
ひとことで言うと
なべのお湯は、温まると回り出す
なべを火にかけると、温まった水が上がり、冷えた水が下がって、中で水が回り始めます。地球では、太陽の熱を多く受ける赤道付近の空気と海が温まり、風と海流が熱を寒い地域へ運んでいます。

01
大気の層: 天気が変わるのは、地上から 10〜16 km まで
地学基礎では、まず大気のつくりを学びます。大気は、高さによる気温の変わり方で、下から対流圏、成層圏、中間圏、熱圏に分かれます。気象庁によると、対流圏は地上から高さ 10〜16 km までの層で、上空ほど気温が下がります。雲ができて雨や雪が降るのは、この対流圏の中です。
10〜16 km と聞くと厚く感じますが、地球の直径は約 1 万 2,800 km あります。地球を直径 1 m の球にすると、対流圏の厚さは 1 mm ほどしかありません。天気の変化は、地球の表面のごく薄い層で起きているのです。
対流圏の上の成層圏では、オゾンが太陽の紫外線を吸収して大気を温めています。さらに上の熱圏では、オーロラや流れ星が光ります。地学基礎では、太陽から受け取るエネルギーと、地球が宇宙へ出すエネルギーがつり合っていることや、二酸化炭素などによる温室効果も学びます。
天気の変化は、地球を包む薄い対流圏の中で起きています。
図解大気の 4 つの層
- 対流圏地上から 10〜16 km。雲や雨、天気の変化
- 成層圏オゾンが紫外線を吸収して温まる
- 中間圏成層圏の上。上空ほど気温が下がる
- 熱圏オーロラや流れ星が光る

02
積乱雲と線状降水帯: 雲の列が、同じ場所に雨を降らせ続ける
夏の夕立を降らせるのは、背の高い積乱雲です。地面近くの暖かく湿った空気が持ち上げられ、まわりの空気より暖かいままだと、どんどん上へのぼっていきます。地学では、空気がのぼるときの温度の下がり方から、大気が安定か不安定かを考えます。
気象庁によると、線状降水帯は、次々と発生する発達した積乱雲が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過したり、とどまったりしてできる雨の帯です。長さは 50〜300 km 程度、幅は 20〜50 km 程度あります。雲が次々に生まれて、同じ場所の上を通り続けるため、強い雨が長く続きます。
気象庁は、半日ほど前から線状降水帯による大雨の可能性を呼びかけています。2026 年 5 月下旬からは、発生の 2〜3 時間前を目標に知らせる「線状降水帯直前予測」も始まりました。それでも、発生のしくみには分かっていない点が多く、研究が続いています。学習指導要領の解説も、気象衛星やレーダーの画像から線状降水帯を読み取る学習を例に挙げています。
大雨の予測は、積乱雲のしくみの理解と、衛星やレーダーの観測に支えられています。
図解線状降水帯の情報の流れ
- 1半日ほど前大雨の可能性を呼びかける
- 22〜3 時間前直前予測(2026 年 5 月下旬から)
- 3発生したとき雨雲の地図に赤い楕円で示す
- 4身を守る危険度の地図や避難の情報を確かめる


03
偏西風: 冬は東京→福岡が約 2 時間、福岡→東京は約 1 時間半
地球は、赤道付近ほど太陽の熱を多く受けます。気象庁の解説によると、赤道付近で温められて上昇した空気は、上空を北と南へ流れ、緯度 30 度付近で下降します。そこから赤道へ向かって吹くのが貿易風で、この大きな循環をハドレー循環といいます。
日本がある中緯度の上空には、西から東へ偏西風が吹いています。中でも、上空約 30,000〜40,000 フィート(約 9〜12 km)を流れる強い西風がジェット気流です。南北の気温の差が大きくなる冬には、ジェット気流が強まります。
その影響は、飛行機の時刻表に表れます。東京航空地方気象台によると、冬の国内線では、東京から福岡へは約 2 時間かかるのに、福岡から東京へは約 1 時間 30 分です。東へ向かう便は追い風に乗り、西へ向かう便は向かい風を受けるからです。地学では、高層天気図で偏西風の蛇行を読み、地上の高気圧や低気圧との関係も考えます。
地球をめぐる風は熱を運び、私たちの移動の時間まで変えています。
図解冬の時刻表を、偏西風で読む
- 1上空 9〜12 km あたりを強い西風(ジェット気流)が吹く
- 2東京から福岡へ(西向き)は向かい風を受ける
- 3福岡から東京へ(東向き)は追い風に乗る

04
海の動き: 黒潮は 1 秒に 5,000 万トンもの水を運ぶ
海にも大きな流れがあります。気象庁によると、黒潮は東シナ海を北上し、九州の南から太平洋に入り、日本の南岸に沿って流れる海流です。速い所では毎秒 2 m 以上、幅は 100 km にも及び、運ぶ水の量は毎秒 5,000 万トンにも達します。暖かい水を北へ運び、熱を低緯度から高緯度へ届けています。
海は、表面近くと深い所とで水温が大きく違います。地学では、海水が冷えたり塩分が増えたりして重くなると深い所へ沈み、海全体をめぐる大きな流れ(熱塩循環)ができることも学びます。表面の海流と深い所の流れが、地球全体の熱を運んでいるのです。
地学では、潮の満ち引き(潮汐)も学びます。気象庁によると、多くの場所では 1 日に 2 回ずつ満潮と干潮があり、その時刻は毎日約 50 分ずつ遅れます。月が約 1 か月かけて地球のまわりを回っているためです。月と太陽が一直線に並ぶ新月と満月のころは大潮、直角の向きになる上弦と下弦のころは小潮になります。
潮の満ち引きは、地球の回転にもブレーキをかけています。産業技術総合研究所の地質標本館によると、約 8 億 5 千万年前のストロマトライトのしま模様から求めた 1 日の長さは、約 20.1 時間でした。地球の自転は、少しずつ遅くなってきたのです。
海流と潮汐は熱を運び、地球の 1 日の長さまで変えてきました。
図解大潮と小潮
大潮
- 新月と満月のころ
- 月と太陽が一直線に並ぶ
- 満潮と干潮の差が大きい
小潮
- 上弦と下弦の月のころ
- 月と太陽が直角の向きになる
- 満潮と干潮の差が小さい


05
大学では: 気象学・海洋学で、空と海を計算する
大学の地球惑星科学科や、理学部・工学部の関連する学科では、気象学や海洋学、気候学を学びます。大気や海の動きを物理の式で表し、コンピュータで計算する数値シミュレーションも学びます。観測船に乗ったり、気象観測の機器を扱ったりする実習がある大学もあります。授業の内容は大学によって異なります。
卒業後は、気象庁や気象会社での予報、海洋の研究機関、防災や航空の仕事などにつながります。気象予報士の試験には受験資格の制限がなく、高校生でも受けられます。まずは毎日、空の写真とひまわりの画像を見比べるところから始めてみてください。
高校生のうちに試せること
ひまわりの画像を、毎日同じ時刻に見る
気象庁のサイトでは、気象衛星ひまわりの画像を見られます。1 週間、毎日同じ時刻の画像を保存して並べ、雲が西から東へ動いていく様子や、夏の積乱雲の広がり方を確かめましょう。
気象庁「気象衛星」ペットボトルの中に、雲をつくる
炭酸飲料用のペットボトルに少しの水と線香の煙を入れ、ふたを閉めて強く押してから、手をぱっと離しましょう。中の空気がふくらんで温度が下がり、白い雲ができます。空気が上昇して雲ができるしくみのモデルです。火は大人と一緒に扱ってください。
海面水温の地図で、黒潮を探す
気象庁の「日別海面水温」で、日本の南の海を表示しましょう。暖かい水が帯のように日本の南岸に沿って伸びているのが、黒潮の流れです。夏と冬の図を比べてみてください。
気象庁「日別海面水温」
「大気と海洋」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 62 件から探せます。
環境・防災教育研究室
横浜国立大学(神奈川県)
都市科学部 環境リスク共生学科・防災教育・気候変動教育・タキナナ アヌアンタエカ 助教
南太平洋の気候変動教育が地域の耐性に与える影響を調べる。
大気物理化学
筑波大学(茨城県)
物理化学
エアロゾルや雲粒、水の界面で起こる物理化学過程を研究する。

大気科学
岡山大学(岡山県)
環境生命自然科学研究科 地球環境生命科学 地球科学・気象学・気候学・野沢 徹 教授
数値シミュレーションと観測データを使い、異常気象や気候変動の仕組みを研究する。

大気・熱環境工学分野
京都大学(京都府)
工学研究科都市環境工学専攻・大気・熱環境工学
大気流体力学
九州大学(福岡県)
流体圏・宇宙圏科学・中島 健介 准教授
中層大気や惑星大気など地球流体の力学を研究する。
大気水圏科学講座
名古屋大学(愛知県)
地球惑星科学
よくある質問
気象予報士の試験では、地学の知識を使いますか?
使います。試験を行う気象業務支援センターによると、学科試験の科目には「大気の構造」「降水過程」「大気の力学」などがあり、地学で学ぶ内容がそのまま土台になります。受験資格に関する制限はなく、高校生でも受けられます。
天気予報が外れることがあるのはなぜですか?
大気の動きは複雑で、観測にも計算にも限界があるためです。とくに積乱雲は、短い時間で発生して発達します。気象庁も、線状降水帯の発生のしくみには分かっていない点が多いとして、観測と研究を続けています。


