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図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4

薬や医療機器をつくる

製薬会社や医療機器の会社、国の審査の機関で、新しい薬や機器が安全に患者へ届くよう支える仕事です。治験の計画や副作用の見きわめに、医学の知識と診療の経験が生きます。

薬のカプセルや錠剤の大きな模型、医療機器の模型、色の帯だけのグラフを並べた大きな机を囲み、白衣とスーツの大学生たちが話し合う様子

ひとことで言うと

地区予選から全国大会まで勝ち進むチーム

新しい薬の候補は、地区予選から全国大会まで勝ち進むチームのように、何段階もの試験を通ってはじめて患者に届きます。製薬会社の医師は、その試合のルール(治験の計画)を考え、選手の体調(安全性)を見守る役を担います。

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どんな仕事?: 会社と国の審査の機関で働く医師

薬の開発や安全な使い方を専門にする医学の分野を、製薬医学といいます。日本製薬医学会には、臨床開発・安全性・メディカルアフェアーズの部会があります。どれも、製薬会社などで働く医師の主な仕事です。

臨床開発の医師は、治験の計画を立て、結果を医学の目で評価します。安全性の担当は、治験中や発売後に報告される体調の変化を集め、薬との関係を見きわめます。メディカルアフェアーズは、薬の正しい使い方の根拠を集め、病院の医師と科学的な情報をやり取りします。

国の側にも医師の仕事があります。新しい薬や医療機器の審査は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行います。ここでは医師が薬学・統計・毒性などの専門家とチームを組み、治験の結果から効き目と安全性を検討しています。

医師は、薬や機器の効き目と安全を医学の目で見きわめる役を担います。

図解薬と医療機器に関わる医師の仕事

医学の知識と診療の経験
  • 臨床開発治験を計画し、結果を評価する
  • 安全性副作用の情報を集めて見きわめる
  • メディカルアフェアーズ薬の使い方の根拠を集めて伝える
  • 国の審査(PMDA)効き目と安全性をチームで審査
  • 医療機器の開発現場の困りごとを技術者に伝える
ちょうちんが並ぶ、朱色の柱の小さな神社の拝殿
大阪・道修町の少彦名神社。江戸時代に薬を扱う商人が集まったこの町で、1780 年に薬の神をまつったのが始まりとされます。いまも薬に関わる会社が祭りを支えています。写真: WolfgangMichel(CC0・Wikimedia Commons)

02

薬が患者に届くまで: 2 万 3,000 分の 1 の道

新しい薬は、ふつう 10 年以上かけて生まれます。まず、病気に関わる分子を探し、数十万から数百万の化合物の中から候補を選びます。細胞や動物で効き目と安全性を調べたあと、人での試験(治験)に進みます。

治験は 3 つの段階で進みます。第 1 相では少数の健康な人で安全性を、第 2 相では少数の患者で効き目と使う量を確かめます。第 3 相では多数の患者で、いまある薬などと比べて効き目と安全性を確かめます。参加する人には内容を十分に説明し、文書で同意を得てから始めます。

結果をまとめて国に申請すると、PMDA の審査を経て厚生労働大臣が承認します。日本製薬工業協会の集計では、国内の会社が 2018〜2022 年度に合成した化合物は約 44 万 5,000 でした。そのうち、承認まで進んだのは 19 です。成功する確率は約 2 万 3,000 分の 1 です。

薬は発売されたあとも見守られます。治験よりずっと多くの人が使うため、まれな副作用が見つかることがあるからです。新薬は承認からふつう 8 年後に、集めた情報をもとに効き目と安全性を確かめ直す「再審査」を受けます。

何十万もの候補から、試験と審査を通ったものだけが薬になります。

図解薬が患者に届くまで

  1. 1基礎研究病気に関わる分子と候補を探す
  2. 2非臨床試験細胞や動物で効き目と安全性を調べる
  3. 3治験第 1 相〜第 3 相で人での効果を確かめる
  4. 4審査・承認PMDA の審査を経て国が承認する
  5. 5発売後副作用の情報を集め、安全を見守る
木の取っ手がついた鉄製の古い機械と、その横の皿に盛られた白い錠剤
チェコのククス病院にある、薬局の歴史の展示から。昔の薬局で錠剤をつくった機械です。いまの薬は、品質を守るための基準(GMP)に合った工場でつくられています。写真: Jiří Sedláček(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

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医師だからできること: 治験の計画と副作用の見きわめ

治験の計画では、どんな患者に参加してもらうか、何と比べるか、効き目を何で測るかを決めます。たとえば「検査の数値」で測るのか、「病気の悪化を防げたか」で測るのかで、試験の大きさも期間も変わります。診療の現場を知る医師の判断が欠かせません。

治験中に体調の変化が報告されたとき、それが薬によるものか、もともとの病気によるものかを見きわめるのも医師の仕事です。参加する人の安全を守りながら、薬の本当の姿を明らかにします。

医療機器の開発にも医師が加わります。1952 年、東京大学の病院の外科医と光学機器メーカーが協力し、世界で初めて実用的な胃カメラをつくりました。翌年には、胃の中のカラー写真の撮影にも世界で初めて成功しています。現場で困っていることを技術者に伝え、試作品を確かめるのが医師の役割です。

効き目と安全の両方を、患者の立場で考えられるのが医師の強みです。

図解治験で体調の変化が報告されたら(例)

入力治験に参加した人から「頭が痛い」という報告が届く
  1. 1いつから、どのくらい続いたかを詳しく確かめる
  2. 2ほかの参加者に同じような報告がないかを調べる
  3. 3同じ種類の薬で知られている副作用を確かめる
  4. 4薬との関係を判断し、必要なら計画を見直す
結果参加する人の安全を守り、副作用の情報を正しく記録する

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製薬会社で治験を担当する医師の 1 日(例)

ここでは、製薬会社で治験を担当する医師の 1 日の例を紹介します。病院で診療を経験してから、製薬会社に移る医師がいます。

治験は、日本と海外で同時に進める国際共同治験として行われることもあります。そのため、海外の同僚と英語で会議をしたり、英語の資料を読んだりする機会があります。

社内では、統計・薬事・安全性などの専門家とチームを組みます。医師は、患者を診てきた経験から「この結果は、診療の現場で意味があるか」を考える役を担います。

多くの専門家と組み、医学の判断で薬の開発を前に進めます。

図解製薬会社の医師の 1 日(例)

  1. 9:00安全性の確認治験中に届いた体調の変化の報告を読む
  2. 10:30計画の会議統計や薬事の担当と次の治験を設計
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00病院と打ち合わせ治験を行う医師と進み具合を確かめる
  5. 15:00海外との会議英語で結果の読み方を話し合う
  6. 16:30資料づくり国の審査に出す資料の医学の部分を書く

05

なるには: 診療の経験と、学び続ける力

企業で働く医師になるのに決まった道はありません。ただ、病院での診療の経験は、治験の計画や副作用の判断にそのまま生きます。英語で論文や資料を読む力と、統計の知識も欠かせません。

PMDA は、大学や病院から医師を受け入れる人事交流を行っています。審査の仕事を経験した医師が大学や病院に戻り、質の高い臨床試験を進めるリーダーになることを目指したしくみです。

海外で使われている薬が日本では使えない「ドラッグ・ロス」も課題です。2023 年 3 月時点で、国内で承認されていない薬 143 品目のうち 86 品目は、日本で開発が始まっていませんでした。こうした課題に取り組むのも、薬に関わる医師の仕事です。

一つの薬が、何十万、何百万の人に使われることもあります。一人の患者を診るのとは違う大きさで医療に関わりたい人、慎重に根拠を確かめるのが好きな人に向いています。

クイズ薬ができるまでのクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q12018〜2022 年度の集計で、合成された化合物が新薬として承認されたのは、およそ何分の 1?

  2. Q2治験の第 1 相では、主にどんな人に参加してもらう?

  3. Q32023 年 3 月時点で、国内で承認されていない薬のうち、日本で開発が始まっていないのは何品目?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 製薬協の「てきすとぶっく」を読む

    日本製薬工業協会の『てきすとぶっく 製薬産業』は、薬ができるまでの流れや治験のしくみを図で説明しています。薬の安全を守る制度も分かります。

    てきすとぶっく 製薬産業(日本製薬工業協会)
  • jRCT で治験の計画を見る

    厚生労働省の jRCT では、日本で行われている臨床研究や治験の計画が公開されています。気になる病気の名前で検索し、何と何を比べている試験なのかを読んでみましょう。

    jRCT 臨床研究等提出・公開システム(厚生労働省)
  • 家にある医療機器のしくみを調べる

    体温計や血圧計も医療機器です。家にある機器の説明書を読み、どんなしくみで測っているのか、正しく測るためにどんな工夫があるのかを調べてみましょう。

「薬や医療機器をつくる」に関連するコミュニティ

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よくある質問

製薬会社で働く医師は、患者を診察しますか?

企業での仕事の中心は、治験の計画や安全性の評価などで、ふだん患者を診察する機会は少なくなります。ただ、治験に参加する人の安全を守ることは、いちばん大切な仕事の一つです。

薬学部と医学部では、薬の仕事への関わり方が違いますか?

製薬会社では、薬学・理学・農学・統計など、さまざまな分野の人が一緒に働いています。医師は、患者を診てきた経験をもとに、治験の結果や副作用を医学の目で判断する役を主に受け持ちます。

英語は必要ですか?

日本と海外で同時に治験を進めることもあり、英語の論文や資料を読み、海外の同僚と話す機会があります。英語の力は大きな武器になります。