図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 2
2 年: 基本法則を学ぶ
電磁気学・解析力学・熱力学と、量子力学の入口を学び、物理の基本法則が出そろう 1 年です。学生実験では、電子の比電荷や光の干渉など、物理の歴史を動かした実験を自分の手で再現します。

ひとことで言うと
別々の友だちが、実は親せきだった
高校では、静電気、電流と磁場、光の波を別々の単元で学びました。2 年の電磁気学では、これらがマクスウェル方程式でつながり、光も電磁波の一種だと分かります。別々に知り合った友だちが、実は親せき同士だったと分かるような驚きです。

01
2 年の科目: 物理の基本法則が出そろう
2 年では、物理学の柱になる科目が一気に始まります。名古屋大学の物理学科では、2 年に解析力学・電磁気学 II・数理物理と、量子力学 I・統計物理学 I が並びます。東京理科大学の物理学科では、力学 2・電磁気学 1・2・熱力学・物理数学 2A・2B・量子力学 1 が 2 年の科目です。
解析力学は、ニュートンの運動方程式を、エネルギーをもとにしたラグランジュ方程式に書き直す分野です。東京理科大学の力学 2 では、動ける向きが限られた運動の解き方を学びます。さらに、2 年後期の量子力学や 3 年の統計力学への準備として、ハミルトンの形式にも進みます。
熱力学では、熱と仕事とエネルギーの関係を、第 0 法則から第 3 法則までの形で学びます。同じ大学の熱力学の授業は、身近な現象から見つけた法則が、ブラックホールのような天体にまで当てはまると紹介しています。
量子力学 1 では、電子の波を表すシュレーディンガー方程式を、1 次元の問題で解きます。物理数学 2A・2B では、複素積分やフーリエ変換、偏微分方程式など、こうした科目で使う数学をまとめて学びます。
2 年で出そろう基本法則が、3 年からの現代の物理の土台になります。
図解高校の物理と 2 年の物理
高校の物理
- 静電気・電流・磁場・光を別々に学ぶ
- 運動は力の矢印を描いて解く
- 熱は気体の分子の運動まで
大学 2 年
- マクスウェル方程式で 1 つにつなぐ
- エネルギーから運動を導く(解析力学)
- エントロピーで熱の向きを説明する

02
電磁気学: 式から光の速さが出てくる
電磁気学の到達点は、電場と磁場のふるまいをまとめたマクスウェル方程式です。現在の教科書では 4 本の式で書かれ、静電気、電流がつくる磁場、電磁誘導がすべてここから導かれます。東京理科大学の電磁気学 2 では、この方程式を、物質の中(誘電体や磁性体)へ広げます。
イギリスのマクスウェルは 1862 年ごろ、電場と磁場の波が伝わる速さを計算し、光の速さとほぼ同じになることに気づきました。そこから、光は電磁場の波だと考えたのです。1888 年には、ドイツのヘルツが、実験で電磁波をつくり出して確かめました。
下の図は、その計算を、現在の定数の値でなぞったものです。電気と磁気の実験で測る 2 つの定数から、秒速約 30 万 km という光の速さが出てきます。電気・磁気・光が 1 つの現象だと分かった瞬間を、電卓 1 つで追いかけられます。
スマートフォンの通信や電子レンジも、この電磁波の性質を使っています。2 年で学ぶ式は、身の回りの技術の土台そのものです。
式の中の定数から光の速さが出てくることが、光は電磁波だという証拠になりました。
図解電磁気の定数から光の速さを出す
- 1マクスウェル方程式から、電磁波の速さ c = 1/√(ε₀μ₀)
- 2ε₀ × μ₀ ≒ 1.11 × 10⁻¹⁷
- 3その平方根は約 3.34 × 10⁻⁹


03
学生実験: 歴史を動かした実験を再現する
2 年の学生実験では、物理学の歴史を動かした実験を自分の手で再現します。東京理科大学の物理学科の物理学実験 2 では、16 の候補から選ばれた題目に取り組みます。光の干渉・回折・偏光、電界・磁界中の電子の運動、プランク定数の測定、フランク・ヘルツの実験、ブラウン運動などです。
電子を磁場で曲げる実験では、薄い気体を入れたガラス球の中で、電子の通り道が光る円になって見えます。円の半径と磁場の強さから、電子の電気の量と質量の比(比電荷)が分かります。
この実験は 2 人 1 組で進めます。4 週間を 1 単位として、2 回実験をしたあと、ペアで発表の準備をし、10 分の発表と 5 分の質疑を行います。これを 1 年で 6 回くり返し、測った結果を人に伝える力も鍛えます。
図解実験 1 単位(4 週間)の流れ
- 11 週目: 実験指定された題目の実験を行う
- 22 週目: 実験もう 1 回、実験を行う
- 33 週目: 準備ペアで結果をまとめ、発表を準備する
- 44 週目: 発表10 分の発表と 5 分の質疑


04
2 つの実験で電子の重さを求める
電子 1 個が持つ電気の量(電気素量)は、1910 年にアメリカのミリカンが精密に求めました。2 枚の金属板の間に帯電させた油の粒を浮かべ、その動きを調べると、粒の電気の量はいつもある値の整数倍になっていました。ミリカンは 1923 年にノーベル物理学賞を受けています。
比電荷と電気素量の 2 つが分かれば、下の図のように電子の質量が計算できます。答えは約 9.1 × 10⁻³¹ kg で、水素原子のおよそ 1,840 分の 1 です。目に見えない電子の重さが、2 つの実験を組み合わせると求まるのです。
大学の学生実験では、このように教科書に載っている値を、自分の測定から出し直します。教科書の値とずれたら、その理由を装置や手順から考えます。ここに、物理の実験の面白さが詰まっています。
図解電子 1 個の質量を求める
- 1電気素量 e = 1.60 × 10⁻¹⁹ C(油の粒の実験から)
- 2質量 m = e ÷ (e/m)
- 31.60 × 10⁻¹⁹ ÷ (1.76 × 10¹¹) を計算する


05
つまずきやすい点と乗り越え方
2 年でつまずきやすいのは、科目の数と抽象さが一度に増えることです。電磁気学ではベクトル解析、量子力学では複素数と偏微分方程式が、ほぼ毎回出てきます。物理数学で同じ道具を扱う週に、物理の授業のノートを見返すと、数学と物理がつながって見えてきます。
解析力学では、「運動方程式で解けるのに、なぜ書き直すのか」と感じる人が多くいます。曲がった針金に通したビーズのように、動ける向きが限られた問題では、ラグランジュ方程式の方が楽に式を立てられます。この書き方が、量子力学と統計力学の入口にもなります。
学生実験では、予想どおりの値が出ないことがよくあります。ずれた理由を、装置や手順、測定の不確かさから考えるのが考察の中心です。発表の質疑で受けた質問は、レポートを直すヒントになります。
高校生のうちに試せること
電波の波長を計算する
電磁波は秒速約 30 万 km で進みます。Wi-Fi で使う 2.4 GHz の電波の波長を、波長 = 速さ ÷ 周波数 で計算しましょう(約 12.5 cm)。好きな FM ラジオ局の周波数でも計算して、波長を比べてみてください。
シャボン液の膜で光の干渉を見る
針金の輪にシャボン液の膜を張り、立てて明るい窓の近くで観察しましょう。膜の表と裏で反射した光が干渉して、虹色のしま模様が見えます。膜が薄くなるにつれて模様が動き、割れる直前には黒っぽく見えます。
銅のパイプに磁石を落とす
銅のパイプの中に強い磁石を落とすと、ゆっくり落ちていきます。磁石の動きでパイプに電流が流れ、その電流がつくる磁場が動きをじゃまするためです。磁石でない同じ重さの物と、落ちる時間を比べましょう。
「2 年: 基本法則を学ぶ」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 617 件から探せます。

原子核計測工学研究グループ
名古屋大学(愛知県)
原子力・核融合工学・吉橋 幸子 教授
河村研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 物理工学教育プログラム・物性シミュレーション・河村 光晶 准教授

上妻研究室
東京科学大学(東京都)
物理学

医用生物物理化学研究室(協力講座)
九州大学(福岡県)
応用化学・木戸秋 悟 教授
星野研究室
千葉大学(千葉県)
理学部 物理学科・物性理論・星野 晋太郎 准教授
強相関電子系や超伝導、固体中の相対論効果などを理論的に研究する。
複雑生命物性研究室
九州大学(福岡県)
物性物理学・水野 大介 教授
代謝のもとで生体ソフトマターが生む複雑な状態を研究する。
物理プロジェクト
金沢工業大学(石川県)
物理
日本天文学オリンピック委員会
全国
高校生向け
高校生の学びの機会
日本天文学オリンピックを開き、国際天文学・天体物理学オリンピックに代表を送る委員会。

公益社団法人物理オリンピック日本委員会
東京都
高校生向け
高校生の学びの機会
全国物理コンテスト「物理チャレンジ」を開き、国際物理オリンピックに代表を送る法人。
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
千葉県
大学生向け研究者向け
研究機関
量子科学や放射線医学などの研究開発を行う国の研究機関。
神山天文台サポートチーム
京都産業大学(京都府)
天文

宇宙科学研究所
神奈川県
大学生向け研究者向け
研究機関
JAXAの研究所で、宇宙科学の研究と科学衛星・探査機の開発を行う。
よくある質問
2 年で量子力学を学ぶのは早くありませんか?
大学によって異なります。東京理科大学では 2 年後期に量子力学 1、名古屋大学では 2 年に量子力学 I が置かれています。最初は 1 次元の問題から始め、3 年で 3 次元の原子や統計力学へ進むので、段階を追って学べます。
学生実験は 1 人で行いますか?
大学によって異なりますが、2 人 1 組で進める形がよく見られます。東京理科大学の物理学実験 2 では、ペアで 2 回実験をしたあと、10 分の発表と 5 分の質疑を行い、レポートを出します。
解析力学は何の役に立ちますか?
動ける向きが限られた複雑な運動を、少ない式で扱えるようになります。また、解析力学のハミルトンの形式は、量子力学や統計力学の出発点になります。東京理科大学の力学 2 も、その準備として位置づけられています。
