図 1 数学の広がり数学の広がり 4
確率と統計
偶然に起こることの起こりやすさを数で表し、集めたデータから傾向を読み取って判断する分野です。天気予報の降水確率、ゲームのガチャ、クラスの大縄跳びの記録、新しい商品の効き目の確かめ方まで、身近な判断の場面で使われます。

ひとことで言うと
出かける前に、傘を持つかを決める
出かける前に、空模様と降水確率を見て、傘を持つかどうかを決めます。確率と統計は、このように確実には分からないことを数で表し、手もとのデータから筋道を立てて判断するための道具です。勘だけに頼らない決め方ができるようになります。

01
降水確率: 30% は何を表しているのか
天気予報の降水確率 30% は、何を表しているのでしょうか。「予報が出た地域の 30% で雨が降る」でも、「その時間の 30% は雨が降っている」でもありません。気象庁の定義では、決められた時間帯に 1 mm 以上の雨か雪が降る確率です。
気象庁は、降水確率 30% の意味をこう説明しています。30% という予報が 100 回発表されたとき、そのうちのおよそ 30 回は 1 mm 以上の降水がある、という意味です。雨の量や強さを予報するものではありません。降水確率が低くても、降るときは強く降ることがあります。
降水確率は 0%、10%、20% と 10% きざみで発表され、その間は四捨五入されます。つまり 0% は確率が 5% より小さいという意味で、0% でも雨が降ることはあります。
1 回の予報が当たったかどうかだけでは、降水確率のよしあしは決められません。気象庁は、30% と予報したときに実際に降った割合が 30% に近いかを、一定の期間の予報と観測をまとめて確かめています。なお、明日の天気予報で雨が降るかどうかの適中率は、2016 年から 2025 年の平均で、全国で 85% です。
確率は、同じ状況が何度もくり返されたときの割合として読むと分かりやすくなります。
図解降水確率 30% の読み方
- 130% という予報が 100 回出たとする
- 2そのうち約 30 回は、その時間に 1 mm 以上の雨や雪が降る
- 3残りの約 70 回は、1 mm 以上は降らない
- 4雨の量や強さは、この数字からは分からない

02
場合の数と確率: 1% のガチャを 100 回引くと
数学 A の「場合の数と確率」では、起こりうる場合を数え上げて、確率を計算する方法を学びます。2 つのさいころを投げたときの目の出方は、6 × 6 = 36 通りです。目の和が 7 になるのは 6 通りなので、確率は 6 分の 1 になります。
ゲームのガチャで、当たりが出る確率が 1% だとします。100 回引けば必ず当たるように思えますが、計算すると違います。1 回も当たらない確率は、外れる確率 0.99 を 100 回かけた約 0.366 です。少なくとも 1 回当たる確率は、1 − 0.366 で約 63% にとどまります。
このように「少なくとも 1 回」を求めるときは、反対の「1 回も起こらない」確率を 1 から引くと簡単です。この考え方を余事象と呼びます。1% の当たりを少なくとも 1 回引く確率が 50% を超えるのは 69 回目で、90% を超えるには 230 回かかります。
確率の計算を知っていると、思い込みに流されずに判断できます。保険料を決める仕事、工場の製品の検査、ゲームの確率の設計など、確率は多くの仕事の土台になっています。
「少なくとも 1 回」は、「1 回も起こらない」確率を 1 から引いて求めます。
図解1% の当たりを、少なくとも 1 回引く確率
- 110 回引く約 10%
- 269 回引く約 50%(ここで半分を超える)
- 3100 回引く約 63%
- 4230 回引く約 90%


03
データの分析: 大縄跳びの記録を分けて比べる
数学 I の「データの分析」では、平均値や中央値、四分位数、分散や標準偏差を使って、データの散らばりを数で表します。2 つの量の関係は、散布図や相関係数で調べます。
学習指導要領の解説には、クラス対抗の大縄跳び大会の例が載っています。選手が 1 列に並んで跳ぶのと 2 列に並ぶのとで、どちらが多く連続で跳べるかを、データをとって比べる場面です。並び方だけでなく、全員が同じ向きか、真ん中で向きが分かれるか、縄の回し手はだれかによっても、記録は変わるかもしれません。
そこで、向きや回し手ごとにデータを分けて比べます。これを層別と呼びます。分けて比べるには、跳んだ回数といっしょに、並び方や回し手も記録しておく必要があります。データを集める前に、何を比べたいかを考えておくことが大切です。
ほかの値から極端にかけ離れた値を、外れ値と呼びます。解説は、外れ値を除くだけでなく、その背景を探ることも大切だとしています。たとえば、売上がとても多い販売員がいれば、その人の工夫から、売上を伸ばすヒントが見つかることがあります。
集める前に「何と何を比べたいか」を決めておくと、データが判断の材料になります。
図解大縄跳びの記録を比べる手順
- 1問いを決める1 列と 2 列、どちらが多く跳べる?
- 2記録を集める回数と並び方・向き・回し手をいっしょに
- 3分けて比べる向きや回し手ごとに箱ひげ図を並べる
- 4外れ値を調べるとても多かった回の理由を探る

04
統計的な推測と仮説検定: 偶然かどうかを見極める
数学 I では仮説検定の考え方を、数学 B の「統計的な推測」では、一部のデータ(標本)から全体(母集団)の様子を推し量る方法を学びます。解説には、新しい素材の枕を使った 30 人のうち 24 人(80%)が「以前よりよく眠れた」と答えた例が載っています。この結果から、枕に効き目があると判断してよいのでしょうか。
枕に効き目がなく、「よく眠れた」と「そうでない」が半々で起こると仮に考えます。すると 30 人の答えは、コインを 30 回投げるのと同じです。表が 24 回以上出る確率を計算すると約 0.07%、1 万回に 7 回ほどです。偶然だけでは起こりにくいので、枕に効き目がありそうだと判断できます。
ただし、この判断にも限界があります。答えた 30 人が、もともと枕に期待していた人ばかりなら、結果はかたよります。どんな人を選んだか、比べる相手はいるかを確かめることも、統計の大切な考え方です。
大学では、統計学やデータサイエンスとしてさらに深く学びます。滋賀大学は、日本で初めてのデータサイエンス学部を設けました。心理学や医学、経済学でも、実験や調査の結果を確かめるのに統計は欠かせません。気象予報士、データサイエンティスト、保険料を計算するアクチュアリーなど、確率と統計を生かす仕事は数多くあります。
高校生のうちに試せること
コインで仮説検定を体験する
コインを 30 回投げて表の回数を数える実験を、クラスで手分けして 100 回分集めましょう。表が 24 回以上になった回がいくつあるかを数えると、偶然だけでは起こりにくい結果の珍しさが実感できます。
気象庁の予報の成績を調べる
気象庁の「天気予報の精度検証結果」では、地域ごと・月ごとの適中率を見られます。自分の住む地域の数字を調べ、季節や何日先の予報かによって当たりやすさがどう変わるかを考えましょう。
気象庁 降水の有無の適中率の例年値統計グラフ全国コンクールに応募する
総務省などが主催し、1953 年から続くコンクールです。高校生も、自分で調べたデータをグラフにまとめ、都道府県の統計グラフコンクールを通して応募できます。総務省統計局の学習サイト「なるほど統計学園」で、グラフの作り方を学んでから始めましょう。
統計グラフ全国コンクール
「確率と統計」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 35 件から探せます。
ベイズ統計学・推論
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 情報科学プログラム・情報科学・NUNES TENDEIRO JORGE 教授
ベイズ推定、仮説検定、ベイズ因子(ベイズファクター)などを研究している。

大気海洋システム研究室
新潟大学(新潟県)
理学部 理学科 フィールド科学人材育成プログラム・気象学・気候システム学・本田 明治 教授
気象学・海洋物理学・雪氷学をもとに、異常気象や豪雪をもたらす気候の仕組みを探る。
確率解析
熊本大学(熊本県)
工学部 機械数理工学科 数理工学教育プログラム・確率論・金大弘 教授
ランダムな現象を確率モデルで表し、理論と工学への応用を研究する。

熊坂研究室
東京大学(東京都)
情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻・遺伝統計学・応用統計学・熊坂 夏彦 教授
気象学・気候力学
九州大学(福岡県)
流体圏・宇宙圏科学・望月 崇 教授
熱帯気象や台風、異常気象など気象・気候システムを研究する。

統計モデル学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・統計科学・坂本 亘 教授
環境・生命科学データの解析に使う統計モデルと、最適なモデルを選ぶ方法を研究する。
よくある質問
確率と統計は、どの科目で学びますか?
数学 A で場合の数と確率を、数学 I でデータの分析と仮説検定の考え方を、数学 B で確率分布や正規分布、区間推定と仮説検定を学びます。数学 A・B は学校が内容を選んで教える科目なので、どこまで扱うかは学校によって異なります。
文系の学部でも統計を学びますか?
経済学・心理学・社会学・経営学などでは、調査や実験のデータを統計で分析する授業が多くあります。学部を問わず受けられる、データサイエンスの入門の授業を開いている大学もあります。


