大学カタログ

図 1 国語の広がり国語の広がり 4

話す・書く・伝える

スピーチや面接、話し合い、レポート、企画書やメールなど、相手に伝わる言葉を組み立てる領域です。型を知り、書いたあとに見直す習慣をつけると、伝わり方がはっきり変わります。

教室の前でスピーチをする高校生、付箋を貼りながら話し合う高校生たち、原稿用紙に赤ペンで書き直しを入れる高校生

ひとことで言うと

料理は、食べる人に合わせて盛り付ける

同じ材料でも、小さな子ども向けとお客さん向けでは、切り方や盛り付けを変えます。言葉も同じです。聞き手や読み手が誰で、何を知りたいのかを考えて、話す順番や言葉を選ぶのが「伝える」力です。

01

スピーチと面接: 聞き手が知りたいことから組み立てる

話す・書くを中心に学ぶ選択科目が「国語表現」です。標準は 4 単位です。学習指導要領は「話すこと・聞くこと」に 40〜50 単位時間程度、「書くこと」に 90〜100 単位時間程度を充てるとしています。全員が学ぶ「現代の国語」でも、書くことと話すことが授業の中心です。

国語表現の解説は、スピーチでは、多様な考えを持つ聞き手が何を求め、何を知りたがっているかを想定するよう求めています。そのうえで、主張の根拠を箇条に分けて示したり、結論を簡潔にまとめて話したりする工夫を挙げています。

面接では、これに加えて、聞き手が興味を持つ自分のことを、具体的なエピソードで伝える工夫が必要だとしています。「責任感があります」と言うより、部活で何をして、何が変わったかを 1 つ話すほうが伝わります。解説は、面接担当者の立場にもなってみる模擬面接の学習も例に挙げています。

聞き手が知りたいことを先に考えると、話す順番が決まります。

図解1 分間スピーチの組み立て(例)

  1. 1結論最初に、言いたいことを 1 文で
  2. 2根拠理由を 2〜3 個、箇条に分けて
  3. 3エピソード自分が見たこと・したことを 1 つ
  4. 4結論最後にもう一度、短く言い直す

02

話し合いと討論: 広げる時間と、決める時間

話し合いには、目的に合わせた種類があります。解説によると、意見を出し合って発想を広げるのが、ブレーンストーミングやワールド・カフェです。ブレーンストーミングでは、出された意見を批判しない、たくさんの意見を出すことを目標にする、といった決まりを先に確かめます。

対立する立場に分かれて論じ合うのが討論です。ディベートは、肯定・否定などの立場に分かれ、決まった手順で論じ合います。解説は、現実の社会には肯定か否定かだけでは解決できない問題もあるとして、討論で見えた問題点を新しい問いに生かすよう求めています。

問題を解決し、結論を出すための話し合いが会議です。参加者の利害が関わるため、司会や記録の役割を決め、手順に沿って進めます。今は広げる時間か、決める時間かを全員でそろえるだけで、話し合いはぐっと進みやすくなります。

話し合いの目的を先にそろえると、意見の出し方と結論の出し方が決まります。

図解話し合いの 3 つの種類

広げる

  • ブレーンストーミング
  • 出た意見を批判しない
  • 数を多く出すのが目標

論じ合う

  • ディベート・パネル討論
  • 立場に分かれて論じる
  • 見えた問題点を次に生かす

決める

  • 会議
  • 司会と記録の役を決める
  • 手順に沿って結論を出す

03

レポートと論述: 事実と意見を分け、推敲する

レポートや小論文で大事なのは、事実と意見を分けて書くことです。物理学者の木下是雄が 1981 年に出した『理科系の作文技術』は、この区別や、大事なことを先に書く「重点先行主義」を説いた本です。2018 年の出版の案内では、累計 100 万部を超える大ロングセラーと紹介されています。

「部員が 3 人減った」は事実で、「部の雰囲気が悪くなった」は意見です。意見を書くときは、それを支える事実を添えます。解説によると、学術論文には要旨・目的・方法・結果・考察・結論のような決まった型があります。「結果」に「考察」を混ぜないことも大切です。

書き終えたら推敲します。推敲という言葉は、唐の詩人賈島の話から生まれました。賈島は「僧は推す月下の門」の「推す」を「敲く」に変えるべきか迷い、ろばの上で動作をまねていました。そのうちに、都の長官だった韓愈の行列にぶつかります。事情を聞いた韓愈は、「敲く」がよいと答えました。

1 字を選ぶために迷うことが、推敲の本来の姿です。声に出して読み返し、友達に読んでもらって分かりにくい所を聞くと、自分では気づかない直す所が見つかります。

事実と意見を分けて書き、声に出して推敲すると、文章の説得力が上がります。

図解事実と意見を分ける(例)

事実

  • 部員が 3 人減った
  • 練習は週 3 回
  • だれが確かめても同じ

意見

  • 部の雰囲気が悪くなった
  • 練習を増やすべきだ
  • 書き手の判断や考え
ます目の入った古い原稿用紙に、縦書きの手書きの文字が並び、ところどころに赤い字の書き込みがある
夏目漱石『それから』(1909 年)の原稿の一部。ます目の入った原稿用紙に手で書かれ、赤い字の書き込みも見えます。写真: 作者不詳(Public domain・Wikimedia Commons)

04

企画書と案内文: 「早めに」ではなく「5 月 14 日正午まで」

企画書や報告書、手紙やメールは、実用的な文章です。解説によると、企画書は「題目」「背景」「目的」「内容」「日程」などの項目を立ててまとめることが多いとされます。手紙には、前文・主文・末文・後付けといった決まった形があります。

国の文書の書き方を示した、文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022 年)は、高校生にも役立つ手引きです。結論は早めに示し、続けて理由や詳細を説明する。一文は短くし、50〜60 字ほどになったら読みにくくなっていないか意識する。三つ以上の情報を並べるときは箇条書を使う、といった工夫が並びます。

あいまいな言葉を具体的にする例もあります。「早めに」は「1 週間以内(5 月 14 日正午まで)に」、「幾つか指摘する」は「3 点指摘する」と書き換えます。読み手が迷わず動ける言葉を選ぶのが、実用的な文章のこつです。

企画書には、図や写真を添えることもあります。解説は、概念図や完成予想図、進行計画表を添えると企画が伝わりやすくなる一方、図表を作ること自体が目的にならないよう注意しています。

項目を立て、結論を先に、期限や数を具体的に書くと、相手は迷わず動けます。

図解文化祭のクラス企画書(例)

入力クラスで「昔の遊び体験コーナー」を出したい
  1. 1題目: 2 年 3 組「昔の遊び体験コーナー」
  2. 2背景と目的: 地域の子どもと高校生が一緒に遊べる場をつくる
  3. 3内容: けん玉・こま・めんこの 3 つのブース
  4. 4日程: 準備は 9 月 1〜12 日、本番は 9 月 13・14 日
結果項目ごとに見出しがあり、先生や実行委員が判断しやすい企画書

05

大学では: レポートと発表が学びの中心になる

大学では、多くの授業でレポートや発表が成績の大きな部分を占めます。1 年生向けに、レポートの書き方や発表のしかたを学ぶ授業を開いている大学もあります。科目の名前や内容は、大学によって異なります。

伝える力は、どの仕事でも求められます。企画書をつくる会社員、取材した出来事を記事にする記者、患者に病気のことを説明する医師、授業をする先生。国語表現で学ぶ型は、そのまま仕事の土台になります。

人前で話すのが苦手でも大丈夫です。最初は、結論と理由を 1 つずつ、30 秒で話す練習から始めてください。録音して聞き直すだけでも、話す速さや言葉のくせに気づけます。

クイズ伝える力のクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1「公用文作成の考え方」が、読みにくくないか意識するとよいとする一文の長さは?

  2. Q2「推敲」の元になった話で、賈島が迷った 2 つの字は?

  3. Q3次のうち、「意見」ではなく「事実」にあたる文は?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • 30 秒スピーチを録音する

    「最近うれしかったこと」など身近な題で、結論・理由・エピソード・結論の順に 30 秒で話し、スマートフォンで録音しましょう。聞き直して、最初の 1 文で言いたいことが伝わったかを確かめます。

  • 面接官の役もやってみる

    友達と 2 人組になり、面接を受ける役と面接官の役を交代で演じましょう。面接官の側に回ると、具体的なエピソードがある答えのほうが印象に残ることが実感できます。

  • 「公用文作成の考え方」でお知らせを直す

    部活や委員会のお知らせを 1 つ選び、「公用文作成の考え方」の工夫で書き直しましょう。結論を先に置き、「早めに」などのあいまいな言葉を日付や数に変え、長い文を区切ります。

    文化審議会「公用文作成の考え方(建議)」(PDF)

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よくある質問

小論文と作文は、どう違うのですか?

作文は、体験や気持ちを自由に書く文章です。小論文は、問いに対して自分の意見を示し、根拠を挙げて筋道立てて論じる文章です。事実と意見を分け、結論と理由をはっきり書くことが、作文以上に求められます。

人前で話すと緊張してしまいます。

緊張するのは自然なことです。話す内容を「結論・理由・エピソード」の 3 つのメモにしておくと、頭が真っ白になっても戻る場所ができます。少人数の前で何度か練習してから本番に臨むと、少しずつ慣れていきます。