図 2 高校 3 年間の流れ()高校 3 年間の流れ 1
高 1: 言葉の土台をつくる
高校の国語は、全員が学ぶ「現代の国語」と「言語文化」の 2 つの科目から始まります。スピーチや報告書など社会で使う言葉と、古文・漢文から近代の文学まで受け継がれてきた言葉の文化を、並行して身につける 1 年です。

ひとことで言うと
旅の前に、地図とガイドブックをそろえる
現代の国語は、目的地まで迷わずにたどり着くための地図のような科目です。言語文化は、その土地の歴史や名所を教えてくれるガイドブックです。高 1 は、この 2 冊を手に入れて使い方に慣れる 1 年です。

01
高 1 の科目: 現代の国語と言語文化
高校の国語で全員が学ぶのは、「現代の国語」と「言語文化」の 2 科目です。標準はどちらも 2 単位で、50 分の授業にすると 70 回分にあたります。今の学習指導要領は、2022 年 4 月以降に入学した高校生から使われています。
以前は「国語総合」(4 単位)という 1 つの科目でした。学習指導要領の解説は、2 つに分けた理由として、話合いや論述などの学習が十分でなかったことと、古典の学習で意欲が高まらないことを挙げています。
現代の国語は、実社会で使う言葉を学ぶ科目です。授業時間の目安は、書くことが 30〜40 単位時間、話すこと・聞くことが 20〜30 単位時間で、読むことは 10〜20 単位時間です。読む教材は、評論や解説文などの論理的な文章と、報告書や案内のような実用的な文章です。
言語文化は、上代から近現代まで受け継がれてきた言葉の文化を学ぶ科目です。古典を読むことに 40〜45 単位時間、近代以降の文章に 20 単位時間、書くことに 5〜10 単位時間を充てます。古文と漢文に加えて、日本人がつくった漢詩や漢文、近代の文語文も教材になります。
現代の国語は書く・話す時間が長く、言語文化は古典を読む時間が長い科目です。
図解高 1 で学ぶ 2 つの科目
現代の国語
- 標準 2 単位・全員が学ぶ
- 実社会で使う言葉を学ぶ
- 書くことの時間がいちばん長い
言語文化
- 標準 2 単位・全員が学ぶ
- 受け継がれた言葉の文化を学ぶ
- 古典を読む時間がいちばん長い

02
古文のきまり: 「ぬ」は「ない」か「た」か
中学 1 年では、音読に必要な文語のきまりや訓読の仕方を知り、古文や漢文を声に出して読みました。言語文化では、古典を読むために必要なきまりへ進みます。解説は、仮名遣いや活用の違い、主な助詞・助動詞の意味と用法、係り結び、敬語の大体を挙げています。
高 1 でつまずく人が多いのが、助動詞です。1212 年に鴨長明が書いた『方丈記』は、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」と始まります。「絶えず」「あらず」の「ず」は、打消の助動詞です。今の「思わず」「知らず知らず」にも、この「ず」が残っています。
やっかいなのは、この「ず」が「ぬ」の形にもなることです。完了の助動詞にも「ぬ」があり、こちらは「〜た」「〜てしまった」の意味です。見分ける手がかりは、すぐ前の語の形です。打消の「ぬ」は未然形に、完了の「ぬ」は連用形に付きます。
例えば「咲かぬ花」の「咲か」は未然形なので、「咲かない花」です。「花咲きぬ」の「咲き」は連用形なので、「花が咲いた」になります。解説は、文法だけの授業を長く続けることは望ましくないとしています。きまりは、作品を読みながら 1 つずつ確かめれば大丈夫です。
「ぬ」の意味は、すぐ前の語が未然形か連用形かで決まります。
図解「ぬ」を見分ける(例)
- 1「ぬ」のすぐ前の語を見る
- 2「咲か」は未然形 → 打消の「ず」
- 3「咲き」は連用形 → 完了の「ぬ」
- 4現代語に直して、意味が通るか確かめる

03
漢文のきまり: 返り点で読む「矛盾」の元の話
漢文は、もとは中国の文語文です。日本では、返り点や送り仮名を付けて、日本語の文として読んできました。これを訓読といいます。レ点はすぐ下の 1 字から上の 1 字へ返る印、一・二点は 2 字以上離れた字へ返る印です。
今も使う故事成語も、言語文化で学ぶ古典の表現の 1 つです。「矛盾」は、中国の思想書『韓非子』の「難一」という篇の話から生まれました。楚の国で盾と矛を売る人が、この盾はどんな物にも突き通されない、この矛はどんな物でも突き通す、と自慢します。
そこである人が「以子之矛陥子之楯、何如」と尋ねます。「以」に二点、「矛」に一点が付き、「子の矛を以て子の楯を陥さば何如」と読みます。あなたの矛であなたの楯を突いたらどうなるのか、という意味です。原文の「楯」は「盾」と同じ意味の字です。売り手は答えられませんでした。
『韓非子』では、この話は儒学者を批判するたとえとして使われています。2,000 年以上前の議論の言葉が、今は「つじつまが合わない」という意味の日常語になっているのです。
返り点は読む順番を示す印です。印のない字から読み、印に従って上へ返ります。
図解返り点で「矛盾」の一文を読む
- 1二点の「以」を飛ばし、「子之矛」を読む(子の矛を)
- 2一点の「矛」まで読んだら、二点の「以」へ返る(以て)
- 3「子之楯」も同じように読み、「陥」へ返る(子の楯を陥さば)
- 4最後に「何如」を読む

04
話す・書く: スピーチ、通知文、折句の短歌
現代の国語では、さまざまな文章を書きます。解説が挙げる例は、資料を引用して意見を論述する、手順書や紹介文を書く、案内文や通知文を書く、調べたことを報告書にまとめる、などです。解説は、キャッチフレーズや電子メールも実用的な文章に含めています。
通知文は、読む人が必要なことをすぐ見つけられるように書きます。部活の連絡なら「次の水曜日の練習は、体育館の点検のため中止します。」のように、日時・用件・理由を最初の 1 文にまとめます。代わりの予定や問い合わせ先は、その後に書き足します。
話す活動では、スピーチをして、聞き手が同意したり、質問したり、根拠を示して反論したりします。話合いの方法として、意見を批判せずに出し合うブレーンストーミングや、メンバーを入れかえながら話すワールド・カフェも紹介されています。
言語文化の書く活動では、和歌の技法を使って短歌や俳句をつくります。折句は、各句の頭に 1 字ずつ言葉を詠み込む技法です。『伊勢物語』で在原業平が詠んだ歌は、「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」です。この歌には、句の頭に「かきつばた」が隠れています。
通知文は、日時・用件・理由を最初の 1 文にまとめると伝わります。


05
高 1 の 1 週間: 書く・話す・読むを回す
現代の国語と言語文化を高 1 で 2 単位ずつ学ぶなら、国語の授業は週に 4 回ほどです。どの学年で何単位を学ぶかは、高校によって異なります。下の図は、高 1 の 1 週間の例です。
古文や漢文は、授業の前に本文を 1 回声に出して読んでおくと、授業で文法を確かめるときの手がかりが増えます。書いた通知文や報告書は、友だちと交換して読み合うと、分かりにくい箇所に気づけます。解説も、読み手からの助言を踏まえて、自分の文章の特長や課題を捉え直すことを求めています。
書いた文章は読み合うと、自分では気づけない分かりにくさが見えてきます。
図解高 1 の 1 週間(例)
- 月通知文を書く現代の国語・日時と用件を 1 文目に
- 火『方丈記』を読む言語文化・「ず」と「ぬ」を確かめる
- 水スピーチ現代の国語・聞き手は質問と反論
- 木「矛盾」を訓読言語文化・返り点で読む順番を確かめる
- 金読み合い書いた文章を交換して助言し合う
- 土・日折句をつくる好きな言葉を句の頭に置いて短歌に
高校生のうちに試せること
「さくらはな」で折句の短歌をつくる
「さ・く・ら・は・な」の 5 文字を、五・七・五・七・七の各句の頭に置いて、桜の短歌を 1 首つくりましょう。学習指導要領の解説にも、言語文化の活動の例として載っています。慣れたら、自分の名前や好きな言葉でも試してください。
文部科学省「高等学校学習指導要領解説 国語編」(PDF)教科書の「ぬ」を見分ける
教科書の古文から「ぬ」を 5 つ探し、すぐ前の語が未然形か連用形かを調べましょう。「ない」と訳すか「た」と訳すかを決めてから、現代語訳と照らし合わせてください。
故事成語の元の話を調べる
「矛盾」「蛇足」「五十歩百歩」など、ふだん使う故事成語を 3 つ選び、辞書で出典を調べましょう。元の話を読むと、言葉の意味がなぜそうなったのかが分かります。
学校の連絡を通知文に書き直す
部活や委員会の連絡を 1 つ選び、日時・用件・理由を最初の 1 文にまとめた通知文に書き直しましょう。友だちに読んでもらい、必要なことがすぐ見つかったかを聞いてください。
「高 1: 言葉の土台をつくる」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 237 件から探せます。
よくある質問
中学の古文がよく分からなかったのですが、大丈夫ですか?
大丈夫です。言語文化は、中学で学んだ音読や文語のきまりを踏まえて、古典を読むためのきまりを学ぶ科目です。解説も、文法だけを長く学ぶのではなく、作品を読みながらきまりを確かめることを求めています。まずは本文を声に出して読むことから始めてください。
現代の国語と言語文化は、どちらも全員が学ぶのですか?
どちらも全員が学ぶ共通必履修科目で、標準は 2 単位ずつです。以前の「国語総合」(4 単位)を、実社会の言葉を学ぶ科目と、受け継がれた言葉の文化を学ぶ科目の 2 つに分けました。
言語文化では、古文と漢文のどちらも学ぶのですか?
どちらも学びます。教材には、中国の古典だけでなく、日本人がつくった漢詩や漢文(日本漢文)や、近代の文語文も含まれます。近代以降の小説や評論も、言語文化で読む教材です。