立場と反対の立場で、それぞれ 400 字の意見文を書きましょう。反対の考えにも答えながら主張する練習は、ゼミ論文や卒業論文の土台になります。
身近な事件で模擬裁判をしてみる
友だちと 3〜5 人で、「貸した自転車が壊れて返ってきた」のような架空の出来事を作りましょう。訴えた側・訴えられた側・裁判官の役に分かれて言い分を述べ合い、裁判官役が理由をつけて結論を出します。
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よくある質問
法学部では、卒業論文を必ず書くのですか?
大学によって異なります。関西大学の法学部のように、卒業論文が必修ではなく、専門演習で指導を受けて論文を書くと単位を取れる大学もあります。志望校の卒業の要件で確かめてください。
模擬裁判には、法律にくわしくなくても参加できますか?
参加できる場があります。山形大学の模擬裁判実行委員会は、1〜3 年生が中心の学生の自主ゼミです。裁判所や検察などの協力を得ながら、1 年がかりで公演を作り上げます。準備を通して、裁判の手続きや法廷のルールを学べます。


