大学カタログ

図 1 社会学の広がり社会学の広がり 1

人と人のつながり

友だちとの距離のとり方、家族のかたち、男女の役割、世代の違い。毎日の人づきあいの中にある「当たり前」がどこから来て、どう変わってきたのかを、調査とデータで確かめる分野です。

教室、部室、家の食卓、駅前の広場が一つの町につながり、いろいろな年代の人と話したり、アンケートを集計したりする大学生たち

ひとことで言うと

人の反応は、自分を映す鏡

鏡がないと、自分の寝ぐせには気づけません。私たちは、友だちの表情や返事の速さなど、周りの反応を見て自分がどう見られているかを知ります。アメリカの社会学者クーリーは 1902 年、これを「鏡に映った自己」と呼びました。

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自分と他者: 他人の目を取り込んで「自分」が育つ

自分らしさは、生まれつき心の中にあるものだと思われがちです。社会学では、人は周りの人とのやりとりを通して「自分」を形づくっていくと考えます。

アメリカの社会学者・哲学者ミードは、子どもの遊びに注目しました。ままごとで親や店員になりきる「ごっこ遊び」では、1 人ずつ相手の立場に立つ練習をします。野球のような「ゲーム」になると、9 人全員の動きと決まりを頭に入れて動かなければなりません。

こうして身につく「みんなならこう考えるだろう」という見方を、ミードは一般化された他者と呼びました。部活の新入部員が、言われなくても動けるようになっていくのも、この見方で説明できます。ミードの講義は、亡くなった後の 1934 年に『精神・自我・社会』という本にまとめられました。

SNS で、友だち向けと趣味用のアカウントを分けるのも、場面ごとに見せ方を変える工夫です。社会学者ゴフマンは、こうした振る舞いを、表舞台と舞台裏のある劇にたとえました。

人は、周りの人の目を自分の中に取り込みながら成長していきます。

図解「自分」が育つまで(ミード)

  1. 1ごっこ遊び親や店員など、1 人の立場になりきる
  2. 2ゲーム野球のように、全員の役割を頭に入れる
  3. 3一般化された他者「みんなならこう考える」で動ける
観客席に囲まれ、内野の土と外野の芝が広がる野球場の全景
兵庫県西宮市の阪神甲子園球場。野球の守備では、9 人がそれぞれ、ほかの選手の動きを予想しながら動きます。ミードは、こうした「ゲーム」の中で自分が育つと考えました。写真: やねまか(CC0・Wikimedia Commons)

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家族: いちばん多いのは「一人暮らし」

教科書やドラマでは、「夫婦と子ども」の家族がよく描かれます。ところが、2025 年の国勢調査で最も多かった世帯の形は、一人で暮らす単独世帯でした。一般世帯の 41.4% を占め、2010 年の 32.4% から大きく増えています。

一方で、「夫婦と子ども」の世帯は、2010 年の 27.9% から 23.3% に減りました。1 世帯あたりの人数は 2.10 人で、都道府県別では東京都の 1.85 人が最も少なくなっています。一人暮らしの人の割合が最も高いのは、男性では 25〜34 歳、女性では 85 歳以上です。

家族社会学では、結婚、子育て、介護、離れて暮らす家族とのつながりなどを調べます。人生のどの時期に、だれと暮らすのかを追う「ライフコース」の研究もあります。家族の形が変わると、住まいや地域の支え合い、福祉の制度も見直しが必要になります。

「普通の家族」の姿は、時代とともに変わっていきます。

図解世帯の形の変化(国勢調査)

2010 年

  • 単独世帯 32.4%
  • 夫婦と子ども 27.9%
  • 夫婦のみ 19.8%
  • ひとり親と子ども 8.7%

2025 年

  • 単独世帯 41.4%
  • 夫婦と子ども 23.3%
  • 夫婦のみ 20.2%
  • ひとり親と子ども 8.8%
並木道の両側に、白い集合住宅の棟が並ぶ団地の風景
埼玉県春日部市の武里団地。だれと、どんな住まいで暮らすのかは、家族のあり方や街の姿とも深く関わっています。写真: あばさー(Public domain・Wikimedia Commons)

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ジェンダー: 「生まれかわるなら?」の答えが逆転した

統計数理研究所の「日本人の国民性調査」は、1953 年から 5 年ごとに続く調査です。その中に「もういちど生まれかわるとしたら、男と女のどちらに生まれてきたいか」という質問があります。

1958 年、女性で「女に」と答えた人は 27% で、「男に」の 64% を大きく下回っていました。1968 年に初めて「女に」が上回り、2013 年には女性の 71% が「女に」、23% が「男に」と答えています。男性は、どの年も 9 割前後が「男に」と答えました。

ジェンダーは、社会や文化の中でつくられる性別の役割やイメージを指す言葉です。この答えの変化は、女性の学び方や働き方、暮らしがこの 55 年で大きく変わったことと重ねて考えられます。調べる側の見方も変わりました。1955 年に始まった社会階層の全国調査(SSM 調査)は、1975 年までは男性だけを対象にしていました。

性別の役割の「当たり前」は、数十年のうちに入れかわることがあります。

図解女性で「女に」と答えた割合

  1. 11958 年: 27%「男に」が 64% で多数
  2. 21968 年: 48%初めて「男に」(43%)を上回る
  3. 31993 年: 65%「男に」は 29% に
  4. 42013 年: 71%「男に」は 23% に

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若者と世代: 変わったのは若者か、時代か

「最近の若者は〜」という言い方をよく耳にします。けれども、ある年に若者と年配の人で答えが違っても、理由は 1 つではありません。年をとることによる違い(年齢効果)や、生まれ育った時代による違い(世代効果)が考えられます。調査した年の社会の空気による違い(時代効果)もあります。

「生まれかわるなら」の質問を年齢別に見ると、手がかりがあります。1958 年に 20 歳代だった女性は、「女に」が 32% でした。この人たちは、2013 年には 75〜84 歳です。その年の 70 歳以上の女性では、73% が「女に」と答えています。

同じ世代の人たちの答えが、55 年の間に大きく変わったことになります。2013 年には、20 歳代の女性(69%)と 70 歳以上の女性(73%)の差もほとんどありません。若者だけが変わったのではなく、社会全体の空気が変わった、つまり時代効果が大きかったと読めます。

年齢による違いと、時代による違いを分けて考えるのが、世代研究の基本です。

図解答えが違う 3 つの理由

年齢効果

  • 年をとるにつれて変わる
  • 例: 健康への関心

世代効果

  • 生まれ育った時代で決まる
  • 例: 子どものころの遊び方

時代効果

  • 同じ時期に全員が変わる
  • 例: 社会全体の意識の変化

05

大学での学び方と、その先の仕事

多くの大学では、1・2 年生で社会学の入門と調べ方を学び、3 年生ごろから家族社会学、ジェンダー論、若者や世代の研究などのゼミに分かれます。授業名や学ぶ順番は大学によって異なります。

部活の上下関係、SNS の使い分け、きょうだいの家事の分担など、身近なテーマを選ぶ人もいます。友だちへのインタビューと、国勢調査や国民性調査のような公開データの分析を組み合わせて、卒業論文にまとめます。

学んだことは、市役所や県庁の子育て支援・男女共同参画の仕事、企業の人事、調査会社のリサーチャー、記者などに生かせます。人と人の関係を、思い込みでなくデータで説明できる力は、人と関わるどの仕事でも役立ちます。

クイズ人と人のつながりクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q12025 年の国勢調査で、一般世帯の中で最も多かった世帯の形は?

  2. Q2「生まれかわるなら男と女のどちらに?」。2013 年に、女性で「女に」と答えた人の割合は?

  3. Q3ミードが、子どもの「自分」が育つ例として挙げた遊びは?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 自分の都道府県の世帯を調べる

    総務省統計局が公開している令和 7 年国勢調査の結果から、住んでいる都道府県の 1 世帯あたりの人数を調べましょう。全国の 2.10 人と比べて、違いの理由を考えてみてください。

    令和 7 年国勢調査の結果(総務省統計局)
  • 家族に「生まれかわるなら」を聞く

    家族や祖父母に、国民性調査と同じ質問をして、答えと理由を聞いてみましょう。統計数理研究所のサイトでは、調査年ごと・年齢別の結果を見られます。

    日本人の国民性調査「男・女の生まれかわり」
  • 自分の中の「一般化された他者」を探す

    部活や委員会で、だれにも言われていないのに守っている決まりを 3 つ書き出しましょう。いつ、だれから学んだのかを思い出すと、ミードの考え方を自分で確かめられます。

「人と人のつながり」に関連するコミュニティ

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よくある質問

ジェンダーを学ぶのは、女性だけですか?

いいえ。ジェンダーは、男性・女性やそれ以外の人を含め、社会がつくる性別の役割やイメージ全体を扱います。男性の働き方や育児、性の多様性なども研究の対象です。

家族社会学では、自分の家族のことを話す必要がありますか?

必要はありません。統計やほかの人への調査をもとに、社会全体の家族の変化を考えます。自分の経験を出発点にする人もいますが、何をどこまで話すかは自分で決められます。

心理学の「人と社会の心理」とは、どう違いますか?

心理学は一人ひとりの心の動きを実験で調べることが多く、社会学は家族や世代など、集団や制度の変化を調査データで調べることが多い分野です。重なる部分もあります。