図 2 4 年間の流れ()4 年間の流れ 4
4 年: 研究する
自分で問いを立て、実験や調査でデータを集めて、卒業論文にまとめる 1 年です。ゼミで先行研究の論文を読み込み、最後は発表会で成果を伝えます。

ひとことで言うと
夏休みの自由研究を、1 年かけて本気で
自由研究では、テーマ決めから実験、まとめまでを自分で進めました。卒業研究も流れは同じですが、先行研究を調べること、統計で確かめること、ほかの人がやり直せるように方法を書くことが加わります。

01
テーマを決める: 身近な疑問が研究になる
卒業研究は、心理学の 4 年間の学びの集大成です。テーマは、毎日の生活の中の疑問から生まれることがよくあります。和光大学の心理学専修が紹介する卒業論文のテーマの例には、推し活での承認欲求と同担拒否の関連や、メッセージアプリの句点(。)から受ける感情と対人不安など、身近なものが並びます。
ただし、疑問をそのまま研究にはできません。4 年のゼミでは先行研究の論文を読み、すでに分かっていることと、まだ分かっていないことを整理します。そのうえで、データで確かめられる問い(仮説)の形にします。
日本心理学会の「心理学研究」は 2026 年 4 月からオープンアクセスの雑誌になり、J-STAGE で論文を無料で読めます。新しい研究の多くは英語で発表されるため、英語の論文を読む機会も増えます。
「なぜだろう」と思った日常の場面が、研究の出発点になります。
図解卒業論文のテーマ(例)
- ゲームと集中ゲーム課題で没頭する条件を探る
- 推し活の心理承認欲求と同担拒否の関連
- メッセージの句点句点から受ける感情と対人不安
- 職場のストレスストレスチェック導入の課題
- 虐待への認識学生と子育て世代を比べる


02
卒業研究の 1 年: 計画からデータ集めまで
卒業研究は、1 年をかけて進めます。下の図は流れの例で、時期は大学によって異なります。春に計画を立て、夏から秋にデータを集め、冬に分析して論文を書くのが基本の形です。
人に参加してもらう研究では、目的や内容を説明し、原則として文書で同意を得ます(インフォームド・コンセント)。参加者が途中でやめられることも、前もって伝えます。どちらも日本心理学会の倫理綱領に定められています。大学によっては、卒業研究でも学内の倫理審査を受けてからデータを集めます。
データの集め方は、テーマによってさまざまです。質問紙による調査、パソコンで反応時間を測る実験、視線や脳の血流の変化を測る装置を使う実験などがあります。1 年を通して自分の研究を動かすのは、4 年生ならではの経験です。
図解卒業研究の 1 年(例)
- 14〜5 月先行研究を読み、問いを立てる
- 26〜7 月方法を決め、倫理面を確かめる
- 38〜10 月実験や調査でデータを集める
- 411〜12 月統計で分析し、論文を書く
- 51〜2 月論文を出し、発表会で伝える


03
卒業論文と発表: やり直せるように書く
心理学の論文は、問題(目的)・方法・結果・考察の順に書くのが基本です。2 年の実験レポートと同じ形で、方法には、だれが参加し、どんな手順で何を測ったかを、ほかの人がやり直せるくらい詳しく書きます。
やり直せることには、大きな意味があります。2015 年、270 人の研究者が、心理学の 3 つの専門誌に 2008 年に載った 100 の研究をやり直しました。もとの研究の 97% は統計で意味のある結果でしたが、やり直しで同じように意味のある結果が出たのは 36% でした。
こうした問題への対策として、データを集める前に仮説や分析の方法を決めて登録しておく「事前登録」が広がっています。結果を見てから都合よく分析を選ばないための工夫です。
論文を出したあとは、発表会で研究の目的・方法・結果を、限られた時間で分かりやすく伝えます。先生や後輩からの質問に答えるうちに、自分の研究の弱いところや、次に確かめたいことも見えてきます。
図解論文の組み立て(例)
- 1問題: 先行研究と仮説を書く
- 2方法: 参加者・手順・測ったものを書く
- 3結果: データと統計の分析を書く
- 4考察: 分かったことと限界を書く

04
卒業のあと: 心理学で身につく力
卒業後の道は、企業への就職、公務員、大学院への進学などさまざまです。日本学術会議の参照基準は、心理学で身につく力を 4 つ挙げています。人を複眼的に見る力、うのみにせず確かめる態度、問題を見つけて解決する力、伝える力です。どれも、社会で活躍するうえで役立つとしています。
公認心理師をめざす人は、大学院で 10 科目と 450 時間以上の実習を学ぶか、決められた施設で 2 年以上働きます。そのあとで国家試験を受けます。研究者をめざす人は、大学院の修士課程・博士課程に進み、研究をさらに深めていきます。
卒業研究で身につけた「問いを立て、データで確かめ、分かりやすく伝える」流れは、どの道に進んでも使えます。
高校生のうちに試せること
J-STAGE で心理学の論文を読む
日本心理学会の「心理学研究」は、J-STAGE で論文を無料で読めます。まずは要約(抄録)を読んで、目的・方法・結果を 3 行にまとめてみましょう。
心理学研究(J-STAGE)身近な疑問を仮説の形にする
「テストの前に音楽を聴くと集中できる?」のような疑問を、比べる条件・測るもの・予想の 3 つに分けて書き出してみましょう。探究の授業の課題研究にも、そのまま使えます。
心理学ワールドで研究の今を知る
日本心理学会の「心理学ワールド」は、研究者が新しい研究を読みやすく紹介する雑誌で、ウェブで記事を読めます。事前登録のしくみを紹介する記事もあります。
心理学ワールド(日本心理学会)
「4 年: 研究する」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 69 件から探せます。
知覚・認知心理学研究室
筑波大学(茨城県)
情報メディア・森田 ひろみ
教育心理学分野
新潟大学(新潟県)
教育学部 教育科学講座・教育心理学
リスク心理学研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・社会心理学・髙木 彩 准教授
人がリスクをどう捉え判断するかを研究し、社会的な対話を支える。
認知情報学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・脳認知科学・西田 眞也 教授
心理学研究室
熊本大学(熊本県)
文学部 人間科学コース・心理学
人の行動を実験などで測り、心の働きを調べる。

認知科学研究室
九州大学(福岡県)
情報学・志堂寺 和則 教授
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
心理学部で学んだことは、企業でも生かせますか?
日本学術会議の参照基準は、心理学で身につく汎用的な力を 4 つ挙げています。人を複眼的に見る力、批判的実証的態度、問題発見・解決能力、コミュニケーション能力です。社会で活躍する人にも役立つとしています。調査やデータ分析の経験は、商品開発やマーケティングなどでも生かせます。
公認心理師になるには、必ず大学院に行きますか?
大学院に進む道のほかに、大学で決められた 25 科目を学んだあと、決められた施設で 2 年以上働いてから国家試験を受ける道もあります。
実験の結果が予想どおりにならなかったら、失敗ですか?
失敗ではありません。予想と違う結果も、研究にとって大切な情報です。事前登録が広がっているのも、結果がどうであっても計画どおりに分析し、正直に報告するためです。

