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図 4 学ぶために必要な科目・学問学ぶために必要な科目 1

数学

数学科では、高校の数学は「使う道具」ではなく「出発点」です。数列と極限は解析学へ、ベクトルと複素数平面は線形代数学へ、整数の性質は代数学へ。高校の単元が、そのまま大学の数学の入口になります。

大学のセミナー室で、高校の教科書と厚い専門書を並べて開く学生、方眼紙に交わる 2 本の直線を引く学生、壁のカレンダーのマスを指でたどる学生たち

ひとことで言うと

いつも通る道を、地図に描き直す

毎日通う道は、迷わずに歩けます。ところが地図に描こうとすると、曲がり角の向きや距離があいまいだったことに気づきます。大学の数学は、高校で使い慣れた公式を、定義と証明という正確な地図に描き直すところから始まります。

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高校の数学は、大学の数学の出発点

経済学や工学では、数学は問題を解くための道具です。数学科では、数学そのものが学ぶ対象になります。高校で使ってきた公式も、「なぜ成り立つのか」を定義から確かめ直します。

日本学術会議の参照基準は、数学の対象は現実の世界にないため、実験では正しさを確かめられないと説明しています。そのため、公理や定義から、三段論法や背理法などの論理で結果を導きます。

参照基準は、数学全体の土台に集合と論理を置き、その上の基礎として線形代数学と微分積分学を挙げています。多くの大学の数学科では、1 年でこの 2 つを学びます。下の図は、高校の単元と大学の分野のつながりの例です。

高校の単元の 1 つひとつが、大学の分野の入口になっています。

図解高校の単元と大学の数学

高校の数学
  • 数列と極限微分積分学と解析学の土台
  • ベクトル・行列線形代数学へ
  • 複素数平面線形代数学と複素関数論へ
  • 整数の性質代数学(群・環・体)へ
  • 図形と証明幾何学と、証明の書き方へ
  • 確率・統計確率論・数理統計学へ

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数列と極限 → 解析学: 利息を細かく付けると e が現れる

数学 B では数列と漸化式を、数学 III では数列の極限を学びます。この 2 つがつながる例が、利息の計算です。1 年で元金が 2 倍になる、年利 100% の預金を考えます。

利息を半年ごとに半分ずつ付けると、1 年後は (1 + 1/2)² = 2.25 倍です。毎月 12 回に分けると約 2.613 倍、毎日 365 回なら約 2.715 倍です。回数を増やしても増え方は鈍り、2.71828… という数に近づきます。これが自然対数の底 e です。

この問題を 1683 年に調べたのが、スイスの数学者ヤコブ・ベルヌーイです。ベルヌーイは、この極限が 2 と 3 の間にあることを示しました。e という記号は、1731 年にオイラーが書いた手紙に初めて登場します。

高校では「限りなく近づく」を直感で扱います。大学 1 年の微分積分学では、本当に 1 つの値に近づくのかを証明します。カギは、「増え続けても、ある値を超えない数列は必ず収束する」という実数の性質です。高校で当たり前に使ってきた事実を、ここで初めて言葉にして確かめます。

数列の極限は、大学の解析学のいちばんの土台です。

図解利息を付ける回数を増やすと

入力1 年で 2 倍になる利息(年利 100%)を、n 回に分けて付ける
  1. 1n = 1: (1 + 1)¹ = 2 倍
  2. 2n = 12(毎月): (1 + 1/12)¹² ≒ 2.613 倍
  3. 3n = 365(毎日): (1 + 1/365)³⁶⁵ ≒ 2.715 倍
結果n を大きくすると、e = 2.71828… に近づく

03

ベクトルと複素数平面 → 線形代数学: 解は「なし・1 つ・無数」

数学 C ではベクトルを学び、学校によっては数を縦横に並べた行列も扱います。大学 1 年の線形代数学では、これらをまとめて、未知数がいくつあっても使える理論に広げます。

中学で学んだ 2 本の直線を思い出してください。2 本の直線は、1 点で交わるか、平行で交わらないか、重なるかのどれかです。連立方程式の解も、ただ 1 組・なし・無数のどれかになります。線形代数学では、未知数が 100 個の連立一次方程式でも、解の数はこの 3 通りしかないことを証明します。

数学 C の複素数平面では、複素数に i をかけると、点が原点のまわりに 90 度回ることを学びます。この回転は、2 行 2 列の行列のかけ算でも書けます。複素数とベクトルと行列が 1 つにつながるのが、線形代数学の面白さです。

連立方程式を解く道具の 1 つに、行列式があります。江戸時代の関孝和は、1683 年に行列式を研究しました。ドイツのライプニッツが同じ考えを使ったのは、その約 10 年後です。日本学術会議の参照基準も、関孝和がヨーロッパに先駆けて行列式を見つけたことを紹介しています。

線形代数学は、ベクトルと行列と複素数を 1 つの理論にまとめます。

図解2 本の直線と連立方程式の解

1 点で交わる

  • x + y = 3 と x − y = 1
  • 解はただ 1 組(x = 2、y = 1)

平行

  • x + y = 3 と x + y = 5
  • 解はない

重なる

  • x + y = 3 と 2x + 2y = 6
  • 解は無数にある
展示台に開いて置かれた和とじの本。縦書きの文字と、円や四角の小さな図が並んでいる
関孝和が生涯でただ 1 つ出版した本『発微算法』(1674 年)の複製。国立科学博物館(東京)での展示です。写真: Momotarou2012(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

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整数の性質 → 代数学: 100 日後は何曜日?

数学 A の「数学と人間の活動」では、約数と倍数、ユークリッドの互除法など、整数の性質を学びます。扱う内容は学校によって異なります。整数を余りで分ける考え方は、カレンダーにも使えます。今日が月曜日なら、100 日後は何曜日でしょうか。

曜日は 7 日ごとにくり返すので、100 を 7 で割った余りだけを見れば足ります。100 = 7 × 14 + 2 なので、答えは月曜日の 2 日後の水曜日です。1,000 日後なら余りは 6 で、日曜日になります。大きな数でも、余りだけで計算できるのがポイントです。

大学の代数学では、「7 で割った余り」だけでできた世界で、足し算やかけ算をします。こうした計算のルールを取り出して一般にしたものが、群・環・体です。参照基準は、ガロアの名前がついた有限体の理論を例に挙げています。この理論は二世紀以上たって、デジタル機器の誤りを直す符号理論や暗号理論に使われるようになりました。

素数と暗号、ルービックキューブと群の話は、このサイトの「代数学」のページで詳しく紹介しています。

余りに注目する考え方は、大学の代数学の入口です。

クイズ高校と大学をつなぐクイズ

答えを選ぶと、正解と解説が表示されます。

  1. Q1今日が月曜日なら、100 日後は何曜日?

  2. Q2未知数が 3 つの連立一次方程式。解がちょうど 2 組になることはある?

  3. Q3年利 100% の利息を毎日付けると、1 年後の預金はおよそ何倍?

0 / 3 問に回答
曜日の名前と目盛りが刻まれた、円い真ちゅうの板
16 世紀ごろのドイツで作られたとされる真ちゅうの万年暦(メトロポリタン美術館)。曜日の名前が刻まれ、年が変わっても使えるように作られています。写真: The Metropolitan Museum of Art(CC0・Wikimedia Commons)

05

苦手でも大丈夫: どこから学び直すか

参照基準は、数学では基礎が分からないと、その上に築かれる考え方も分からないと述べています。そのため、具体例を作り、例題を解きながら積み重ねることが必要だとしています。つまずいた単元まで戻るのが、いちばんの近道です。

数学科を目指すなら、まず数学 I の「集合と命題」で、「ならば」や対偶の使い方を確かめてください。次に数学 B の数列と数学的帰納法、数学 III の極限、数学 C のベクトルと複素数平面へ進みます。大学 1 年の授業は、これらの単元とつながるところから始まります。

大学の教科書は、高校の教科書より説明が短く、1 行ずつ確かめながら読み進めます。分からないときは、具体的な数を入れて確かめたり、図をかいたりすると、意味が見えてきます。

入試で課される数学の範囲は、大学や入試の方式によって異なります。理工系の学部の個別試験では、数学 III を出題範囲に含める大学が多くあります。このサイトの高校の「数学」のページもあわせて読むと、高校の単元の全体像がつかめます。

つまずいた単元まで戻れば、大学の数学への道はつながります。

図解学び直しのおすすめの順番

  1. 1数学 I集合と命題: 「ならば」と対偶
  2. 2数学 A整数の性質、図形の証明
  3. 3数学 B・III数列と数学的帰納法、極限
  4. 4数学 Cベクトルと複素数平面

高校生のうちに試せること

  • 電卓で e に近づく

    スマートフォンの電卓で、(1 + 1/n) の n 乗を n = 10、100、1000 と計算しましょう。2.59…、2.70…、2.716… と、少しずつ e = 2.71828… に近づく様子を確かめられます。

  • カレンダーで余りの計算を確かめる

    今日から 100 日後と 1,000 日後の曜日を、7 で割った余りで予想しましょう。スマートフォンのカレンダーで確かめると、計算どおりになります。365 を 7 で割った余りから、来年の誕生日の曜日も予想できます(2 月 29 日をまたぐときは 1 日多くずれます)。

  • 複素数に i をかけて回す

    無料のグラフ計算機 GeoGebra で、点 (3, 2) と点 (−2, 3) をかきましょう。複素数 3 + 2i に i をかけると −2 + 3i になります。原点と結ぶと、ちょうど 90 度回っていることが分かります。

    GeoGebra 計算機
  • 大学 1 年の授業をのぞく

    志望する大学の数学科のカリキュラムやシラバスを開き、1 年の「微分積分学」「線形代数学」で何を学ぶか読みましょう。千葉大学のように、科目のつながりを図で公開している大学もあります。

    千葉大学 カリキュラム・ツリー

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よくある質問

大学では、高校の内容をもう一度習うのですか?

多くの大学では、1 年の微分積分学で極限や微分を、線形代数学でベクトルや連立方程式を扱います。ただし高校の復習ではなく、定義から証明し直す形で進むので、同じ内容でも見え方が変わります。

高校の数学が得意なら、大学の数学も得意になりますか?

大学の数学では、計算の速さより、定義を正確に読み、なぜ成り立つかを説明する力が求められます。参照基準も、講義に出るだけで理解できることは少なく、予習・復習と演習が欠かせないとしています。高校での得意・不得意より、じっくり考え続けられるかが大切です。

数学 III を学んでいなくても、数学科に進めますか?

入試で数学 III を課すかどうかは、大学や入試の方式によって異なります。理工系の学部の個別試験では、数学 III を出題範囲に含める大学が多くあります。入学後は 1 年の微分積分学で極限から学び直すので、数学 III の内容を一通り理解しておくと授業に入りやすくなります。