図 1 地学の広がり地学の広がり 4
宇宙の構造
太陽系の天体と惑星の動き、太陽の活動、恒星の一生、銀河と膨張する宇宙を学ぶ分野です。惑星の距離や星の色、銀河の距離と速さのデータから、手の届かない宇宙の姿を推理します。

ひとことで言うと
熱した鉄の色で、温度が分かる
鉄を熱していくと、暗い赤から明るいオレンジ、さらに白っぽい色へと変わっていきます。星も同じように、色を見ると表面の温度が分かります。手が届かない天体でも、光をよく調べれば、温度や成分、動きまで読み取れます。

01
惑星の動き: 木星は 1 周に約 12 年。距離から周期が分かる
地学では、太陽系の惑星や衛星、小惑星、彗星などの特徴を、探査機や大型望遠鏡の成果から学びます。そのうえで、惑星がどのように動くのかを調べます。ここで登場するのが、ケプラーの法則です。
ケプラーの法則は 3 つあります。惑星は太陽を 1 つの焦点とする楕円の上を回ること。太陽に近い所では速く、遠い所ではゆっくり動くこと。そして、公転周期の 2 乗が、太陽からの平均距離の 3 乗に比例することです。この発見は、のちのニュートンの万有引力の法則につながりました。
NASA の資料の値で計算すると、木星の太陽からの距離は地球の約 5.2 倍です。地球の距離を 1、公転周期を 1 年とします。5.2 を 3 回かけると約 141 で、2 回かけて 141 になる数は約 11.9 です。つまり木星は約 11.9 年で太陽を 1 周すると計算できます。NASA の値は約 4,331 日、約 11.86 年です。
夜空の惑星は、星座の間を東へ進んだり、ときどき西へ戻ったりして見えます。この動き(視運動)も、地球と惑星がそれぞれ太陽のまわりを回っていると考えると説明できます。
惑星の距離と周期の間には、1 本の式で表せる規則があります。
図解ケプラーの第三法則で、木星の 1 年を求める
- 15.2 × 5.2 × 5.2 ≒ 141
- 22 回かけて 141 になる数を探す: 11.9 × 11.9 ≒ 141
- 3木星の公転周期は約 11.9 年

02
太陽の活動: 黒点の数は、約 11 年ごとに増えたり減ったりする
太陽は、中心部で水素がヘリウムに変わる核融合によって、エネルギーを生み出しています。表面には、黒点やプロミネンス、フレアなどの現象が見られます。地学では、太陽の光をスペクトルに分け、暗い線(吸収線)から太陽にどんな元素があるかを調べる方法も学びます。
大阪市立科学館の解説によると、黒点が黒く見えるのは、まわりより温度が低くて暗いためです。強い磁場が、太陽の中から熱を運ぶ対流をじゃまして、温度が下がっています。黒点のまわりで起きる爆発がフレアで、そのエネルギーは、わずか数分のうちに日本全体で 1 年に使う電力の 100 万年分にもなります。
黒点の数を記録していくと、およそ 11 年ごとに増えたり減ったりしています。ただし、なぜ 11 年なのかは、今も分かっていません。2024 年は太陽の活動が活発な年でした。フレアの影響で通信機器に障害が出たり、人工衛星が壊れたりすることもあり、太陽の観測は暮らしを守ることにもつながっています。
太陽の表面の変化は、地球の暮らしにも影響します。
図解黒点の数の移り変わり(約 11 年)
- 1黒点が少ない太陽の活動が静かな時期
- 2黒点が増えるフレアが起こりやすくなる
- 3黒点が多い活動が活発(2024 年など)
- 4黒点が減る再び静かな時期へ


03
恒星の明るさと一生: 暗くなったベテルギウスの温度を測る
恒星は、遠すぎて表面を近くで調べることができません。そこで地学では、星の光をスペクトルに分けて、表面の温度や星の種類を調べます。星の色も、表面の温度を表す手がかりです。光を調べると、星の明るさが変わった理由まで推理できます。
ベテルギウスは、2019 年 10 月から急に暗くなり、ふだんの約 40% の明るさまで落ちました。星の表面が冷えたのか、ちりが光をさえぎったのか。アメリカのワシントン大学などのチームは、2020 年 2 月の光から表面の温度を約 3,325℃ と求めました。2004 年より 50〜100℃ 低いだけで、冷えただけでは説明できず、ちりが光をさえぎったという考えを支える結果でした。
地学では、たくさんの星の表面の温度と明るさをグラフにした HR 図を読みます。星は、主系列星、赤色巨星、白色矮星の 3 つのグループに大きく分かれます。質量が大きく明るい星ほど寿命が短く、質量によって星の最期の姿や、つくられる元素も変わります。
星の光をくわしく調べると、温度の変化から星の一生まで読み取れます。
図解ベテルギウスが暗くなった理由を調べる
- 1考え 1: 星の表面が冷えて暗くなった
- 2考え 2: 星から出たちりが光をさえぎった
- 32020 年 2 月の光から表面の温度を求める: 約 3,325℃


04
膨張する宇宙: 遠い銀河ほど、速く遠ざかっている
太陽系は、たくさんの恒星やガス、ちりが集まった銀河系(天の川銀河)の中にあります。宇宙には、渦巻きの形や楕円の形など、さまざまな銀河があります。銀河は集まって銀河団をつくり、さらに大きな宇宙の大規模構造をつくっています。銀河までの距離は、明るさが分かっている変光星や超新星を目印にして求めます。
遠い銀河の光を調べると、波長が長いほうへずれていて(赤方偏移)、遠い銀河ほど速く遠ざかっていることが分かります。アメリカのハッブルは、1929 年の論文でこの関係を示しました。実は、ベルギーのルメートルが 1927 年にフランス語で発表した論文で、この関係を先に導いていました。
国際天文学連合(IAU)は 2018 年 10 月、会員による電子投票で、宇宙の膨張を表すこの法則を「ハッブル=ルメートルの法則」と呼ぶよう勧めることを決めました。賛成は 78% でした。高校の教科書では「ハッブルの法則」と書かれていることもあります。地学では、宇宙マイクロ波背景放射など、宇宙がビッグバンで始まった証拠も学びます。
銀河の距離と速さのグラフから、宇宙が膨らんでいることが読み取れます。
図解膨張する宇宙が分かるまで
- 11927 年ルメートルが距離と速さの関係を導く
- 21929 年ハッブルが観測から関係を示す
- 32018 年IAU が新しい名前を勧める
- 4高校の地学銀河のデータでグラフをつくる


05
大学では: 天文学・惑星科学で、データから宇宙を読む
大学では、理学部の天文学科や物理学科、地球惑星科学科などで、天文学や宇宙物理学、惑星科学を学びます。望遠鏡の観測データや探査機のデータを、プログラミングで解析する授業も多くあります。どの学科でどこまで学べるかは、大学によって異なります。
卒業後は、研究者のほか、科学館やプラネタリウムの解説員、人工衛星や観測機器の開発、データを扱う仕事などにつながります。英語の論文や物理の式も、少しずつ慣れていけば大丈夫です。まずは、星の色や黒点の数を自分で記録してみることから始めてください。
高校生のうちに試せること
今夜見える惑星を調べて、位置を記録する
国立天文台 暦計算室の「今日のほしぞら」では、各地の星空で惑星や星座がどう見えるかを調べられます。見える惑星を探して数日おきに位置を記録し、星座の間をどう動くか確かめましょう。
国立天文台 暦計算室宇宙天気予報で、太陽の今日の様子を見る
情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気予報のサイトでは、太陽の黒点やフレア、地球のまわりの宇宙環境の様子を見られます。黒点の情報を 1 か月記録して、変化を確かめましょう。太陽は、望遠鏡でも肉眼でも直接見ないでください。
情報通信研究機構「宇宙天気予報」風船で、膨張する宇宙を確かめる
ふくらませる前の風船に、ペンで点をいくつか打ちましょう。ふくらませながら点と点の間の長さを測ると、遠い点ほど大きく離れていきます。どの点から見ても、ほかの点が遠ざかっていくことを確かめてください。
「宇宙の構造」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 214 件から探せます。
理論宇宙物理学(TA研)
名古屋大学(愛知県)
天文・宇宙物理学
宇宙物理学研究室
千葉大学(千葉県)
理学部 物理学科・宇宙物理学・大栗 真宗 教授
大規模構造から中性子星合体まで、さまざまな宇宙現象を理論とシミュレーションで研究する。
宇宙論(C研)
名古屋大学(愛知県)
天文・宇宙物理学
複雑性科学理論(ΣT研)
名古屋大学(愛知県)
天文・宇宙物理学
宇宙物理学 赤外線グループ(Uir研)
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天文・宇宙物理学
一般相対論・量子宇宙論(QG研)
名古屋大学(愛知県)
素粒子・ハドロン物理学
よくある質問
天文学を学ぶには、物理と数学がどれくらい必要ですか?
大学の天文学や宇宙物理学では、物理と数学をたくさん使います。ただ、高校の物理や数学で学ぶ内容が、そのまま入口になります。ケプラーの法則のように、地学で学ぶ規則を自分で計算して確かめていくと、物理や数学が宇宙を調べる道具だと実感できます。
都会でも、天体観測はできますか?
できます。月や惑星、明るい星は、都会の明るい空でも見られます。星の色の違いや惑星の動きを記録するだけでも、立派な観測です。太陽の黒点は、望遠鏡に投影板を付け、紙に映して観察します。
出典
- 文部科学省「高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 理科編 理数編」
- NASA「Planetary Fact Sheet」
- 大阪市立科学館「太陽活動と磁場」(2024 年 7 月)
- University of Washington「Dimming Betelgeuse likely isn't cold, just dusty, new study shows」(2020 年 3 月 6 日)
- 国際天文学連合「Electronic IAU vote on a suggested renaming of the Hubble law」(2018 年 10 月 4 日)(投票の結果は同じ連合のサイトの 2018 年 10 月 29 日の発表)



