図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 1
病院・診療所で診療する
患者の話を聞いて診察し、検査の結果と合わせて病気を見きわめ、治療につなげる仕事です。日本の医師の 95% が、病院か診療所で診療をしています。

ひとことで言うと
山のガイドのように、道を一緒に選ぶ
山岳ガイドは、登る人の体力や天気を見きわめ、いちばん安全な道を一緒に選びます。医師も、検査の結果だけでなく、患者の暮らしや希望を聞いて、治療の道を一緒に決めます。そして、歩き出したあとも様子を見ながら、必要なら道を変えていきます。

01
外来の仕事: 話を聞くことが診断の決め手になる
外来では、初めて来た患者の話を聞くことから診療が始まります。医師は話を聞きながら、考えられる病気をいくつも思い浮かべ、どの診察や検査で見分けるかを考えています。
話を聞くことの大切さを示した研究があります。1975 年、イギリスの医師たちが、内科の外来に新しく来た 80 人を調べました。すると、紹介状と話を聞いた段階で 66 人(約 8 割)の診断がついていました。診察が決め手になったのは 7 人、検査が決め手になったのも 7 人でした。
診断がついたら、治療の方法をいくつか示し、それぞれの良い点と負担を説明します。仕事や家族の事情も聞いたうえで、患者と一緒に治療を選びます。
外来の仕事は、治療が始まってからも続きます。薬の効き目や体調の変化を次の受診で確かめ、計画を見直します。何年も同じ患者を受け持ち、成長や暮らしの変化を見守る医師もいます。
検査の前に、話を聞く力が診断を大きく左右します。
図解診断の決め手になったもの(1975 年の研究)
話を聞く(医療面接)
- 80 人中 66 人で診断がつく
- いつから・どこが・どんなときに
- 紹介状の内容も合わせて考える
診察
- 決め手になったのは 7 人
- 見る・さわる・音を聞く
検査
- 決め手になったのは 7 人
- 血液や画像で確かめる

02
どこで働く?: 病院・大学病院・診療所
2024 年末の時点で、病院や診療所で働く医師は 33 万 1,092 人です。働く場所によって、仕事の中身も、働く人の顔ぶれも変わります。
病院は、入院や手術、救急に対応する場所です。多くの診療科の医師と看護師などがチームを組み、交代しながら 24 時間診療を続けます。大学の病院(大学病院)は、難しい病気の診療に加えて、研究と医学生の教育も受け持ちます。
診療所(クリニック)は、地域の人を外来で診る場所です。診療所で働く医師 11 万 1,699 人のうち、約 6 割にあたる 7 万 46 人は、診療所を開いた本人などでした。病院で経験を積んでから、自分の診療所を開く医師も多くいます。
医師の平均年齢は、大学病院で 39.7 歳、それ以外の病院で 47.9 歳、診療所で 60.1 歳です。若いうちは病院で幅広く経験を積み、その後に働く場所を選んでいく流れが、数字からも読み取れます。
同じ医師でも、働く場所で仕事の姿は大きく変わります。
図解どこで診療する?(2024 年末)
病院
- 入院・手術・救急に対応
- 16 万 1,113 人が働く
- 平均年齢 47.9 歳
大学病院
- 難しい病気・研究・教育
- 5 万 8,280 人が働く
- 平均年齢 39.7 歳
診療所
- 地域の人を外来で診る
- 11 万 1,699 人が働く
- 平均年齢 60.1 歳


03
働き方の課題と、変わりつつある取り組み
病院で働く医師の長時間労働は、長く課題になってきました。2016 年の国の調査では、病院の常勤の医師の 39.2% が週 60 時間以上働いていました。これは、時間外・休日の労働が年 960 時間を超える働き方にあたります。
そこで 2024 年 4 月から、医師の時間外・休日労働にも上限ができました。原則は年 960 時間までです。地域の医療を支える病院や、研修中の医師などは、特例で年 1,860 時間までとされました。長く働く医師には、面接で健康状態を確かめることも義務づけられています。
2025 年の調査では、週 60 時間以上働く病院の常勤の医師は 15.0% まで減りました。ただ、外科(25.1%)、救急科(23.7%)、産婦人科(22.8%)ではまだ高く、課題は残っています。
病院では、看護師や薬剤師などと仕事を分け合う取り組み(タスク・シフト/シェア)が進んでいます。1 人の患者を複数の医師で受け持つしくみも取り入れられています。特例の一部(B・連携 B 水準)は、2035 年度末までになくすことが目標です。
課題はまだありますが、医師の働き方は数字で見ても変わってきています。
図解医師の働き方の変化
- 12016 年週 60 時間以上が 39.2%
- 22024 年 4 月時間外労働に上限ができる
- 32025 年週 60 時間以上が 15.0% に
- 42035 年度末特例の一部をなくす目標

04
病院の内科医の 1 日(例)
ここでは、地域の中心となる病院で働く内科医の 1 日の例を紹介します。曜日によって、外来を担当する日と、入院している患者を中心に診る日があります。
入院の患者は、医師・看護師・薬剤師などのチームで受け持ちます。朝の打ち合わせで情報を共有し、夕方には夜の担当の医師に患者の様子を引き継ぎます。交代で受け持つことで、一人の医師に負担が集中しないようにしています。
夜間や休日の当直、急な呼び出しの回数は、病院や診療科によって大きく異なります。
チームで患者を受け持ち、交代しながら診療を続けます。
図解病院の内科医の 1 日(例)
- 8:00朝の打ち合わせ入院患者の様子をチームで共有
- 9:00外来患者の話を聞き、診察と検査をする
- 12:30昼休み
- 13:30病棟をまわる入院患者を診て、家族に説明する
- 15:30検査超音波などの検査を行う
- 17:00書類と引き継ぎカルテを書き、夜の担当へ伝える

05
なるには: 専門を選び、学び続ける
医学部(6 年)を卒業して医師国家試験に合格すると、医師免許を受けられます。そのあと、2 年以上の臨床研修でいろいろな診療科を経験します。
研修を終えると、多くの医師は専門とする分野を選び、3〜5 年の専門研修に進みます。2026 年度の専門研修に採用された医師(専攻医)は 9,998 人でした(3 月 2 日時点)。内科が 3,129 人で最も多く、外科 996 人、整形外科 773 人と続きます。
研修を終えて試験に合格すると専門医になり、その先で消化器内科や循環器内科などの、より細かい専門をめざせます。専門医は原則 5 年ごとに更新があり、医師は新しい治療法や薬について学び続けることが求められます。
人の話をじっくり聞ける人、分からないことを調べ続けられる人に向いています。チームの仲間と協力するのが好きな人にも合う仕事です。
高校生のうちに試せること
病院の働き方の取り組みを見る
厚生労働省の「いきサポ」では、病院が医師や看護師の働き方をどう変えたのか、事例や動画で紹介しています。仕事の分担や交代のしくみに注目して見てみましょう。
いきいき働く医療機関サポート Web(厚生労働省)身近な医師に仕事の話を聞く
かかりつけの医師や、医療の仕事をしている知り合いに、1 日の流れや大変なこと、うれしかったことを聞いてみましょう。病院と診療所で、答えがどう違うかを比べると発見があります。
病院のボランティアや職業体験に参加する
病院の中には、夏休みなどに高校生のボランティアや職業体験を受け入れているところがあります。近くの病院のサイトや、学校の進路の先生に聞いてみましょう。
「病院・診療所で診療する」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 125 件から探せます。
腎・膠原病内科学(腎研究センター)
新潟大学(新潟県)
医学部 医学科 医学系列(臨床系)・腎・膠原病内科学・山本 卓 教授
先端応用外科学
千葉大学(千葉県)
医学研究院 消化器治療学研究講座・先端応用外科学

心臓血管外科学分野
岡山大学(岡山県)
医歯薬学総合研究科 医学系講座・心臓血管外科学・笠原 真悟 教授
先天性心疾患の病態解析や人工血管・人工弁の開発、心臓移植などを研究する。

呼吸器外科学
新潟大学(新潟県)
医学部 医学科 医学系列(臨床系)・小池 輝元 講師

呼吸器・乳腺内分泌外科学分野
岡山大学(岡山県)
医歯薬学総合研究科 医学系講座・外科学・豊岡 伸一 教授
肺がん・乳がんの病態をゲノムやiPS細胞で解明し、肺移植の拒絶反応や保存の研究も行う。

消化器外科学分野
岡山大学(岡山県)
医歯薬学総合研究科 医学系講座・外科学
がんのプレシジョン医療やがん微小環境の研究、腫瘍融解アデノウイルスによる治療法の開発を行う。
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
医師になったら、すぐに好きな診療科で働けますか?
医師免許を受けたあと、2 年以上の臨床研修でさまざまな診療科を経験します。そのあとで専門の分野を選び、専門研修に進むのが一般的です。研修でいろいろな科を経験することは、進む科を考える材料にもなります。
医師は長時間労働だと聞きますが、変わってきていますか?
2024 年 4 月から、医師にも時間外労働の上限ができました。週 60 時間以上働く病院の常勤の医師は、2016 年の 39.2% から、2025 年には 15.0% に減っています。一方で、外科や救急科などでは高い割合が続いていて、取り組みが続いています。
勤務医と開業医は、どう違いますか?
勤務医は病院や診療所に勤めて働く医師、開業医は自分で診療所を開いて院長として働く医師です。2024 年末、診療所で働く医師の約 6 割(7 万 46 人)は、診療所を開いた本人などでした。
出典
- 厚生労働省「令和 6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」(2025 年 12 月 23 日)
- Hampton JR ほか「Relative contributions of history-taking, physical examination, and laboratory investigation to diagnosis and management of medical outpatients」(BMJ、1975 年)
- 厚生労働省「医師の働き方改革の現状について」(令和 8 年度 第 2 回 医師の働き方改革の推進等に関する検討会 参考資料、2026 年 9 月 10 日)
- 日本専門医機構「一般の皆様へ」
- 日本専門医機構「2026 年度 採用状況」(2026 年 3 月 2 日現在)