大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

出版・編集

本や雑誌、Web の記事を企画し、書き手と一緒に作品を形にして読者に届ける仕事です。原稿を誰よりも深く読む力と、言葉を正確に整える力が土台になります。

出版社の編集部で、刷り上がったばかりの本の束と赤字の入ったゲラを囲み、作家やデザイナーと楽しそうに話し合う若い編集者たち

ひとことで言うと

作品を世に送り出すプロデューサー

編集者は、自分で物語を書くわけではありません。書き手のよさを見つけ、どんな形で、どんな読者に届けるかを決めます。作品が本になって書店に並ぶまでの道のりを、書き手と一緒に走る仕事です。

01

どんな仕事?: 1 冊の本ができるまで

編集者の仕事は、「どんな本をつくるか」を考える企画から始まります。読者が知りたいこと、まだ知られていない書き手、時代の空気を探して、企画会議で提案します。企画が通ったら、作家やライターに原稿を頼みます。

原稿が届くと、編集者は最初の読者として感想を伝え、構成や表現を書き手と一緒に磨きます。そのあと、文字を組んだ試し刷り(ゲラ)で誤りを直します。デザイナーと表紙や本の形を決めたら、印刷所に送ります。

雑誌や Web の記事では、編集者が企画と構成を考え、ライターが取材して書く分担もよくあります。できあがった本の多くは、取次と呼ばれる会社を通して全国の書店に届きます。

日本の出版市場は、2025 年に紙と電子をあわせて 1 兆 5,462 億円でした。そのうち 紙の本と雑誌は 9,647 億円 です。1976 年に 1 兆円を超えてから、初めて 1 兆円を下回りました。

編集者は、企画から書店に並ぶまでのすべてに関わります。

図解1 冊の本ができるまで(例)

  1. 1企画テーマと読者を決めて会議で提案
  2. 2執筆を頼む作家やライターと内容を相談
  3. 3原稿を磨く最初の読者として感想を伝える
  4. 4ゲラで直す校正・校閲で誤りをなくす
  5. 5印刷・製本表紙や紙を決めて本の形にする
  6. 6書店へ取次を通して全国に届く

02

校正・校閲: 1 文字のまちがいも見のがさない

本になる前の文章は、何度も読み直されます。原稿とゲラを突き合わせて、誤字や脱字、字の並びの乱れを直すのが校正です。直し方を書き込む記号は、日本産業規格(JIS Z 8208「印刷校正記号」)で決められています。そのため、どの会社の人が見ても同じ意味で伝わります。

内容そのものの誤りや矛盾を探すのが校閲です。人名や地名、年号、引用した文が正しいかを、辞書や資料で確かめます。小説なら、登場人物の年齢や季節、時間の流れが途中で食い違っていないかも読みます。

校正の力を確かめる試験に、日本エディタースクールの校正技能検定があり、1966 年から続いています。中級は夏と冬の年 2 回、上級は中級に合格した人が春に受けます。出版社の校閲部や校正の専門会社のほか、フリーランスで働く人もいます。

1 文字の誤りが読者の信頼を左右するので、何人もの目で確かめます。

図解校正と校閲のちがい

校正

  • 原稿とゲラを突き合わせる
  • 誤字・脱字や字の並びを直す
  • JIS の校正記号で書き込む

校閲

  • 事実や数字を資料で確かめる
  • 人名・年号・引用を調べる
  • 話の食い違いや矛盾を探す

03

変わる出版: マンガと電子書籍が伸びている

いまの出版を引っぱっているのはマンガです。2025 年のマンガ(コミック)の市場は、紙と電子をあわせて 6,925 億円でした。出版市場全体の 44.8% にあたり、そのうち 76.1% は電子です。スマートフォンでマンガを読む人が多いことが分かります。

電子出版の市場は 2025 年に 5,815 億円で、出版市場の 37.6% になりました。編集者の仕事も、紙の本だけでなく、電子書籍や Web の記事、SNS での作品の紹介へと広がっています。

紙の本には、売れ残りが出版社に戻ってくる難しさもあります。2025 年の本(書籍)の返品率は 31.9% でした。何部刷るか、誰に向けてどう知らせるかを営業の担当者と考えるのも、編集者の大事な仕事です。

紙と電子、本と Web をまたいで、作品の届け方を考える時代です。

クイズ出版のいまクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q12025 年、紙と電子をあわせた出版市場のうち、マンガが占める割合は?

  2. Q22025 年、出版社から書店に送られた本(書籍)のうち、売れずに戻ってきた割合は?

  3. Q3本の最後のページにある、発行日や「第 3 刷」などが書かれた部分を何という?

0 / 3 問に回答
古書店の棚に、値札の付いた古い本がぎっしりと積み重ねられている
東京・神田神保町の古書店の棚。神保町は古書店が多く集まる本の街として知られ、何十年も前に出た本にも出会えます。写真: 007 Tanuki(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

04

文芸の編集者の 1 日(例)

ここでは、出版社の文芸の編集部で小説を担当する編集者の 1 日の例を紹介します。何人もの作家の作品を同時に受け持ち、進み具合に合わせて仕事の順番を組み立てます。

作家との打ち合わせでは、原稿の感想を伝えるだけでなく、次の作品のテーマや取材先を一緒に考えることもあります。作家がいちばん信頼できる読者になることが、よい作品につながります。

締め切りの前は、ゲラの戻りを待ったり、印刷所と日程を調整したりと忙しくなります。働き方は、会社や担当する本の種類によって大きく異なります。

作家の「最初の読者」として作品と向き合う時間が、仕事の中心です。

図解文芸の編集者の 1 日(例)

  1. 10:00連絡と進行の確認作家や印刷所からのメールを読む
  2. 11:00企画会議新しい本の企画を提案し合う
  3. 13:00作家と打ち合わせ原稿の感想を伝え、直し方を相談
  4. 15:00ゲラを読む校閲の指摘を確かめ、作家に送る
  5. 17:00装丁の相談デザイナーと表紙の案を比べる
  6. 19:00原稿を読む届いたばかりの新作を読み込む

05

大学の学びと入り方・その先

文学部の学びは、編集の仕事と深くつながっています。1 つの作品を一字一句ていねいに読む精読の力は、原稿の良さと弱さを見抜く力になります。文学史を知っていると、「いま、この作品を出す意味」を語れる企画の引き出しが増えます。

書誌学や文献学で、本の形や版のちがいを調べた経験は、校正や校閲にそのまま生きます。日本語学で学ぶ表記や敬語の知識は、文章を整えるときの根拠になります。外国語の原書を読める人は、海外の本を見つけて翻訳出版を提案することもできます。

出版社に入るには、大学を出て新卒の採用試験を受ける道と、編集プロダクションや Web メディアで経験を積んでから移る道があります。本が好きなことに加えて、人の話を聞くのが好きな人、締め切りに向けて段取りを組める人に向いています。

経験を積むと、編集長として雑誌やシリーズ全体をまとめる人、フリーランスの編集者として独立する人もいます。本の宣伝や、映像化・翻訳出版の窓口を受け持つ道もあります。

「本が好き」に、深く読む力と整える力を足すと、編集の仕事が見えてきます。

図解編集の仕事に生きる大学の学び

編集者
  • 精読(講読)原稿の良さと弱さを見抜く
  • 文学史企画の引き出しを増やす
  • 書誌学・文献学本の形や版のちがいを知る
  • 日本語学表記や敬語を正しくそろえる
  • 原書講読海外の本を見つけて紹介する
  • 卒業論文長い文章を組み立てる力

高校生のうちに試せること

  • 好きな本の奥付を見る

    手元の本の最後のページを開き、発行日と「第何刷」かを確かめましょう。何度も刷られている本と初めて刷られた本を比べると、どんな本が長く読まれているかが見えてきます。

  • 部誌やクラスの冊子をつくる

    文芸部や図書委員の仲間と、作品を集めて 1 冊の冊子にまとめてみましょう。テーマを決め、原稿を頼み、読み合わせて誤字を直す流れは、出版の仕事と同じです。

  • 文章の誤りを探し合う

    友だちと作文や感想文を交換し、誤字や事実の誤りを探し合いましょう。直してほしい箇所に印をつけ、理由を短く書き添えるのが、校正・校閲の基本です。

「出版・編集」に関連するコミュニティ

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よくある質問

文学部でないと編集者になれませんか?

なれます。出版社には、法学部や経済学部、理系の学部を出た人もいます。図鑑や専門書の編集では、理系の知識が強みになることもあります。

編集者は自分で文章を書きますか?

本の帯や紹介文、雑誌の記事などを書くことはあります。ただ、仕事の中心は、書き手のよさを引き出し、読者に届く形に整えることです。

校正や校閲の仕事には資格が必要ですか?

必ず必要な資格はありません。日本エディタースクールの校正技能検定のように、力を確かめる試験はあります。辞書や資料で根気よく確かめる習慣が、何よりの力になります。