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図 1 生物の広がり生物の広がり 2

体の調節と環境応答

暑い日に汗をかく、花粉でくしゃみが出る、レタスの種が光で芽を出す。体の内と外の変化に、生き物がどう応えるかを学ぶ分野です。神経とホルモン、免疫、目と筋肉、植物の光の受け取り方を順に見ていきます。

夏の校庭で汗をふきながら温度計を見る高校生、スギ林を見上げる高校生、窓辺でレタスの種をまいた皿に光を当てる高校生たち

ひとことで言うと

急ぎは電話で、お知らせは手紙で

急ぎの用事は電話で特定の相手にすぐ伝え、町内のお知らせは手紙で各家に配ります。体の中でも、神経は電気の信号で特定の筋肉や器官にすばやく伝えます。ホルモンは血液に乗って全身に届き、ゆっくり長く働きます。体は目的に合わせて、2 つの伝え方を使い分けているのです。

01

神経とホルモン: 汗 100 cc で、体温が 1℃ 下がる

生物基礎の「ヒトの体の調節」では、体の中の環境を一定に保つしくみを学びます。体の情報の伝え方には 2 つあります。神経は電気の信号で特定の器官にすばやく伝え、ホルモンは血液に乗って全身に運ばれ、受け取る細胞だけに働きます。体温の調節には、この両方が関わっています。

暑くなると、皮膚の近くの血管が広がって血液が集まり、熱を外に逃がします。環境省の熱中症環境保健マニュアルによると、体が熱くなると皮膚が赤く見えるのはこのためです。同時に汗が出て、汗が蒸発するときに体から熱を奪います。外の気温が高いと熱を逃がしにくくなるので、主に汗の蒸発が体温を下げる働きをします。

厚生労働省熊本労働局によると、汗が皮膚の上で蒸発すると、1 cc あたり約 0.58 kcal の熱を奪います。体重 70 kg の人なら、汗 100 cc で体温が約 1℃ 下がる計算です。ただし、湿度が高い日や風が弱い日は、汗が蒸発しにくくなります。

環境省の「暑さ指数(WBGT)」は、この考え方を生かした目安です。気温だけでなく、湿度と日差しなどの熱を取り入れて、体と外の熱のやりとりを数字にします。暑さ指数が 28 を超えると、熱中症の患者が大きく増えることが分かっています。

体温は、神経とホルモンが皮膚の血管と汗を調節することで保たれています。

図解汗 100 cc で、体温は何℃ 下がる?

入力体重 70 kg の人が汗を 100 cc かき、すべて皮膚の上で蒸発した
  1. 1汗 1 cc が蒸発すると、約 0.58 kcal の熱を奪う
  2. 2100 cc なら 0.58 × 100 = 58 kcal
  3. 3人の体の比熱を約 0.83 とすると、70 kg の体を 1℃ 冷やす熱は 70 × 0.83 ≒ 58 kcal
  4. 458 ÷ 58 = 1
結果体温は約 1℃ 下がる。蒸発せずに流れ落ちた汗は、この計算に入らない

02

免疫: 花粉症は、守るしくみの「やりすぎ」

生物基礎の「免疫」では、体に入った異物を取り除くしくみを学びます。まず働くのが、生まれつき備わった自然免疫です。好中球やマクロファージなどの白血球が、異物を取り込んで分解します。それでも残った異物には、獲得免疫が働きます。リンパ球が相手の特徴を覚え、抗体などで狙い撃ちにします。

獲得免疫には、一度出会った相手を覚える記憶の働きがあります。ところが、この反応が、本来は害の少ない物質に対して強く起こりすぎることがあります。これがアレルギーです。学習指導要領も、免疫の学習で身近な病気の例に触れるよう求めています。

身近な例がスギ花粉症です。林野庁の森林・林業白書(令和 7 年版)は、全国の調査をもとに説明しています。スギ花粉症の有病率は、1998 年の 16% から、2019 年には 39% に増えたと推定されています。国は、2033 年度までに、花粉を出すスギの人工林を約 2 割減らす目標を立てています。

植え替えに使う花粉の少ないスギの苗木は、2014 年度の 258 万本から、2024 年度には 1,919 万本に増えました。スギの苗木全体の約 6 割です。少花粉品種とは、花粉の量がふつうの品種の 1% 以下のスギです。体のしくみだけでなく、植物の品種からも花粉症を減らそうとしているのです。

アレルギーは、体を守る免疫が、害の少ない物質に強く反応しすぎて起こります。

図解自然免疫と獲得免疫

自然免疫

  • 生まれつき備わっている
  • 好中球やマクロファージが働く
  • 異物を取り込んで分解する
  • 侵入してすぐに働き始める

獲得免疫

  • 出会った相手を覚えて働く
  • T 細胞や B 細胞などのリンパ球
  • 抗体などで相手を狙い撃つ
  • 2 度目はすばやく強く働く
細い針のような葉の先に、オレンジ色の小さな粒が房のように集まったスギの雄花がついている
スギの雄花(ポーランドの植物園で撮影)。春になると、ここから花粉が風に乗って飛びます。花粉の少ない品種は、花粉の量や雄花のつき方で選ばれています。写真: Krzysztof Ziarnek(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

03

刺激の受容と反応: 3 種類の細胞で、色を見分ける

生物の「動物の反応と行動」では、刺激を受け取る受容器として目を、反応する効果器として筋肉を学びます。光は角膜と水晶体で集められ、目の奥の網膜で受け取られます。網膜には、明るい所で色を見分ける錐体細胞と、暗い所で弱い光を感じる桿体細胞があります。

錐体細胞には、主に赤・緑・青の光によく反応する 3 種類があります。脳は、3 種類の細胞の反応の割合から色を感じ取ります。スマートフォンの画面が、赤・緑・青の 3 色の光の組み合わせでさまざまな色を表せるのは、この目のしくみを利用しているからです。

色の感じ方には個人差があります。日本眼科医会は、色の感じ方が多数派と違う人の割合を、約 20 人に 1 人と説明しています。区別しにくい色の組み合わせがあるだけで、白黒に見えるわけではありません。誰にでも見分けやすい色の使い方は、「色のバリアフリー」と呼ばれています。

効果器の筋肉では、細長い筋繊維の中で、アクチンとミオシンという 2 種類のタンパク質の繊維が滑り合って縮みます。このときのエネルギーには、ATP が使われます。目で見てから手を動かすまでには、受容器・神経・筋肉が順につながって働いているのです。

目で受け取った光の情報は、神経を通って脳に届き、筋肉の動きに変わります。

図解光を見て、手を動かすまで

  1. 1受容器(目)網膜の視細胞が光を受け取る
  2. 2感覚神経視神経が信号を脳へ送る
  3. 3中枢(脳)何が見えたかを判断し、命令を出す
  4. 4運動神経命令を筋肉へ伝える
  5. 5効果器(筋肉)筋肉が縮んで手が動く

04

植物の環境応答: レタスの種は、最後に浴びた光の色で決める

植物は動けない代わりに、光や重力、季節の変化を感じて、育ち方を変えます。芽生えが光の方へ曲がる性質(光屈性)や、根が下へ伸びる性質(重力屈性)もその例です。生物の「植物の環境応答」では、植物ホルモンと、光を受け取るタンパク質(光受容体)の働きを学びます。

1880 年、ダーウィンは息子のフランシスとともに、イネ科の芽生えが光の方へ曲がる実験をまとめた本を出しました。芽生えの先端を覆うと曲がらず、曲がるのは先端より少し下の部分でした。先端で光を感じ、その知らせが下へ伝わると考えたのです。この知らせの正体が、のちに植物ホルモンのオーキシンだと分かります。

レタスの種には、光が当たると芽を出す性質があります(光発芽種子)。アメリカ農務省(USDA)によると、1952 年 4 月 9 日、ベルツビルの研究チームがある発見をしました。赤い光を当てた種は芽を出しますが、そのあとに遠赤色光(赤より波長の長い光)を当てると出ないのです。何度くり返しても、最後に当てた光の色で結果が決まったのです。

この光を受け取るタンパク質は、のちにフィトクロムと名付けられました。木の葉の下では、赤い光が葉に吸収され、遠赤色光が多く届きます。光発芽種子は、上に葉が茂っていない明るい場所かどうかを、光の色で見分けていると考えられています。

植物は光の色を感じ分けて、芽を出す時期や伸びる向きを決めています。

図解レタスの種に、赤と遠赤色を交互に当てると

入力水を吸わせたレタスの種に、暗い所で光を当てる
  1. 1赤 → 芽を出す
  2. 2赤 → 遠赤色 → 芽を出さない
  3. 3赤 → 遠赤色 → 赤 → 芽を出す
  4. 4赤 → 遠赤色 → 赤 → 遠赤色 → 芽を出さない
結果最後に当てた光が赤なら芽を出す。フィトクロムが、光の色で 2 つの形に切り替わるため
茶色の台の上で、黒っぽい種と白っぽい種から、白い根と緑の芽が伸び始めている
芽を出し始めたレタスの種。左の黒っぽい種と右の白っぽい種は、別の品種です。レタスの種は、光発芽種子の例としてよく取り上げられます。写真: Rasbak(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

05

大学では: 生理学・免疫学・植物科学へ

体の調節と免疫は、医学部や薬学部、看護学部の生理学や免疫学で、ずっと詳しく学びます。目や神経の働きは、心理学の神経科学にもつながります。植物の環境応答は、農学部で、花の咲く時期や実り方を調節する栽培の技術として生かされています。科目の名前や学ぶ時期は、大学によって異なります。

この分野の知識は、医療や健康の仕事、スポーツの指導、農業や林業の研究など、幅広い仕事で使われます。花粉の少ないスギを選ぶ研究のように、人の体と植物の両方を知ることが役立つ場面もあります。

つまずきやすいのは、グラフの読み取りです。体温や血糖濃度の変化のグラフでは、まず横軸が時間か、量かを確かめてください。次に、何が起きたあとに値が上がり、何が働いて戻ったのかを、矢印でグラフに書き込みます。原因と結果の順番が見えると、用語も覚えやすくなります。

クイズ体の調節と環境応答クイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1体重 70 kg の人が汗を 100 cc かき、すべて蒸発すると、体温はおよそ何℃ 下がる?

  2. Q2目の網膜で、暗い所で弱い光を感じるのはどの細胞?

  3. Q3レタスの種に「赤 → 遠赤色 → 赤 → 遠赤色」の順で光を当てると、どうなる?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • レタスの種で光発芽を確かめる

    湿らせたキッチンペーパーを 2 枚の皿に敷き、市販のレタスの種を同じ数ずつまきましょう。1 枚はすぐにアルミホイルで包んで暗くし、もう 1 枚は明るい窓辺に置きます。2〜3 日後に、芽を出した種の数を比べてください。品種によって差が出ることもあるので、袋の品種名も記録しておきましょう。

  • 画面を拡大して、3 色の光を見る

    スマートフォンやパソコンの白い画面を、ルーペや虫めがねで近くから見てみましょう。赤・緑・青の小さな光の点が並んでいるのが見えることがあります。黄色や水色の部分も見て、3 色の組み合わせがどう変わるかを確かめてください。目が疲れたら、すぐに休みましょう。

  • 暑さ指数を記録して、汗の働きを考える

    環境省の熱中症予防情報サイトでは、全国の暑さ指数(WBGT)の実況と予測を見られます(主に春から秋)。住んでいる町の暑さ指数と、気温・湿度を毎日記録しましょう。湿度が高い日に暑さ指数がどう変わるかを比べると、汗が蒸発しにくい日がどんな日かが見えてきます。

    環境省「熱中症予防情報サイト」

「体の調節と環境応答」に関連するコミュニティ

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よくある質問

神経とホルモンは、どう使い分けられているのですか?

神経は電気の信号で特定の器官にすばやく伝えるので、目の前の危険をよけるような速い反応に向いています。ホルモンは血液に乗って全身に届き、ゆっくり長く働くので、体温や血糖濃度を一定に保つような調節に向いています。実際には、両方が協力して働く場面が多くあります。

植物ホルモンは、何種類くらい学びますか?

学習指導要領は、植物ホルモンを 3、4 種類取り上げ、それに関わる光受容体にも触れるよう求めています。教科書では、オーキシンのほか、ジベレリンやアブシシン酸、エチレンなどがよく扱われます。

生物基礎と生物で、どこまで学びますか?

生物基礎では、神経とホルモンによる体温や血糖濃度の調節と、免疫を学びます。生物では、目や筋肉などの刺激の受容と反応、動物の行動、植物ホルモンと光受容体による植物の環境応答へ進みます。学ぶ学年や順番は学校によって異なります。