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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 3

エネルギー・インフラ

発電所のタービン、ビルの空調、エレベーターなど、暮らしを支える機械を設計し、毎日止まらないように点検・修理する仕事です。ふだんは目に入りにくい場所で、社会を動かし続けています。

発電所の建屋で巨大なタービンの羽根を点検する技術者たちと、街の明かり、ビルのエレベーターの機械室

ひとことで言うと

音のずれを聞き分けるピアノの調律師

ピアノの調律師は、音のわずかなずれを聞き分け、弾く人が気づく前に整えます。保守・保全エンジニアも同じで、機械の揺れや温度、音のわずかな変化から、壊れる前の兆しを見つけて手を打ちます。

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どんな仕事?: 社会を止めない機械

スイッチを入れれば明かりがつき、ボタンを押せばエレベーターが来る。こうした毎日の当たり前を支えているのが、発電所やビルの機械です。プラントエンジニアは、発電所や工場の大きな設備を計画・設計し、建設をまとめます。保守・保全エンジニアは、設備を点検し、修理や部品の交換をします。

日本の電気の大部分は、発電機を回してつくられています。2024 年度の発電量のうち、太陽光は約 1 割(981 億 kWh)でした。残りの約 9 割は、火力・原子力・水力・風力などで発電機を回してつくられています。蒸気やガス、水や風の力で羽根車(タービンや風車)を回すのは、機械工学の得意分野です。

ビルでは、空調やポンプ、エレベーターが休みなく動いています。法律にもとづく定期検査の結果が報告されたエレベーターは、2021 年度で約 74 万台にのぼります(国土交通省の集計)。

ふだん意識しない機械が休まず動くことで、暮らしが成り立っています。

図解暮らしを支える機械

エネルギー・インフラ
  • 火力発電蒸気やガスでタービンを回す
  • 水力発電水の流れで水車を回す
  • 風力発電風で大きな羽根を回す
  • 地熱発電地下の蒸気でタービンを回す
  • 空調ビル全体の温度と空気を保つ
  • エレベーター人を安全に上下に運ぶ

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熱と流れの力学が生きる: タービンで電気をつくる

火力発電所では、燃料を燃やした熱で高温・高圧の蒸気をつくり、その勢いで蒸気タービンを回します。タービンにつながった発電機は、電気の周波数に合わせて、一定の速さで休まず回り続けます。

回る部品は、わずかな重さの偏りでも大きく揺れます。羽根の重さをそろえて揺れを抑えるのは、機械力学の仕事です。高温の中で羽根が伸びたり割れたりしないかを確かめるのは、材料力学の仕事です。

燃料の熱をどれだけ電気にできるかは、熱力学で考えます。ガスタービンを回したあとの熱いガスで蒸気をつくり、蒸気タービンも回すのがコンバインドサイクル発電です。1,500 ℃級のガスタービンを使う天然ガスの火力発電では、燃料の熱の約 54.5% を電気にできる計算です。石炭火力(超々臨界圧)の約 43.5% を上回ります。

熱・流れ・揺れ・強さの 4 つの力学が、1 台のタービンに集まっています。

図解コンバインドサイクル発電のしくみ

  1. 1燃料を燃やす高温・高圧のガスをつくる
  2. 2ガスタービンガスの勢いで羽根を回す
  3. 3排熱で蒸気まだ熱いガスで水を蒸気にする
  4. 4蒸気タービン蒸気でもう一度羽根を回す
  5. 5発電機回転を電気に変える
屋外に展示された、たくさんの羽根が円盤状に並んだ蒸気タービンの回転部分(ロータ)
蒸気タービンのロータ(ドイツの発電所で使われたものの屋外展示)。何段も並んだ羽根に蒸気を当てて回し、軸につながった発電機で電気をつくります。写真: Siarhei Besarab(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

暮らしを支えてきた機械の歩み

国産第 1 号の陸用の蒸気タービンは、1908 年に長崎でつくられました。1 分間に 2,400 回転し、羽根(翼)は全部で 84 段ありました。1920 年まで工場の発電に使われ、機械遺産(第 4 号)として保存されています。

1966 年には、岩手県の松川地熱発電所が、商用では国内初の地熱発電所として運転を始めました。地下から出る蒸気に含まれる硫黄分は、タービンの羽根を傷めます。羽根に合う鋼を選ぶなどの工夫を重ね、出力は 9,500 kW から 1993 年には 23,500 kW まで増えました。

エレベーターでは、1915 年に東松孝時が押しボタン式の全自動エレベーターを開発したのが、国産化の始まりとされます。ロープが切れる事故を防ぐ非常止め装置など、安全のためのしくみの研究も重ねられてきました。

100 年以上前のタービンから、いまの発電所まで、機械の工夫が積み重なっています。

クイズ発電所の機械のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q11,500 ℃級のガスタービンを使うコンバインドサイクル発電。燃料の熱のうち、電気にできるのは?

  2. Q21908 年に長崎でつくられた、国産第 1 号の陸用蒸気タービン。羽根は全部で何段?

  3. Q32024 年度、日本の発電量のうち太陽光の割合は?

0 / 3 問に回答
山あいの緑の中に立つ、網目状の大きな冷却塔と、湯気の上がる太い配管
岩手県八幡平市の松川地熱発電所(機械遺産 第 77 号)。1966 年に、商用では国内初の地熱発電所として運転を始めました。写真: Si-take.(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

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発電所の保守エンジニアの 1 日(例)

ここでは、火力発電所で設備の保守を受け持つエンジニアの 1 日の例を紹介します。発電所は昼も夜も動き続けるため、運転を受け持つ人たちが交代で設備を見守っています。保守のエンジニアは、その人たちと協力して設備の調子を整えます。

朝は、夜のあいだの運転の記録を確かめます。軸の揺れや軸受の温度は、壊れる前の大事なサインです。いつもと違う値があれば現場に行き、音やにおいも含めて確かめます。

決まった時期の定期点検では、タービンを分解して羽根の傷やすり減りを調べ、部品を交換します。決められた期間で点検を終え、無事に発電を再開できたときの達成感は大きなものです。

小さな変化に気づく目が、大きな故障を防ぎます。

図解発電所の保守エンジニアの 1 日(例)

  1. 8:30引き継ぎ夜の運転の記録を確かめる
  2. 9:00現場の巡回揺れ・温度・音を確かめる
  3. 10:30データの分析軸の揺れの変化をグラフで見る
  4. 12:00昼休み
  5. 13:00点検の計画分解の手順と交換部品を決める
  6. 15:00打ち合わせ作業の安全と日程を確認する
  7. 17:00記録気になる点を次の担当へ伝える

05

向いている人と入り方・その先

大きな機械が好きな人、決められた手順をきちんと守れる人、人の役に立つ実感を大切にしたい人に向いています。発電所やビルの設備は何十年も使われるため、長い目で機械と付き合う仕事です。

電力会社やガス会社、発電設備やエレベーターのメーカー、ビルの設備を管理する会社などで働きます。機械工学科で学び、大学院の修士課程を修了して入る人も多くいます。

仕事に必要な資格もあります。火力発電所では、ボイラー・タービン主任技術者を選ぶことが電気事業法で決められています。ボイラーやタービンの保安を監督する役目です。この資格は試験ではなく、学歴に応じた実務の経験を積んだうえで申請して取ります。技術士(機械部門)などの資格を目指す人もいます。

現場で積んだ経験が、資格と責任ある仕事につながります。

図解保守・プラントの仕事への道(例)

  1. 1学部・修士熱・流れ・材料の力学を学ぶ
  2. 2入社現場で設備と運転を覚える
  3. 3資格を取る主任技術者・技術士など
  4. 4設備の責任者発電所やビルの保安をまとめる

高校生のうちに試せること

  • 家の電気の使用量を調べる

    電気の検針票やアプリで、家の 1 か月の使用量(kWh)を調べましょう。2024 年度の日本の発電量 9,911 億 kWh と比べたり、季節による違いを見たりすると、発電所がつくる電気の大きさが実感できます。

  • エレベーターの安全のしくみを観察する

    エレベーターに乗ったら、かごの中の定員や積載量の表示、非常用の連絡ボタンを探してみましょう。ドアに人や物が挟まりそうになると開き直すしくみなど、安全のための工夫がたくさんあります。

  • 発電所を見学した大学生の記事を読む

    資源エネルギー庁の記事では、大学生が火力発電所を見学した様子を読めます。大学で機械工学を学び、ガスタービンを使う新しい発電設備の建設に関わった若い技術者のインタビューもあります。

    姉崎火力発電所見学&ワークショップ(資源エネルギー庁)

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よくある質問

電気の仕事なら、電気電子工学科のほうがよいのでは?

発電所には、タービンやボイラー、ポンプなどの機械と、発電機や送電の電気設備の両方があります。機械の部分は機械工学科の出身者、電気の部分は電気電子工学科の出身者が主に受け持ち、一緒に設備を守っています。

再生可能エネルギーが増えると、機械工学の出番は減りますか?

風力発電の大きな羽根、水力発電の水車、地熱発電のタービンなど、再生可能エネルギーにも機械はたくさん使われています。流れや熱を扱う機械工学の知識は、これからも欠かせません。