大学カタログ

図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 4

4 年: 研究する

研究室に所属し、ゼミで教科書や論文を読みながら、まだ答えの出ていない問いに 1 年かけて取り組みます。卒業研究の発表で 4 年間を締めくくり、多くの人が大学院へ進みます。

レーザーの光が走る実験台や計算機の前で研究に打ち込む学生たちと、ゼミ室で論文を囲んで議論する仲間

ひとことで言うと

巻末に答えのない問題集

3 年までの学生実験は、巻末に答えが載っている問題集のようなものでした。卒業研究は、答えのページがない問題集です。答えが正しいかどうかも、確かめ方を自分で考え、先生や仲間と議論して判断します。

01

研究室の選び方: 理論・実験・観測

4 年になると、研究室に所属して卒業研究に取り組みます。京都産業大学の物理科学科では、4 年で各分野の研究室に配属され、教員の指導のもとで卒業研究を行います。配属の時期や決め方は、大学によって異なります。

物理学の研究室は、大きく理論・実験・観測に分かれます。東京理科大学の大学案内(2026 年度)には、3 つのタイプの研究室が並んでいます。冷却原子の超流動を計算で調べる理論の研究室、超伝導の回路で量子ビットを作る実験の研究室、X 線で銀河団を調べる観測の研究室などです。

同じ大学の物理学科は、卒業研究を最も重要な科目と位置づけています。授業の説明では、研究室の紹介や研究室訪問の印象を参考に、慎重に志望を選ぶよう求めています。この 1 年の過ごし方が、その後の進路に想像以上に影響するとも書かれています。

迷ったら、式・装置・望遠鏡のどれで自然に向き合いたいかから考えると選びやすくなります。

図解3 つのタイプの研究室(例)

理論

  • 紙と鉛筆、計算機で式を解く
  • 例: 冷却原子の超流動
  • 例: 熱を電気に変える物質の設計

実験

  • 装置を作って測る
  • 例: 超伝導回路の量子ビット
  • 例: 極低温の顕微鏡で超伝導を見る

観測

  • 望遠鏡や衛星のデータを解く
  • 例: X 線で銀河団を調べる

02

ゼミと研究の進め方: 論文を読み、問いを立てる

研究室に入ると、ゼミ(輪講)で専門書や論文を読み、担当の部分を黒板やスライドで説明します。日本学術会議の参照基準は、少人数で読み合い議論することが物理の考え方を大きく育て、1 人で学ぶときの思い込みを直す機会にもなるとしています。

読む本や論文の多くは英語です。最新の研究は、論文を公開するサイト arXiv(アーカイブ)に毎日のように投稿されています。1 年の英語の教科書から積み上げてきた力が、ここで生きてきます。

研究の進め方は、下の図のようなくり返しです。東京理科大学の卒業研究の説明では、この流れを自分の力で回せるようになることを目標にしています。論文を調べて未解決の問題を見つけ、目的と方法を決め、観測・実験・計算で答えを出し、結果を考えてまとめるまでです。

参照基準は、結果まで決められた学生実験と違い、卒業研究では未知のデータに取り組むと説明しています。うまくいかない日が続くのは、研究では普通のことです。

図解研究の基本サイクル

  1. 1調べる論文を読み、未解決の問題を探す
  2. 2問いを立てる何をどこまで明らかにするか決める
  3. 3方法を決める実験・観測・計算から選ぶ
  4. 4確かめる測定や計算で答えを出す
  5. 5考える結果から何が分かったかを議論する
  6. 6伝えるポスターや論文にまとめる
実験台の上に、鏡やレンズなどの光学部品と色とりどりの配線がぎっしり並ぶ研究室
アメリカのスタンフォード大学で、原子をレーザーで極低温まで冷やす実験の装置。研究室では、装置の組み立てや調整も研究の一部です。写真: Steve Jurvetson(CC BY 2.0・Wikimedia Commons)

03

卒業研究の題の例

卒業研究の題は、研究室の分野によってさまざまです。下の図は、京都産業大学の物理科学科で、2025 年度の特別研究(卒業研究)発表会に並んだ題の一部です。素粒子の理論から、阿蘇山での観測、音楽と人の声まで、物理の考え方が届く範囲の広さが分かります。

たとえば「磁気冷凍で目指す極低温」は、磁石になる物質の性質を使って物を冷やす研究です。「粉体層への落下衝突のシミュレーション」は、砂のような粒の層に物が落ちたときの動きを、計算機で再現します。「中高生に向けた物理アウトリーチ教材制作」のように、物理を伝える方法を研究する人もいます。

研究の最後には、成果を発表会で発表し、卒業論文にまとめます。東京理科大学の卒業研究の説明でも、ほかの分野の研究者や学生にも分かるように発表する訓練が、研究の流れの最後に挙げられています。

物理の考え方は、宇宙や素粒子だけでなく、音や生き物、地球の環境にも使われています。

図解卒業研究の題(例)

物理の卒業研究
  • 素粒子の理論チャームハドロンの質量の計算
  • 検出器の開発新しい検出器を作り阿蘇山で観測
  • 低温の物理磁気冷凍で極低温を目指す
  • 音と声音楽の中で声が通りやすい理由
  • 生き物の物理細胞性粘菌が集まるしくみ
  • 地球の物理海面水温の変動を解析する
  • 物理を伝える中高生向けの教材を作る

04

研究室の 1 日(例)

下の図は、実験系の研究室に所属する 4 年生の 1 日の例です。研究室ごとに、メンバーが研究室にいる時間(コアタイム)を決めているところもあります。東京理科大学の卒業研究の説明にも、コアタイムという言葉が出てきます。

測定は、思いどおりに進まないことの方が多いものです。装置の調子を確かめ、条件を 1 つずつ変えながら測り、結果を先生や先輩と話し合います。理論の研究室なら、測定の代わりに、式の計算やプログラムでのシミュレーションに時間を使います。

図解実験系の研究室の 1 日(例)

  1. 9:30装置の確認真空や温度が安定しているか見る
  2. 10:00測定条件を 1 つずつ変えて記録する
  3. 13:00ゼミ担当の英語の論文を紹介する
  4. 15:00解析データをグラフにして考える
  5. 17:00先生と相談次の測定の計画を立てる
  6. 夜論文を読む次のゼミや実験の準備をする

05

大学院に進む人が多い理由

物理学科は、大学院へ進む人が多い学科です。東京理科大学の大学案内(2026 年度)によると、理学部第一部 物理学科の 2024 年度の大学院進学率は 67.2% で、3 人に 2 人ほどが進学しています。

4 年の 1 年間は、研究の入口に立ったところで終わることが少なくありません。大学院の修士課程の 2 年間で、自分のテーマをさらに深め、学会で発表する人もいます。卒業研究で見つけた問いの続きを追えるのが、大学院に進む大きな理由の 1 つです。

日本学術会議の参照基準は、物理学の学びで身につく力は社会のあらゆる分野で役立ち、職業的な意義が大きいとしています。大学院に進むか就職するかは、研究室の先生や先輩に相談しながら決めていきます。

クイズ4 年の学びクイズ

このページで紹介した内容から出題します。

  1. Q1東京理科大学 理学部第一部 物理学科で、2024 年度に大学院へ進んだ人の割合は?

  2. Q2日本学術会議の参照基準が説明する、卒業研究と学生実験の違いは?

  3. Q3研究室で、専門書や論文を少人数で読み、担当の部分を説明し合う場は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 日本物理学会の Jr.セッションに挑戦する

    日本物理学会は、中学生・高校生・高専生(3 年まで)が物理の研究を発表する Jr.セッションを毎年開いています。2027 年は 3 月 13 日にオンラインで開かれ、応募の受付は 2026 年 10 月 30 日〜12 月 10 日の予定です。過去の大会の記録を見るだけでも、研究の進め方の参考になります。

    日本物理学会 Jr.セッション
  • arXiv で新しい論文の題を眺める

    arXiv には、世界中の物理学者の論文が毎日のように公開されています。物理の分野の新着一覧を開き、題と要旨の最初の数行だけでも読んでみましょう。知っている単語が 1 つあれば、研究の世界をのぞく入口になります。

    arXiv
  • 研究室を理論・実験・観測に分けてみる

    志望する大学の物理学科のサイトで、研究室の一覧を開きましょう。それぞれが理論・実験・観測のどれにあたるかを分けてみると、自分がどんな方法で自然に向き合いたいかが見えてきます。

「4 年: 研究する」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 617 件から探せます。

研究室をすべて見る(410 件)

よくある質問

卒業研究のテーマは、自分で決められますか?

研究室や大学によって異なります。多くの場合は、研究室で進めている研究に関連したテーマを、先生と相談して決めます。東京理科大学の卒業研究の説明でも、所属する研究室の研究に関連したテーマを設定するとされています。

理論の研究室と実験の研究室は、どう選べばよいですか?

3 年までの講義と学生実験で、式を解く時間と装置で測る時間のどちらが楽しかったかを振り返るのが手がかりになります。研究室を訪ねて、先輩に 1 日の過ごし方を聞くと、違いが具体的に分かります。

大学院に進まないと、物理の知識は生かせませんか?

生かせます。日本学術会議の参照基準は、物理学の学びで身につく力は社会のあらゆる分野で役立つとしています。現象を数式のモデルにしてデータで確かめる力は、研究開発や IT、データ分析などの仕事でも使われます。