図 1 数学の広がり数学の広がり 5
応用: 数学と社会
数を 0 と 1 で表す工夫、ゲームやパズルの必勝法、つながりを表す図と数の表、社会のしくみを決める計算など、数学と人間の活動の関わりを学ぶ分野です。QR コードにも、選挙の議席の配り方にも、高校で学ぶ数学が使われています。

ひとことで言うと
ルールの裏の筋道が分かると、遊びが変わる
トランプやボードゲームは、ルールを知るだけでも遊べますが、勝ち方の筋道が分かるとぐっと面白くなります。数学と社会の単元は、遊びや身の回りのしくみの裏にある数学の筋道を見つけて、使いこなすための学びです。

01
整数と二進法: 片手で 31 まで数え、QR コードを読む
数学 A の「数学と人間の活動」では、整数の約数や倍数、ユークリッドの互除法、二進法などを学びます。二進法は、0 と 1 の 2 つの数字だけで数を表す方法です。右から 1、2、4、8、16 の位があり、10 進法の 13 は 8 + 4 + 1 なので 1101 と書きます。
片手の指 5 本を、伸ばすと 1、曲げると 0 として使うと、0 から 31 までの 32 通りを数えられます。両手の 10 本なら 2 の 10 乗の 1,024 通りで、0 から 1,023 までです。コンピュータは、電気のオンとオフをこの 0 と 1 にあてはめて、数も文字も画像も扱っています。
白と黒の点を並べた QR コードも、0 と 1 の並びで情報を表します。QR コードは 1994 年、デンソーウェーブ(当時はデンソーの一事業部)が発表しました。バーコードに入るのは英数字で 20 文字ほどでしたが、もっと多くの情報や漢字・カナを入れたいという声に応えて生まれました。
3 つの角にある四角い目印は、白と黒の幅の比が 1:1:3:1:1 になっています。開発チームは、チラシや雑誌、段ボールなどに印刷された絵や文字の白黒の比率を調べ上げ、印刷物でいちばん使われていない比率を選びました。まわりの絵や文字とまぎれずに、コードの位置を見つけやすくするためです。
0 と 1 の 2 つだけでも、位を使えばどんなに大きな数でも表せます。

02
ゲームとパズル: 必勝法は後ろから考える
学習指導要領の解説は、数学 A で数理的なゲームやパズルを扱う例を挙げています。江戸時代に吉田光由が著した『塵劫記』の「油分け算」、世界各地の三目並べ、魔方陣、ハノイの塔などです。遊びの中に、筋道を立てて考える数学が隠れています。
1627 年に初版が出た『塵劫記』は、そろばんの計算法や田畑の面積の求め方に加え、ねずみ算のような数学の遊びの問題も収めて評判になりました。作者の死後も似た本が数多く出版され、江戸時代の人々の計算の力を支えました。油分け算は、1 斗(10 升)の油を、7 升と 3 升のますだけを使って 5 升ずつに分ける問題です。
石取りゲームで、必勝法を探してみます。21 個の石から、2 人が交互に 1〜3 個ずつ取り、最後の石を取った人が勝ちです。相手の番に残りが 4 個なら、相手が何個取っても 1〜3 個が残り、次に自分が全部取れます。終わりの場面から逆にたどると、相手に 4 の倍数を残せば勝てることが分かります。
21 個から始めるなら、先手は最初に 1 個取って 20 個を残します。あとは、相手の取った数と合わせて 4 個になるように取り続ければ、必ず勝てます。ルールを少し変えると、必勝法も変わります。条件を変えて考え直すのも、数学の楽しみ方の 1 つです。
必勝法は、勝ちが決まる最後の場面から、逆にたどって見つけます。
図解石取りゲームの必勝法(21 個・1〜3 個ずつ)
- 1最後の場面相手の番に 4 個残れば、自分が勝つ
- 2その 1 つ前相手の番に 8 個残せば、4 個にできる
- 3さらに前12 個、16 個、20 個と 4 の倍数を残す
- 4最初の 1 手先手は 1 個取って 20 個を残す


03
離散グラフと行列: 対戦表とスマホ選びを数で整理する
数学 C の「数学的な表現の工夫」では、図や表、統計グラフ、離散グラフ、行列を使って、身の回りの事柄を表して考えます。離散グラフは、点(頂点)と、点どうしを結ぶ線(辺)でできた図です。解説では、総当たり戦の試合の進め方や、最短の道順の探し方などが話題の例に挙がっています。
6 チームの総当たり戦は、6 つの点をすべて線で結んだ図になり、試合数は 6 × 5 ÷ 2 = 15 です。1 日に 3 試合ずつ、全チームが 1 回ずつ戦うとすると、5 日で終わる日程が作れます。1 チームを真ん中に置き、残りの 5 チームを円の形に並べて毎日少しずつ回すと、同じ組み合わせが出ないように組めます。
行列は、数を縦と横に並べた表です。解説には、スマートフォンを選ぶ例が載っています。画面の大きさやカメラの画質といった機能ごとに、重要度と製品の評価をかけて足し、総得点を比べる方法です。この計算は、重要度の行列と評価の行列のかけ算として表せます。
下の例のように、重要度を変えると、選ぶべき製品が変わることもあります。どの機能を重く見るかを数で示すと、選んだ理由を人に説明しやすくなります。大学では、行列を線形代数として、離散グラフをグラフ理論やネットワークの研究として、さらに深く学びます。
つながりは点と線で、組み合わせの点数は行列で表すと、整理して考えられます。
図解イヤホンを重要度つきの点数で選ぶ
- 1A は 音質 4・電池 3・安さ 2 で、3×4 + 2×3 + 1×2 = 20 点
- 2B は 音質 3・電池 5・安さ 3 で、9 + 10 + 3 = 22 点
- 3C は 音質 5・電池 2・安さ 4 で、15 + 4 + 4 = 23 点
- 4電池を重く見て重要度を 1・3・2 にすると、B が 24 点で 1 位になる

04
社会の問題を数式に: 議席の配り方は割り算で決まる
数学 B の「数学と社会生活」では、身の回りや社会の問題を単純にして数式に表し、解いて、その結果が現実に合うかを考えます。解説では、全校生徒が 1 か月にもらうレジ袋の数を、仮定を立てて見積もる例が挙げられています。自転車の速さと、止まるまでの距離の関係を調べる例もあります。
選挙の議席の配り方も、数学で決まっています。衆議院と参議院の比例代表選挙では、ドント式という方法で各政党の議席の数を決めます。各政党の得票数を 1、2、3…と整数で割り、得られた商の大きい順に議席を配る方法で、ベルギーの法学者ドントが考えました。
衆議院の小選挙区の数を都道府県に配る方法には、2016 年の法改正でアダムズ方式が取り入れられました。各都道府県の人口をある同じ数で割り、小数点以下を切り上げた数の合計が定数とちょうど合うように、割る数を決める方法です。2020 年の国勢調査をもとにした見直しでは、東京都の小選挙区が 25 から 30 に増えました。
割り算の方法を変えると、同じ票数や人口でも、配られる数が変わることがあります。どの方法がより公平かは、数学と政治学が交わる研究のテーマです。社会のしくみを数で考える力は、政策を考える公務員や、まちづくり、物流の効率化などの仕事にも生きます。
高校生のうちに試せること
油分け算を紙の上で解く
1 斗(10 升)の油を、7 升と 3 升のますだけで 5 升ずつに分ける問題を解きましょう。3 つの入れ物の量を (10, 0, 0) のように書いて、移しかえるたびに書き足すと筋道が見えます。9 回の移しかえでできる方法があります。
ルールを変えて石取りゲームの必勝法を探す
友だちと、取れる数を 1〜4 個に変えたり、最後の石を取った人を負けにしたりして遊びましょう。相手にどんな数を残せば勝てるかを、終わりの場面から逆にたどって見つけてください。
総当たり戦の日程を組む
部活やクラスのチームが 6 つあるとして、1 日 3 試合ずつ、5 日で全 15 試合を終える日程を作りましょう。1 チームを真ん中に置き、残りを円の形に並べて回す方法を、紙に点と線を描いて確かめてください。
「応用: 数学と社会」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 25 件から探せます。

数理システム最適化学
岡山大学(岡山県)
工学部 機械システム系 ロボティクス・知能システムコース・オペレーションズ・リサーチ・田中 俊二 教授
数理最適化の手法を生産・物流システムの問題に応用する研究を行う。

情報数学
熊本大学(熊本県)
工学部 機械数理工学科 数理工学教育プログラム・情報数学・離散数学・城本 啓介 教授
代数系や離散数学をもとに、情報学の基礎理論とその応用を研究する。

鈴木研究室
新潟大学(新潟県)
理学部 理学科 数学プログラム・位相幾何学的グラフ理論・鈴木 有祐 教授
曲面へのグラフの埋め込みや局所変形など、位相幾何学的グラフ理論を研究する。

河原林研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・アルゴリズム・離散数学・理論計算機科学・河原林 健一 教授

岩田研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・アルゴリズム・離散構造論・数理最適化・岩田 覚 教授
武田研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科数理情報学専攻・連続最適化・オペレーションズ・リサーチ・武田 朗子 教授
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
「数学と人間の活動」や「数学と社会生活」は、どの学校でも学びますか?
数学 A・B・C は、それぞれ 3 つの内容の中から学校が選んで教える科目です。そのため、この単元を授業で扱うかどうかは学校によって異なります。授業で扱わなくても、本やパズルで楽しみながら考えられる内容が多くあります。
パズルやゲームが好きなことは、大学の勉強につながりますか?
つながります。必勝法を探す考え方はゲーム理論やアルゴリズムの研究に、組み合わせを整理する考え方は離散数学やグラフ理論に通じています。数学科や情報系の学科で、こうした分野を研究する研究室があります。