大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1

数学の先生

中学校や高校で数学を教え、生徒が「そういうことか!」と顔を上げる瞬間に立ち会う仕事です。大学で学ぶ代数学や解析学、統計学が、生徒の「なぜ?」に答える力になります。

高校の教室で、黒板の三角形と放物線の図を指して説明する若い数学の先生と、ノートから顔を上げる生徒たち

ひとことで言うと

山の地図が頭に入っている登山ガイド

登山のガイドは、山全体の地図が頭に入っているので、歩く人の様子に合わせて道を選べます。数学の先生も、大学で数学の全体を学んでいるので、生徒のつまずきに合わせて別の道から説明できます。教科書の 1 ページの先に何が続くかを知っている人です。

01

どんな仕事?: 中学・高校で数学を教える

中学校の数学では、正負の数や方程式、関数、図形の証明、確率やデータの活用を学びます。授業の時間は、国の決まり(学校教育法施行規則)で定められています。1 年で 140 時間、2 年で 105 時間、3 年で 140 時間です(1 時間は 50 分)。

高校の数学は、数学 I・II・III と数学 A・B・C の 6 科目です。全員が学ぶのは数学 I で、ほかの科目は学校や進路に合わせて選びます。2018 年に改められた学習指導要領では、数学 C が新しくでき、統計の内容も充実しました。

授業のほかにも、小テストの採点、放課後の質問への対応、部活動の顧問、進路の相談など、生徒と関わる仕事はたくさんあります。学校の外では、塾や予備校の講師として、入試に向けた授業を受け持つ道もあります。

中学と高校で、数学の入り口から大学の手前までを受け持ちます。

図解数学を教える 3 つの場所

中学校

  • 正負の数から図形の証明まで
  • 3 年間で 385 時間の授業
  • 数学の面白さの入り口をつくる

高校

  • 数学 I〜III・A〜C の 6 科目
  • 進路に合わせて科目を選ぶ
  • 微分積分や統計を深める

塾・予備校

  • 入試に向けた授業をする
  • 少人数や個別の指導もある
  • 学校の外で学びを支える
前方に黒板と教卓があり、木の机といすが整然と並ぶ高校の教室
福岡市にある修猷館高校の普通教室。数学の先生は、黒板の図と生徒の表情を行き来しながら授業を進めます。写真: Kenta Odajima(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

02

大学の数学が生きる場面: 生徒の「なぜ?」に答える

授業では、生徒から鋭い質問が飛んできます。中学 1 年の負の数の単元で、「マイナスとマイナスをかけると、なぜプラスになるの?」と聞かれたら、どう答えますか。「そう決まっているから」では、生徒は納得しません。

1 つの方法は、計算を順に並べて見せることです。3×(−2)=−6、2×(−2)=−4、1×(−2)=−2、0×(−2)=0。かける数が 1 減るたびに、答えは 2 ずつ増えています。このきまりを続けると、(−1)×(−2)=2 になるはずだと、生徒は自分で気づけます。

大学の代数学では、この答えを計算のきまり(分配法則など)から証明します。たし算とかけ算のきまりを守る限り、負の数どうしの積は正になるしかありません。理由の奥まで知っている先生は、生徒に合わせた説明の道を何本も用意できます。

日本学術会議の参照基準も、大学で数学を学んだ人は高校までの数学をうまく教えることができ、実際に高校などの先生になる人が多いと述べています。

理由の奥まで知っていると、説明の道を何本も用意できます。

図解「マイナス×マイナス」の授業(例)

入力「マイナスとマイナスをかけると、なぜプラスになるの?」
  1. 13×(−2) から 0×(−2) までを順に並べる
  2. 2答えが 2 ずつ増えるきまりを見つける
  3. 3きまりを続けて (−1)×(−2) を予想する
  4. 4分配法則で、いつでも成り立つと確かめる
結果「きまりを守ると、プラスになるしかないんだ!」と生徒が自分の言葉で説明できる

03

数学の免許で学ぶこと: 代数学から統計学まで

中学校や高校で数学を教えるには、数学の教員免許状が必要です。大学の教職課程では、数学そのものを学ぶ科目と、数学の教え方を学ぶ科目をとります。一種免許状では、この 2 つを合わせて、中学校で 28 単位以上、高校で 24 単位以上が必要です。

数学そのものを学ぶ科目は、国の決まり(教育職員免許法施行規則)で 5 つの分野が定められています。代数学、幾何学、解析学、「確率論、統計学」、コンピュータで、それぞれ 1 単位以上をとります。数学科の授業の多くが、そのまま先生になる準備にもなります。

統計の力は、これからの数学の先生にとってますます大事です。いまの高校の学習指導要領では統計の内容が充実し、数学 A に「期待値」が移り、数学 I・B では仮説検定も扱います。偶然とデータをどう教えるか。大学で確率論と統計学を学んだ先生の出番です。

数学科で学ぶことが、そのまま教える力の土台になります。

図解数学の免許で必ず学ぶ 5 つの分野

数学の教員免許
  • 代数学数や式の計算のきまりを証明する
  • 幾何学図形や空間の性質を調べる
  • 解析学微分積分を土台から組み立てる
  • 確率論、統計学偶然とデータを数学で扱う
  • コンピュータ計算やグラフをプログラムで扱う

04

高校の数学の先生の 1 日(例)

ここでは、公立高校で 1 年生の数学を受け持つ先生の 1 日の例を紹介します。この例では授業は 4 時間で、空いた時間に授業の準備や採点をします。

数学の先生らしい時間が、放課後の質問です。ノートを持った生徒がやって来て、一緒に解き方を考えます。どこで手が止まったかを聞くと、一人ひとりのつまずきが見えてきます。

授業の準備では、問題を解くだけでなく、どんな順に問いかければ生徒が自分で気づけるかを考えます。同じ単元でも、クラスの様子によって説明の仕方を変えることがあります。

教える時間と、生徒のつまずきを知る時間の両方で 1 日ができています。

図解高校の数学の先生の 1 日(例)

  1. 8:15職員の打ち合わせ今日の予定と連絡を確かめる
  2. 8:45授業(1・2 時間目)1 年生の数学 I で二次関数を教える
  3. 10:45小テストの採点まちがいの多い問題を書き出す
  4. 12:35昼休み
  5. 13:25授業(5・6 時間目)数学 A で確率を教える
  6. 15:30放課後の質問生徒のノートを見ながら一緒に考える
  7. 16:30授業の準備明日の問いかけの順番を決める

05

向いている人と、採用・その先

公立学校の先生になるには、免許状を取ったうえで、都道府県や政令指定都市などの採用選考試験に合格します。2024 年度に行われた試験(2025 年度採用)の数学の結果を見てみます。中学校は 4,571 人が受けて 1,490 人が採用され、倍率は 3.1 倍でした。高校は 2,651 人が受けて 671 人が採用され、倍率は 4.0 倍です。

私立の中学校・高校で教える道や、塾・予備校の講師になる道もあります。経験を積むと、教科の主任として学校の数学の授業づくりをまとめる人や、教育委員会の指導主事として地域の先生を支える人もいます。大学院で数学や数学教育を研究し、専修免許状を取ってから先生になる人もいます。

数学が好きなことに加えて、自分がつまずいた経験を覚えている人、相手の考えを最後まで聞ける人に向いています。解けた瞬間のうれしさを生徒と一緒に味わえるのが、この仕事のいちばんの魅力です。

数学を学んだ人が、次の世代に数学を手渡す仕事です。

クイズ数学の先生のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1中学校の数学の授業は、3 年間で合わせて何時間?(1 時間は 50 分)

  2. Q2数学の教員免許を取るとき、大学で必ず学ぶ分野に入っていないのは?

  3. Q32025 年度に採用された公立学校の数学の先生。人数が多いのは中学校と高校のどちら?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 教科書の「なぜ?」を 1 つ説明してみる

    三角形の内角の和が 180° になる理由や、0 で割ってはいけない理由など、教科書のきまりを 1 つ選びましょう。図を使って、友だちやきょうだいが納得するまで説明してみると、教える面白さと難しさが分かります。

  • 学習指導要領の解説を読む

    高校の数学で何をどんなねらいで教えるかは、文部科学省の学習指導要領の解説(数学編)にまとめられています。いま習っている単元を探して、先生がどんな目標で授業をしているかを読んでみましょう。

    高等学校学習指導要領解説(文部科学省)
  • 数学の先生に授業づくりの工夫を聞く

    授業で使う図やたとえを、どうやって考えているのかを数学の先生に聞いてみましょう。同じ単元でもクラスによって説明を変えることがあるかを聞くと、教える仕事の奥深さが見えてきます。

「数学の先生」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 38 件から探せます。

部活・サークルをすべて見る(37 件)

よくある質問

数学の先生になるには、数学科に行くしかありませんか?

数学科のほか、数理科学科や応用数学科、教育学部の数学のコースなど、数学の教職課程を置く学部・学科から目指せます。どの学部・学科で数学の免許を取れるかは、大学によって異なります。

数学が得意でないと、先生にはなれませんか?

大学の数学を学ぶ力は必要です。ただ、自分がつまずいた経験は、生徒のつまずきを理解するときの強みにもなります。難しい問題を速く解けることより、なぜそうなるのかを考え、言葉にできることが大切です。

中学校と高校の両方の免許を取れますか?

取れます。それぞれの免許に必要な単位をとれば、中学校と高校の数学の免許を両方取ることができます。必要な科目や時期は大学によって異なるので、入学後の説明会などで確かめてください。