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図 1 数学の広がり数学の広がり 3

微分と積分

変化の「その瞬間」の速さを求める微分と、細かく切って足し合わせる積分を学ぶ分野です。落ちるボールの速さ、箱がいちばん大きくなる切り方、電気の使用量、球の体積の公式まで、同じ考え方で計算できます。

落ちるボールをスマートフォンで撮る高校生、厚紙の四隅を切って箱を折る高校生、球の模型を薄い輪切りにして並べる高校生

ひとことで言うと

パラパラ漫画と、薄切りのハム

パラパラ漫画は、1 枚ずつの絵の少しの違いから動きが生まれます。微分は、ごく短い時間の変化から「その瞬間」の速さを求める道具です。反対に、薄く切ったハムを重ねると元の形に戻るように、積分は細かい部分を足し合わせて全体を求めます。

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微分: 「その瞬間」の速さを求める

駅と駅の間の平均の速さは、進んだ距離を時間で割れば求まります。では、車の速度計が示す「その瞬間」の速さは、どう考えればよいのでしょうか。0 秒で割ることはできないので、時間の幅をどんどん小さくして、平均の速さがどこに近づくかを調べます。これが数学 II で学ぶ微分の考え方です。

手を離したボールが t 秒間に落ちる距離は、空気の抵抗を考えなければ 4.9t² m です。2 秒後から 3 秒後までの平均の速さは秒速 24.5 m、2 秒後から 2.01 秒後までなら秒速 19.649 m です。幅を小さくするほど秒速 19.6 m に近づき、これが 2 秒後の瞬間の速さになります。

微分の計算の決まりを使うと、4.9t² を微分して 9.8t が得られます。t = 2 を入れると 19.6 となり、上の計算と一致します。数学 III では、三角関数や指数関数の微分も学び、速度や加速度を計算できるようになります。

微分は、時間の幅を限りなく小さくしたときの平均の速さです。

図解平均の速さを、瞬間の速さに近づける

  1. 12〜3 秒平均の速さは秒速 24.5 m
  2. 22〜2.1 秒平均の速さは秒速 20.09 m
  3. 32〜2.01 秒平均の速さは秒速 19.649 m
  4. 4幅を 0 に近づける2 秒後の瞬間の速さは秒速 19.6 m

02

微分で最大を探す: 箱がいちばん大きくなる切り方

微分すると、グラフの各点での傾きが分かります。山の頂上では、グラフは一瞬だけ水平になり、傾きが 0 になります。そこで傾きが 0 になる点を探すと、最大や最小の候補が見つかります。

1 辺 30 cm の正方形の厚紙の四隅から、1 辺 x cm の正方形を切り取り、折ってふたのない箱を作ります。容積は x(30 − 2x)² cm³ です。微分して傾きが 0 になる x を求めると 5 で、そのときの容積は 2,000 cm³、つまり 2 L です。4 cm で切っても 6 cm で切っても、2,000 cm³ には届きません。

微分の考え方を論文で初めて発表したのは、ドイツのライプニッツです。1684 年、ライプツィヒの学術誌に、「極大と極小のための新しい方法」で始まる題の論文を載せました。イギリスのニュートンも同じころに独自に微分積分を考えており、どちらが先かをめぐって、のちに激しい争いになりました。

最大・最小を求める計算は、材料をいちばん少なくする設計や、利益がいちばん大きくなる生産量を考える経済学、AI の学習にも使われています。「いちばんよい答え」を探すとき、微分は最初に頼る道具です。

傾きが 0 になる点を探すと、いちばんよい答えの候補が見つかります。

図解箱の容積がいちばん大きくなる切り方

入力1 辺 30 cm の厚紙の四隅を、1 辺 x cm の正方形で切り取って箱にする
  1. 1容積 x(30 − 2x)² を展開すると 4x³ − 120x² + 900x
  2. 2微分すると 12x² − 240x + 900 = 12(x − 5)(x − 15)
  3. 30 < x < 15 で傾きが 0 になるのは x = 5
  4. 4x = 5 の前後で、容積は増加から減少に変わる
結果5 cm 切り取ると、容積は最大の 2,000 cm³(2 L)
古いラテン語の印刷のページ。題の下に、文字と記号を組み合わせた式が並んでいる
1684 年に学術誌『アクタ・エルディトールム』に載った、ライプニッツの論文の最初のページ。微分の記号 d を使った計算の決まりが書かれています。写真: G. W. Leibniz(Public domain・Wikimedia Commons)

03

積分: グラフの面積が、進んだ距離や電気の量になる

積分は、細かく切って足し合わせる計算です。数学 II では、曲線と軸に囲まれた部分の面積を、積分で求めます。面積は図形だけの話ではありません。速さのグラフの面積は、進んだ距離を表します。

時速 36 km(秒速 10 m)で走る車が、一定の割合で減速して 2 秒で止まったとします。速さのグラフは高さ 10・底辺 2 の三角形になり、その面積の 10 m が、ブレーキをかけてから止まるまでに進んだ距離です。速さが一定でないときも、グラフの面積を積分で求めれば、進んだ距離が分かります。

家の電気の使用量も同じしくみです。電気料金のもとになる kWh(キロワット時)は、使った電力(kW)のグラフを、時間で積分した量です。1.2 kW のドライヤーを 10 分使うと、1.2 × 10 ÷ 60 で 0.2 kWh になります。

東京電力パワーグリッドによると、スマートメーターは 30 分ごとに電気の使用量を計測します。月に 1 回の検針で 1 か月分の合計を測っていた方法と比べ、時間を細かく区切って記録できます。細かい区切りの使用量を足し合わせると、1 日や 1 か月の合計になります。

「速さ × 時間」のような計算は、グラフの面積として積分で求められます。

図解グラフの面積が表すもの

速さのグラフ

  • 縦は速さ、横は時間
  • 面積は進んだ距離

電力のグラフ

  • 縦は電力(kW)、横は時間
  • 面積は電気の使用量(kWh)

水の流れのグラフ

  • 縦は 1 分あたりの水の量
  • 面積はたまった水の量

04

体積: 球の公式を自分で導く

中学で覚えた球の体積の公式、4/3πr³ はなぜ成り立つのでしょうか。数学 III の積分を使うと、自分の手で導けます。球を薄い輪切りにして、1 枚 1 枚を薄い円柱とみなし、その体積を足し合わせるのです。

半径 r の球を、中心から x の位置で切ると、切り口は半径 √(r² − x²) の円です。断面積 π(r² − x²) を、x = −r から r まで積分すると、4/3πr³ が出てきます。断面積を積分すると体積になるという考え方は、つぼやグラスのように、曲線を回してできる形の体積にも使えます。

輪切りの枚数を決めて、実際に計算することもできます。半径 10 cm の球を厚さ 1 cm の 20 枚に切り、それぞれを円柱として足すと約 4,194 cm³ です。正しい値の約 4,189 cm³ との差は 0.2% もありません。細かく切るほど正しい値に近づくことが、積分の考え方の核心です。

多くの大学では、1 年生で微分積分学を学び、極限の考え方から積分を定義し直します。物理学では運動の方程式を、経済学では費用や利益の変化を、情報学では AI の学習の計算を、微分積分で扱います。ものづくりの設計や、気象や金融の予測の仕事にも、この考え方がそのまま生きます。

クイズ微分と積分クイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q11 辺 30 cm の厚紙で作るふたのない箱。容積が最大になるのは、四隅を何 cm 切り取ったとき?

  2. Q2速さのグラフで、グラフと横軸に囲まれた部分の面積は何を表す?

  3. Q3微分の考え方を、論文で初めて発表した数学者は?

0 / 3 問に回答
夕暮れの街に並ぶ、緑色に塗られた大きな球形のガスタンク
横浜市西区にある、都市ガスをためる球形のガスホルダー。球の形の入れ物にどれだけ入るかも、球の体積の公式で計算できます。写真: IketaniDaisei(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • 落ちるボールを動画で調べる

    スマートフォンのスロー撮影で、手を離したボールが落ちる様子を、ものさしやメジャーを背景にして撮りましょう。コマ送りで位置を読み取り、短い時間ごとの平均の速さを計算すると、落ちるほど速くなる様子が数字で分かります。

  • 厚紙で箱を作って容積を比べる

    1 辺 30 cm の厚紙を 3 枚用意し、四隅を 3 cm、5 cm、8 cm で切り取って箱を作りましょう。米や砂を入れて量を比べると、5 cm の箱がいちばん多く入るはずです。計算では 1,728 cm³、2,000 cm³、1,568 cm³ になります。

  • 家の電気の使用量のグラフを見る

    電力会社の会員サイトやアプリでは、30 分ごとや 1 時間ごとの電気の使用量のグラフを見られることがあります。家の人と一緒に、1 日の合計が、細かい時間ごとの使用量の足し合わせになっていることを確かめましょう。

「微分と積分」に関連するコミュニティ

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よくある質問

数学 III を学ばないと、大学の微分積分についていけませんか?

多くの大学では、極限の考え方から微分積分を学び直します。数学 III を学んでいると計算に慣れている分だけ楽ですが、大学で身につけることもできます。入試で数学 III が必要かどうかは大学や学部によって異なるので、志望校の募集要項を確かめてください。

微分と積分は、どちらから学ぶのですか?

高校では、数学 II で微分を学んだあとに積分を学びます。積分は微分の逆の計算として導入され、面積を求める道具につながります。微分で「変化の速さ」、積分で「変化の積み重ね」を求める、と考えると関係がつかみやすくなります。