図 1 社会学の広がり社会学の広がり 3
地域とグローバル化
都市と農村、町の祭りや消防団、海外から来て暮らす人たち。人が集まって住む「地域」がどう変わり、世界とどうつながっているのかを、統計と現地での聞き取りで調べる分野です。

ひとことで言うと
町は、時間帯によって別の顔になる
朝の駅は通勤・通学の人であふれ、昼の住宅街は静かになり、夜の繁華街はまた別のにぎわいを見せます。同じ場所でも、だれがいつ集まるかで町の姿は変わります。地域の社会学は、その動きと、そこで生まれる人のつながりを調べます。

01
都市と農村: 昼と夜で人口が 17 倍になる街
東京都千代田区に住んでいる人は、2020 年の国勢調査で約 6 万 7 千人でした。ところが、通勤や通学で人が集まる昼間の人口は、約 117 万人にのぼります。夜の人口に対する昼の人口の割合(昼夜間人口比率)は 1,753.7% で、東京 23 区で最も高くなっています。
国全体では、人の集まる場所と減る場所の差が広がっています。2025 年の国勢調査では、全国 1,719 市町村のうち 91.2% で人口が減りました。5 年前より人口が増えた都道府県は東京都だけで、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)には全国の 30.1% の人が住んでいます。
都市社会学では、人が集まることで生まれる便利さと、通勤の混雑や近所づきあいの薄さなどの課題を調べます。農村社会学では、人口が減る中で、農業や祭り、買い物や通院の手段をどう保つかを考えます。
人の動きを数えると、地図だけでは見えない地域の姿が分かります。
図解千代田区の昼と夜(2020 年)
- 1朝、周りの区や県から働く人が集まる
- 2大学や学校に通う学生も集まる
- 3夕方から夜、それぞれの家に帰っていく


02
地域コミュニティ: 町を守る消防団の今
消防団は、ふだんは別の仕事や学校に通いながら、火事や災害のときに地域を守る人たちの組織です。団員は市町村の非常勤の地方公務員で、消防団はすべての市町村に置かれています。1955 年に約 194 万人いた団員は、2025 年には 73 万 2,223 人まで減りました。
年齢の構成も変わりました。1965 年には団員の 42.7% が 20 歳代でしたが、2025 年は 9.0% です。その一方で、学生の団員は 2015 年の 3,017 人から 7,568 人に増えています。活動した学生に市町村長が証明書を出し、就職活動で生かせるようにする「学生消防団活動認証制度」もあります。
アメリカの政治学者パットナムは、2000 年の本『孤独なボウリング』などで、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」という考え方を広めました。人と人のつながりや信頼を、地域の力を支える資源ととらえる考え方です。消防団、祭り、町内会などは、ふだんのつながりが、災害のときの助け合いにもつながる場です。地域の社会学では、こうした集まりがどう続き、どう変わるかを調べます。
地域のつながりは、ふだんの暮らしと、いざというときの助け合いを支えます。
図解地域を支えるつながり
- 消防団火事や災害のときに出動する
- 祭り準備を通して世代が交わる
- 町内会・自治会防犯、清掃、回覧板
- 子ども会・PTA子どもを中心にした集まり
- 商店街顔見知りの関係が生まれる


03
移民と多文化・グローバル化: 384 万人の外国人が暮らす国
2025 年の国勢調査で、日本に住む外国人は 384 万人でした。総人口の 3.1% にあたり、2020 年から 39.8% 増えています。同じ 5 年間に、日本人の人口は 3.5% 減りました。
移民の研究の古典が、シカゴ大学で研究したトマスとズナニエツキの『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』(1918〜1920 年)です。2 人は、アメリカに移り住んだ人と故郷の家族が交わした手紙を集め、移民の暮らしや家族の関係の変化を読み解きました。手紙もデータになることを示した研究です。
日本では総務省が 2006 年に「地域における多文化共生推進プラン」を作り、2020 年に改訂しました。言葉の支援、生活の支援、だれもが参加できる地域づくりなど、迎える側の地域のあり方も問われています。移民と多文化の社会学では、移り住んだ人と迎える地域の両方から話を聞き、暮らしの課題を具体的に調べます。
移民の研究は、移り住む人と迎える地域の両方を見て進めます。
図解移り住んだ人の暮らしを調べる
- 1統計で全体を見る国勢調査で人数や住む地域を確かめる
- 2現場で話を聞く本人や家族、支援する人に聞き取る
- 3記録を読む手紙や日記、SNS の投稿を分析する
- 4課題をまとめる言葉、仕事、学校での困りごとを整理


04
大学での学び方と、その先の仕事
多くの大学では、都市社会学、地域社会学、農村社会学、国際社会学などの授業があります。実際の町に出かけて聞き取りや観察をする、フィールドワークの授業を置く大学もあります。授業名は大学によって異なります。
商店街の空き店舗、祭りの担い手、外国人住民向けの日本語教室、移住してきた人の暮らしなど、テーマは足元にあります。自治体の統計で町の変化をつかみ、現地で話を聞いて理由を探る、という組み合わせで調べることがよくあります。
学んだことは、市役所や県庁の地域づくり、国際交流協会、まちづくりの NPO、鉄道や不動産の会社の街づくり、記者などに生かせます。地方への移住を支える仕事や、災害に強い地域づくりに関わる人もいます。
高校生のうちに試せること
自分の市町村の人口の変化を調べる
国勢調査の結果から、住んでいる市町村の 2020 年と 2025 年の人口を比べましょう。増えたか減ったか、その理由を、駅や学校、働く場所の変化と結びつけて考えてみてください。
令和 7 年国勢調査の結果(総務省統計局)地域の行事を「調べる目」で見る
祭りや清掃活動など、地域の行事に参加したら、だれが準備をしているか、どの年代が多いかを観察してメモしましょう。人の写真は撮らずに、気づいたことを言葉で記録してください。
学生の消防団員について知る
総務省消防庁のサイトでは、学生の消防団員の活動や、就職活動で使える認証制度を紹介しています。大学に入ったら、住んでいる町の消防団に加わる道もあります。
学生消防団員の活動(総務省消防庁)
「地域とグローバル化」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 134 件から探せます。
よくある質問
地方に住んでいても、地域の社会学は学べますか?
学べます。人口が減る地域や、移住者を迎える地域は、研究の大切な現場です。地元の大学で、自分の町をテーマに卒業論文を書く人もいます。
外国語ができないと、移民の研究はできませんか?
日本語で話せる人への聞き取りや、支援する人への調査、統計の分析から始められます。研究を深めたくなったら、相手の言葉を学ぶ道もあります。
まちづくりは、建築や土木とどう違いますか?
建築や土木は、道路や建物などの形をつくります。社会学は、そこに住む人のつながりや、だれが困っているかを調べます。実際のまちづくりでは、両方の専門家が一緒に働きます。

