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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 2

保険・年金・金融

病気や事故、災害がどのくらいの確率で起きるかを見積もり、保険料や年金の掛金を計算する仕事です。その中心にいるのが、確率と統計の専門家「アクチュアリー」です。

家や車、病院、雨雲の模型が並ぶ大きなテーブルを囲み、棒グラフを描いた紙を指して確率を話し合う学生たち

ひとことで言うと

クラスみんなで「もしも」にそなえる

クラスの 40 人が毎月 100 円ずつ出し合えば、だれかがけがをしたときに 4,000 円を手渡せます。でも、いくら集めれば足りるのかは、けがが起きる確率が分からないと決められません。その確率を見積もり、ちょうどよい金額を計算するのがアクチュアリーです。

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どんな仕事?: 見えないリスクを数字にする

アクチュアリーは、確率や統計を使って、将来の不確かな出来事を評価する数理の専門家です。日本では、日本アクチュアリー会の資格試験に合格し、研修を受けた正会員がアクチュアリーとして働いています。2026 年 3 月末の正会員は 2,297 人で、準会員と研究会員を合わせると 5,916 人です。

働く場所でいちばん多いのは生命保険会社で、正会員の 4 割あまり(1,011 人)が所属しています。損害保険会社や、企業年金を扱う信託銀行のほか、最近は省庁やコンサルティング会社、監査法人などで働く人も増えています。

損害保険では、台風や地震のように、めったに起きないのに、起きると大きな支払いになる災害にもそなえます。アクチュアリーの資格は、保険会社の経営に欠かせない保険計理人や、企業年金の年金数理人の要件の 1 つとして、法律で定められています。

保険や年金の約束を何十年も守るための計算を受け持ちます。

図解アクチュアリーが働く 3 つの分野

生命保険

  • 死亡や病気の確率を見積もる
  • 保険料と準備金を計算する
  • 何十年も先まで収支を見通す

損害保険

  • 事故や災害の起きやすさを分析
  • 自動車保険の保険料を細かく決める
  • 台風や地震にそなえて準備する

年金

  • 企業年金の制度を設計する
  • 掛金を年金数理で計算する
  • 積み立てが足りるかを確かめる
雲がうずを巻く大きな台風と、その北に並ぶ日本の南の島々を宇宙から写した白黒の衛星画像
2024 年 8 月末、日本の南に近づく台風(サンサン)を、気象衛星ひまわりがとらえた画像。めったに起きない大きな災害にどれだけそなえるかを考えるのも、損害保険のアクチュアリーの仕事です。写真: CSU/CIRA・JMA/JAXA(Public domain・Wikimedia Commons)

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大学の数学が生きる場面: 保険料と大数の法則

国の生命表(2025 年)によると、30 歳の男性が 1 年のうちに亡くなる確率は 0.00051 です。1 万人いれば、1 年に亡くなるのは平均 5.1 人という計算になります。

この 1 万人がそれぞれ、亡くなったときに 1,000 万円が支払われる 1 年間の保険に入るとします。支払いは平均で 5.1 人 × 1,000 万円 = 5,100 万円です。1 万人で割ると、1 人あたり 5,100 円を集めれば、計算の上では足ります。実際の保険料は、ここに会社の経費や、集めたお金を運用する利回りなども入れて決めます。

ただし、5.1 人はあくまで平均です。1 万人では、年によって 2 人のことも 9 人のこともありえます。加入者が 100 万人になると、平均 510 人に対して、ほとんどの年でぶれは 1 割以内に収まります。人数が多いほど、実際の割合が確率に近づく。これが大数の法則です。

大学では、この法則を確率論で証明し、ぶれの大きさを中心極限定理で見積もります。アクチュアリー試験の第 1 次試験「数学」でも、大数の法則と中心極限定理が出題範囲に入っています。

1 人の未来は分からなくても、大勢の未来は確率で見通せます。

図解1 年間の死亡保険の保険料を計算する(例)

入力30 歳の男性 1 万人が、1,000 万円の 1 年間の保険に入る
  1. 1生命表で、1 年に亡くなる確率 0.00051 を調べる
  2. 2亡くなる人の平均 5.1 人を計算する
  3. 3支払いの平均 5,100 万円を人数で割る
  4. 4経費や運用の利回りを加えて調整する
結果1 人あたり年 5,100 円が、保険料のもとになる

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アクチュアリー試験: 最初の科目は「数学」

アクチュアリーになるには、日本アクチュアリー会の資格試験に合格します。試験は年に 1 回、12 月ごろに行われます。前の年度の 3 月 31 日の時点で満 18 歳以上なら、だれでも第 1 次試験を受けられます。

第 1 次試験は、数学・生保数理・損保数理・年金数理・会計・経済・投資理論の 5 科目です。5 科目に受かると準会員です。その後、第 2 次試験(生保・損保・年金のコースから 1 つ選び、2 科目)に受かって研修を受けると、正会員になります。

2025 年度の試験では、「数学」を 864 人が受けて 260 人が合格しました。合格率は 30.1% です。全科目の合格には最短でも 2 年かかり、過去 5 年の実績では、正会員になるまでに平均 9.0 年かかっています。

数学の試験から始まり、一歩ずつ専門を積み上げていく資格です。

クイズアクチュアリーのクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1日本アクチュアリー会ができたのはいつ?

  2. Q230 歳の男性 1 万人のうち、1 年の間に亡くなる人は計算上およそ何人?(2025 年の生命表)

  3. Q3正会員になるまでにかかる年数の平均は?(過去 5 年の実績)

0 / 3 問に回答

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生命保険会社のアクチュアリーの 1 日(例)

ここでは、生命保険会社で新しい保険の商品づくりを受け持つアクチュアリーの 1 日の例を紹介します。

新しい保険をつくるときは、病気になる確率や入院の日数などのデータから、保険料を計算します。保険料が高すぎれば入る人が少なくなり、低すぎれば将来の支払いが足りなくなります。そのちょうどよいところを、数字で探します。

計算の結果は、営業やシステムの担当者との打ち合わせでも使います。なぜその金額になるのかを、数学を専門にしていない人にも分かる言葉で伝える力が欠かせません。

計算する力と、計算の意味を伝える力の両方を使います。

図解生命保険会社のアクチュアリーの 1 日(例)

  1. 9:00数字の確認前の月の保険金の支払いを見る
  2. 10:00保険料の計算新しい医療保険の案を試算する
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00打ち合わせ営業の担当者と商品の中身を相談
  5. 15:00準備金の点検将来の支払いへの積み立てを確かめる
  6. 17:30試験の勉強12 月の試験の科目にそなえる

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向いている人と入り方・その先

アクチュアリーを目指す人の多くは、大学で数学や統計、経済などを学び、保険会社や信託銀行などに入ってから試験に挑みます。大学では確率論・統計学に加え、微分積分や線形代数が土台になります。18 歳以上ならだれでも受けられるので、在学中から第 1 次試験に挑戦できます。

数字を扱うのが好きな人、何十年も先の未来を想像できる人、こつこつ勉強を続けられる人に向いています。経験を積むと、保険計理人や年金数理人として、会社や年金制度の健全さに責任を持つ立場になる人もいます。

最近は、会社全体のリスクをまとめて管理する仕事(ERM)や、データサイエンスの分野でも、アクチュアリーの力が求められています。リスク管理の国際資格である CERA を取る人もいます。

数学を武器に、社会の安心を何十年も支える専門職です。

図解アクチュアリーへの道

  1. 1大学で学ぶ確率論・統計学・微分積分など
  2. 2研究会員第 1 次試験の 1 科目以上に合格
  3. 3準会員第 1 次試験の 5 科目に合格
  4. 4正会員第 2 次試験に合格し、研修を受ける
  5. 5保険計理人など会社や年金の健全さに責任を持つ

高校生のうちに試せること

  • 生命表で保険料を計算してみる

    厚生労働省の簡易生命表には、年齢ごとの 1 年間の死亡率が載っています。家族の年齢の死亡率を使って、1 万人が 1,000 万円の保険に入ったときの 1 人あたりの金額を計算してみましょう。

    令和 7 年簡易生命表の概況(厚生労働省)
  • 試験の過去問題をのぞいてみる

    日本アクチュアリー会のサイトでは、資格試験の過去問題を無料で見られます。第 1 次試験「数学」の問題を眺めて、高校で習う確率の考え方がどこに使われているかを探してみましょう。

    資格試験過去問題集(日本アクチュアリー会)
  • 現役のアクチュアリーの話を読む

    日本アクチュアリー会のサイトでは、生命保険・損害保険・年金などで働く 10 人の仕事が紹介されています。数学や情報のほか、物理や文学部の出身の人もいます。気になる分野の話から読んでみましょう。

    アクチュアリーという仕事の魅力(日本アクチュアリー会)

「保険・年金・金融」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 9 件から探せます。

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よくある質問

アクチュアリーになるには、数学科に行く必要がありますか?

決まりはありません。数学科のほか、経済学部や工学部、情報系の学部などからも目指せます。ただ、試験の最初の科目は確率・統計・モデリングを扱う「数学」なので、大学で確率論と統計学をしっかり学んでおくと有利です。

AI が広がると、アクチュアリーの仕事はなくなりませんか?

計算そのものはコンピュータが行いますが、どんな前提で計算するか、結果を経営にどう生かすかを決めるのは人の仕事です。日本アクチュアリー会も、データサイエンスや機械学習の手法を使うことで、活躍の場が広がっていると説明しています。

試験の制度は変わりますか?

日本アクチュアリー会は、2027 年度に資格試験と研修の制度を見直す予定だとしています。目指す人は、最新の情報を公式サイトで確かめてください。