図 1 医学の広がり医学の広がり 3
診断と治療(臨床医学)
患者の話を聞き、からだを診察し、検査で確かめて病気を見きわめ、治療する。心臓や肺、脳、子どもなど、臓器や年代ごとに専門の知識と技術を学ぶ、医学の中心の分野です。

ひとことで言うと
探偵のように、手がかりを集めて答えを出す
探偵は、話を聞き、現場を調べ、証拠を集めて犯人を突き止めます。医師も、患者の話や診察、検査の結果という手がかりを組み合わせて、病気を見きわめます。その考え方と技術を学ぶのが臨床医学です。

01
診断: 話を聞き、からだを診て、確かめる
診断は、患者の話を聞く医療面接から始まります。いつから、どこが、どのようにつらいのかを聞き取り、次に、目で見る・手でさわる・軽くたたく・音を聞くといった身体診察をします。そのうえで、血液や画像の検査で確かめます。
医師は、よくある病気から、まれでも見逃してはいけない病気まで、いくつもの候補を頭に浮かべます。話や診察で分かったことを手がかりに、候補を一つずつ絞りこんでいきます。X 線や CT、MRI、超音波(エコー)など、からだの中を画像で見る検査も、絞りこみに欠かせません。
音を聞く診察を変えたのが、フランスの医師ラエンネックです。1816 年、胸に直接耳を当てる方法では聞き取りにくい患者を診たとき、子どもの遊びにヒントを得て、紙を巻いた筒を胸に当てて音を聞きました。のちに木の筒にして聴診器と名づけ、1819 年に『間接聴診法』を出しています。
診断は、いくつもの手がかりを組み合わせて答えを出す作業です。
図解診断までの流れ
- 1医療面接いつから、どこが、どうつらいかを聞く
- 2身体診察見る・さわる・たたく・聞く
- 3検査血液や尿、画像で確かめる
- 4診断と治療病気を見きわめ、治療の方針を決める


02
臓器ごとに学ぶ: 心臓から腎臓まで
臨床医学は、多くの大学で臓器や器官ごとに分けて学びます。循環器(心臓と血管)、呼吸器(肺)、消化器(胃・腸・肝臓)、腎臓など、それぞれの病気の原因・症状・検査・治療を、基礎医学の知識と結びつけて理解します。
同じ臓器でも、薬などで治す内科と、手術で治す外科があります。例えば心臓なら、循環器内科と心臓血管外科です。細い管(カテーテル)や内視鏡を使い、からだを大きく切らずに行う治療もあります。
治療には、薬と手術のほかに、放射線を当てる治療や、からだの動きを取り戻すリハビリテーションもあります。1 人の患者を、いくつもの科の医師や、看護師・薬剤師などの職種がいっしょに治療することも多くあります。
厚生労働省の統計では、2024 年末の医師の数は 34 万 7,772 人でした。病院や診療所で働く医師が主に担当する科で最も多いのは内科で、6 万 2,161 人です。次いで整形外科、小児科と続きます。
臓器ごとの知識を、からだ全体のつながりの中で使うのが臨床医学です。
図解からだの器官と、主な診療科
- 心臓・血管循環器内科・心臓血管外科
- 肺呼吸器内科・呼吸器外科
- 胃・腸・肝臓消化器内科・消化器外科
- 腎臓・尿の通り道腎臓内科・泌尿器科
- 脳・神経脳神経内科・脳神経外科

03
脳神経・精神: 名前の似た 3 つの科
脳や神経、こころの病気には、名前の似た診療科がいくつもあります。日本神経学会の説明では、脳神経内科は、脳や脊髄、神経、筋肉の病気で体が不自由になる病気を診る科です。手術が必要な病気は、脳神経外科が外科の立場から診療します。
精神科は、主に気分の変化や精神的な問題を扱う科です。うつ病や統合失調症などが代表的な病気です。認知症やてんかんのように、精神科と脳神経内科のどちらでも診療する病気もあります。
2024 年の統計では、精神科を主な診療科とする医師は 1 万 7,259 人、脳神経外科は 7,574 人、脳神経内科は 5,976 人でした。名前は似ていても、扱う病気と治し方がちがいます。
名前が似ていても、扱う病気と治療の方法がちがいます。
図解名前の似た 3 つの科
脳神経内科
- 脳・脊髄・神経・筋肉の病気
- 体が不自由になる病気を診る
- 手術が必要なら脳神経外科へ
脳神経外科
- 脳や神経の病気を外科の立場から
- 手術による治療を担う
精神科
- 気分の変化や精神的な問題
- うつ病・統合失調症など

04
小児・妊娠と分娩: 赤ちゃんの命を守る
小児科は、子どもの病気を診る科です。子どもは大人を小さくしただけではありません。成長の段階によって、からだのつくりや薬の効き方が変わるため、薬の量も体重や年齢に合わせて決めます。
産婦人科は、妊娠と分娩、女性の病気を診る科です。日本では 1950 年、生まれた赤ちゃん 1,000 人のうち 60.1 人が 1 歳になる前に亡くなっていました。2025 年は 1.9 人(概数)で、30 分の 1 以下に減っています。
妊娠や出産、子どもの健康の記録を 1 冊にまとめた母子手帳は、1948 年に日本で生まれました。いまはアフリカの少なくとも 18 か国でも使われています。多くの人の母子健康手帳には、生まれたときの体重や、受けた予防接種の記録が残っています。
日本の乳児の死亡は、75 年で 30 分の 1 以下になりました。
高校生のうちに試せること
紙の筒で、心臓の音を聞く
A4 の紙を固く巻いて筒にし、家族や友だちに許可をもらってから、胸の左側に当てて耳をすませてみましょう。「ドッ・クン」と 2 つの音が聞こえたら、ラエンネックと同じ体験です。
大学病院の診療科の一覧を見る
近くの大学病院のサイトで、診療科の一覧を開いてみましょう。本文の図と見比べて、心臓・肺・胃腸・腎臓・脳の病気を、それぞれどの科が診るのかを確かめてください。聞いたことのない科があれば、何を診る科なのかを調べてみましょう。
自分の母子健康手帳を見せてもらう
家の人に頼んで、自分の母子健康手帳を見せてもらいましょう。生まれたときの体重や身長、受けた予防接種、乳幼児健診の記録から、小児科や産婦人科の医療がどう関わってきたかが分かります。
「診断と治療(臨床医学)」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 126 件から探せます。

病態病理学
千葉大学(千葉県)
医学研究院 消化器治療学研究講座・病態病理学

血液・腫瘍・呼吸器内科学分野
岡山大学(岡山県)
医歯薬学総合研究科 医学系講座・腫瘍内科学・前田 嘉信 教授
造血器腫瘍や肺がんの病態解明と新規治療開発、呼吸器アレルギーや造血幹細胞移植の研究を行う。

呼吸器外科学
新潟大学(新潟県)
医学部 医学科 医学系列(臨床系)・小池 輝元 講師

小児科学
新潟大学(新潟県)
医学部 医学科 医学系列(臨床系)・小児科学・齋藤 昭彦 教授

循環器内科学
熊本大学(熊本県)
大学院生命科学研究部 総合医薬科学部門・循環器内科学・辻田 賢一 教授
日本人に多い循環器の病態を明らかにし、心血管病の新しい治療法を開発する。

脳神経外科学分野
岡山大学(岡山県)
医歯薬学総合研究科 医学系講座・脳神経外科学・田中 將太 教授
脳腫瘍やくも膜下出血、脳虚血、パーキンソン病などの病態解明と治療を基礎研究から探る。
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よくある質問
手先が器用でないと、外科医になれませんか?
手術の技術は、練習と経験を重ねて身につけるものです。外科医には、手術のうまさだけでなく、診断の力や、患者さんやチームと話す力も欠かせません。向いているかどうかは、大学で実際に経験してから考えても遅くありません。
内科と外科のほかに、どんな科がありますか?
厚生労働省の統計では、医師の数が 40 の診療科に分けて集計されています。目の病気を診る眼科、皮膚の病気を診る皮膚科、手術の麻酔を担う麻酔科、画像から診断する放射線科など、さまざまです。