図 1 地学の広がり地学の広がり 5
地球環境と防災
地球温暖化やエルニーニョ現象のように地球規模で起こる変化と、日本の気象・地震・火山の災害、そして大地の恵みを学ぶ分野です。観測データから変化を読み取り、地域の備えを考えます。

ひとことで言うと
台所の火は、料理にも火事にもなる
コンロの火は、おいしい料理をつくる一方で、使い方を誤ると火事にもなります。大地や空も同じで、火山の熱は温泉を生み、雨は水の恵みにもなります。しくみを知って備えておくと、災いを小さくして恵みを生かせます。

01
地球温暖化: 岩手県の綾里で測る二酸化炭素は、37 年で 2 割増えた
地学基礎では、地球温暖化やオゾン層の破壊、エルニーニョ現象などを、データにもとづいて学びます。気象庁は、岩手県大船渡市の綾里で、1987 年から大気中の二酸化炭素の濃度を測っています。1987 年の年平均は 351.5 ppm、2024 年は 427.9 ppm でした。37 年で約 76 ppm、およそ 2 割増えたことになります。
グラフをよく見ると、毎年、夏に下がり、冬から春に上がる、のこぎりの歯のような形をしています。夏は植物の光合成が盛んで二酸化炭素が吸収され、冬は呼吸や分解のほうが上回るためです。世界の平均濃度も、2024 年は 423.9 ppm で、前の年より 3.5 ppm 増えました。
気温も上がっています。気象庁によると、日本の年平均気温は、1898 年から 2025 年までに 100 年あたり 1.44℃ の割合で上昇しました。これまでで最も高かったのは 2024 年で、2023 年、2025 年が続きます。学習指導要領の解説は、変化には人間活動によるものと自然の変動によるものがあり、予測には不確実性や限界があることも理解するよう求めています。
長く測り続けた記録が、地球の変化を確かめる証拠になります。
図解綾里の二酸化炭素のグラフを読む
- 1差は 427.9 − 351.5 = 76.4 ppm
- 276.4 ÷ 351.5 ≒ 0.22
- 3毎年、夏に下がり冬から春に上がる

02
エルニーニョ現象: 遠い太平洋の海の温度が、日本の夏を変える
気象庁によると、エルニーニョ現象は、太平洋の赤道付近の日付変更線あたりから南米の沿岸にかけて、海面の水温が平年より高い状態が 1 年ほど続く現象です。ふだんこの海域では東風(貿易風)が吹いていますが、エルニーニョ現象のときは東風が弱まります。反対に、同じ海域の水温が低い状態が続くのがラニーニャ現象です。
影響は日本にも届きます。エルニーニョ現象のときは、西太平洋の熱帯で海面水温が低くなり、フィリピン付近の積乱雲の活動が弱まります。すると、夏の太平洋高気圧が本州のほうへ張り出しにくくなります。気象庁の統計では、エルニーニョ現象の夏は、西日本で気温が低めになりやすい傾向があります。冬は、西日本で平年並か高めになりやすい傾向です。
ただし、傾向がいつも表れるとは限りません。2023 年は春からエルニーニョ現象が発生していたとみられますが、夏の日本の平均気温は平年より 1.76℃ 高くなりました。2026 年も春から発生しているとみられ、夏の平均気温は平年より 1.02℃ 高く、1898 年以降で 5 番目の高さでした。気象庁は、インド洋や西太平洋の熱帯の海面水温の影響も合わせて監視しています。
遠い海の変化と日本の天候は、大気の流れでつながっています。
図解エルニーニョ現象とラニーニャ現象
エルニーニョ現象
- 赤道の太平洋(中部〜南米沖)で水温が高い
- 東風(貿易風)が弱まる
- 日本の夏: 西日本で低めの傾向
ラニーニャ現象
- 同じ海域で水温が低い
- 東風(貿易風)が強まる
- 日本の夏: 北日本で高めの傾向

03
災害の確率を読む: 30 年で 26% は、およそ 100 年に 1 回
地学基礎では、日本に見られる気象災害や、地震・火山の災害、そして自然災害の予測と防災にも触れます。予測の情報には、確率で示されるものがあります。その代表が、地震調査研究推進本部(地震本部)がつくる「全国地震動予測地図」です。
この地図は、今後 30 年以内に、ある地点が強い揺れに見舞われる確率を色分けしたものです。地震本部の説明では、30 年の確率が 3%、6%、26% であることは、ごく大まかに、それぞれ約 1,000 年、約 500 年、約 100 年に 1 回程度の揺れにあたります。26% と聞くと低く感じるかもしれませんが、およそ 100 年に 1 回です。一生のうちに出会っても不思議ではない頻度です。
大雨のときは、気象庁の「キキクル(危険度分布)」で、土砂災害や浸水、洪水の危険度が高まっている場所を地図で確かめられます。数字や色の意味を前もって知っておくと、情報を見たときに落ち着いて判断できます。
確率の数字は、年数に直すと身近な備えに結び付けやすくなります。
図解30 年の確率を、年数に直す(地震本部の目安)
- 10.1%約 3 万年に 1 回程度
- 23%約 1,000 年に 1 回程度
- 36%約 500 年に 1 回程度
- 426%約 100 年に 1 回程度

04
有珠山: 噴火の前ぶれをとらえて逃げ、温泉の恵みを受け取る
北海道の有珠山は、くり返し噴火してきた火山です。内閣府の資料によると、1910 年の噴火の前には地震が続き、室蘭警察署長の飯田誠一が、噴火の 2 日前に避難を勧め、前日には約 12 km の範囲に避難を命じました。噴火のあと、湖岸に温泉がわき出し、今の洞爺湖温泉の始まりになりました。
1943 年の末から始まった活動では、麦畑だった土地が盛り上がり、1945 年には海抜 406.9 m の昭和新山が生まれました。戦争中で報道が制限される中、壮瞥郵便局長の三松正夫が、山が育っていく様子を記録し続けました。その記録「ミマツダイヤグラム」は、世界的に高く評価されています。
2000 年 3 月にも、火山性の地震が増えたあと、31 日に噴火が始まりました。気象庁によると、噴火の前に迅速な避難が行われたため、人的被害はありませんでした。洞爺湖有珠山は、噴火の跡や昭和新山、約 10 万年前の大噴火でできた洞爺湖をめぐる地域として、2009 年に日本で初めて世界ジオパークに認定された 3 地域の 1 つです。
火山の観測と地域の備えが、災害を小さくし、恵みを生かす力になります。
図解有珠山と人々の 100 年
- 11910 年前ぶれの地震で避難・温泉がわく
- 21943〜45 年麦畑が盛り上がり昭和新山が生まれる
- 32000 年噴火の前に避難・人的被害なし
- 42009 年世界ジオパークに認定


05
大学では: 地球のしくみと社会の備えを、両方から学ぶ
地球環境や防災は、理学と工学、社会の学問が重なる分野です。大学の地球惑星科学科などでは気候や火山、地震のしくみを、工学部の土木や建築の学科では災害に強いまちづくりを学びます。環境や防災を名前に掲げる学部・学科もあります。学べる内容は大学によって異なります。
卒業後は、気象庁や自治体の防災の担当、研究所、環境や建設の会社、ジオパークでの案内や教育などにつながります。災害の話は怖く感じるかもしれません。まずは毎日の気温や雨の記録を見て、いつもとの違いに気づくところから始めてください。
高校生のうちに試せること
エルニーニョ監視速報を、毎月読む
気象庁は、太平洋の赤道付近の海の状態と今後の見通しを「エルニーニョ監視速報」として、毎月 10 日ごろに発表しています。数か月続けて読み、海面水温の変化と、その季節の日本の天候を比べてみましょう。
気象庁「エルニーニョ監視速報」雨の日に、キキクルを開いてみる
気象庁の「キキクル(危険度分布)」では、土砂災害や浸水、洪水の危険度を色分けして地図に示しています。雨の日に家や学校のまわりを開き、色が変わっていく様子を確かめましょう。
気象庁「キキクル(危険度分布)」綾里の二酸化炭素のグラフを、自分で描く
気象庁のサイトで、綾里・南鳥島・与那国島の二酸化炭素濃度の年平均値を見られます。綾里の値を 5 年ごとに書き写して折れ線グラフにし、増え方が速くなっているか、ゆっくりになっているかを確かめましょう。
気象庁「大気中二酸化炭素濃度の観測結果(年平均値)」
「地球環境と防災」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 118 件から探せます。

地球惑星内部物理学
岡山大学(岡山県)
環境生命自然科学研究科 地球環境生命科学 地球科学・高圧地球科学・寺﨑 英紀 教授
高温高圧の実験装置で地球や惑星の内部環境を再現し、構成物質の構造や性質を調べる。

気候変動部門
千葉大学(千葉県)
環境リモートセンシング研究センター・気候変動・竹内 望 教授
大気・陸面・雪氷・生物圏の相互作用から、過去から未来の気候システムの変化を解明する。

地球環境研究室
東京科学大学(東京都)
経営工学
地球環境システム講座
名古屋大学(愛知県)
地球惑星科学
危機管理情報システム分野
京都大学(京都府)
情報学研究科(協力講座)・地域・防災情報システム学・畑山 満則 教授
建築防災学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 建築学プログラム・建築学・三浦 弘之 教授
地震被害想定、強震動予測、地盤震動特性評価などを研究している。

国立研究開発法人防災科学技術研究所
茨城県
大学生向け研究者向け
研究機関
地震・火山・豪雨・雪氷などの災害の予測と被害の軽減を研究する機関。

防災ボランティア団体KPAD
高知工科大学(高知県)
防災ボランティア
2013年設立。

早大防災教育支援会 WASEND
早稲田大学(東京都)
ボランティア
学生と防災ラボ
信州大学(長野県)
上田キャンパス・防災
防災ボランティア
神奈川大学(神奈川県)
横浜キャンパス・ボランティア
2023年創立。
防災ボランティアERSU
帝京大学(東京都)
宇都宮キャンパス・防災
よくある質問
地球温暖化の予測は、どれくらい確かなのですか?
気温や二酸化炭素の濃度が上がっていることは、長年の観測データで確かめられています。一方で、将来の予測には幅があります。学習指導要領の解説も、変化には人間活動によるものと自然の変動によるものがあり、予測には不確実性や限界があると理解することを大切にしています。
防災を学ぶと、どんな場面で役に立ちますか?
大雨や地震の情報を見たときに、その意味を理解して落ち着いて行動できます。地形や地層の成り立ちを知っていると、ハザードマップに描かれた危険の理由も読み取れます。家族や地域の備えを考えるときにも生かせます。
