図 1 数学の広がり数学の広がり 1
数と式・関数
ある量が変わると、別の量がどう変わるかを、式とグラフで表す分野です。投げたボールの通り道、地震の大きさの物差し、観覧車の高さ、パズルの手数まで、同じ道具で読み解けます。

ひとことで言うと
ボタンを押すと決まった飲み物が出る
自動販売機は、押したボタンに応じて決まった飲み物が出てきます。関数も、時間や角度などの数を入れると、高さや大きさなどの数が 1 つに決まって出てくるしくみです。どんな形で出てくるかが分かると、先のことを予想できます。

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二次関数: ボールの最高点は計算で分かる
数学 I の二次関数は、x の 2 乗を含む式で表される関数です。グラフは放物線と呼ばれる、左右対称の曲線になります。空気の抵抗を考えなければ、投げたボールや噴水の水は、この放物線を描いて飛びます。
たとえば、ボールを秒速 19.6 m(時速約 70 km)で真上に投げるとします。t 秒後の高さは 19.6t − 4.9t² m です。この式を平方完成で −4.9(t − 2)² + 19.6 の形に直すと、2 秒後に最高点の 19.6 m に届くことが分かります。
二次関数は、ブレーキの効き方にも表れます。学習指導要領の解説では、自転車の制動距離が速さの 2 乗に比例する例が取り上げられています。速さが 2 倍になると、ブレーキが効き始めてから止まるまでの距離は 4 倍になります。スピードの出し過ぎが危ない理由を、式で説明できるのです。
二次関数を学ぶと、「いちばん高い」「いちばん安い」といった最大・最小を、計算で求められるようになります。物理の運動の計算や、売上がいちばん多くなる値段を考える経済の問題にも、同じ考え方が使われます。
平方完成をすると、式からグラフの頂点、つまり最大や最小が読み取れます。
図解ボールの最高点を平方完成で求める
- 1−4.9 でくくると、−4.9(t² − 4t)
- 2t² − 4t を (t − 2)² − 4 に直す
- 3高さは −4.9(t − 2)² + 19.6 になる
- 4(t − 2)² は t = 2 のときに 0 で、いちばん小さい


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指数と対数: 2 倍のくり返しと、地震の物差し
数学 II の指数関数は、同じ数を何回もかけていく変化を表します。厚さ 0.1 mm の紙を半分に折るたびに、厚さは 2 倍になります。10 回折ると 2 の 10 乗で 1,024 倍、約 10 cm です。
計算の上では、42 回折ると厚さは約 44 万 km になります。地球から月までの平均の距離、約 38 万 4,400 km を超えてしまいます。実際の紙は数回で折れなくなりますが、かけ算をくり返す増え方がどれほど急かは、この計算で実感できます。
反対に「2 を何回かけると 1,024 になるか」を表すのが対数です。対数は、けた違いに大きさが変わる量を、扱いやすい小さな数に直す物差しになります。学習指導要領の解説も、音の強さのデシベル、星の明るさの等級、地震の規模のマグニチュードを、対数が使われている例に挙げています。
気象庁によると、マグニチュード(M)が 1 大きくなると、地震のエネルギーは約 32 倍になります。2 大きくなると約 1,000 倍です。32 倍は 10 の 1.5 乗(約 31.6)にあたり、2 つ分で 10 の 3 乗、つまり 1,000 倍です。なお、震度はある場所での揺れの強さで、地震そのものの規模を表すマグニチュードとは別のものです。
対数を使うと、けた違いに大きさが変わる量も、1 本の物差しで比べられます。
図解マグニチュードが 1 上がるごとに約 32 倍
- 1M5 の地震エネルギーを 1 とする
- 2M6 の地震約 32 倍
- 3M7 の地震約 1,000 倍
- 4M8 の地震約 3 万倍

03
三角関数: 観覧車の高さと、音の高さ
数学 I の三角比は、直角三角形の辺の比で角の大きさを表します。数学 II では、これを 360 度より大きな角や負の角にも広げ、三角関数として学びます。回る動きや、同じ形をくり返す波を表すのが得意な関数です。
直径 100 m の観覧車で、ゴンドラがいちばん下から θ 度回ったとします。いちばん下からの高さは 50 − 50 cos θ m と表せます。グラフにすると、なめらかな山と谷が同じ形でくり返す波になります。
音も波です。音の高さは、空気が 1 秒間に何回振動するかで決まります。ラの音を 440 Hz(1 秒に 440 回)とする決め方は、1939 年のロンドンの国際会議から国際的な標準になりました。日本では 1948 年に文部省(当時)が採用しています。
ここで指数も登場します。1 オクターブ上のラは、2 倍の 880 Hz です。ピアノは、この間を等しい比の 12 の半音に分ける平均律で調律されています。半音 1 つで振動数は 2 の 12 乗根倍、約 1.0595 倍になり、12 回かけるとちょうど 2 倍になります。
三角関数は、回る動きと波を表す共通の言葉です。
図解観覧車のゴンドラの高さ(直径 100 m の例)
- 130 度回ると、50 × (1 − cos 30°) で約 6.7 m
- 260 度回ると、cos 60° = 0.5 なので 25 m
- 390 度回ると、中心と同じ 50 m
- 4180 度回ると、いちばん上の 100 m


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数列と漸化式: ハノイの塔の手数を数える
数学 B の数列では、数の並び方の決まりを調べます。前の項から次の項を決める式を、漸化式と呼びます。学習指導要領の解説では、漸化式を学ぶ題材の例に「ハノイの塔」と「複利計算」が挙げられています。
ハノイの塔は、1883 年にフランスの数学者リュカが発表したパズルです。3 本の棒の 1 本に、大きさの違う円盤が大きい順に積んであります。円盤を 1 枚ずつ動かし、小さい円盤の上に大きい円盤を置かないようにして、全部を別の棒へ移します。
円盤を 1 枚増やしたときの手数は、上の山をいったんよけて、いちばん下の 1 枚を動かし、山を戻せば求まります。「(n + 1) 枚の手数 = 2 × (n 枚の手数) + 1」という漸化式です。1 枚なら 1 手、2 枚は 3 手、3 枚は 7 手と続き、n 枚では 2 の n 乗 − 1 手になります。
パズルには、寺院の僧たちが 64 枚の金の円盤を移し続けている、という伝説が添えられていました。64 枚の手数は 2 の 64 乗 − 1 で、約 1,800 京回です。1 秒に 1 手動かしても、約 5,800 億年かかります。
漸化式を立てると、手で数えきれない回数も計算で求められます。
図解円盤の枚数と最少の手数
3〜5 枚
- 3 枚: 7 手
- 4 枚: 15 手
- 5 枚: 31 手
10 枚
- 1,023 手
- 1 秒に 1 手で約 17 分
64 枚(伝説)
- 約 1,800 京手
- 1 秒に 1 手で約 5,800 億年


05
大学では: 関数は微分積分と統計の土台
関数は、大学で学ぶ数学のほとんどの土台になります。多くの大学では、1 年生で微分積分を学び、関数の変わり方を細かく調べます。数学科では、高校で使ってきた公式を、なぜ成り立つかから証明し直します。
物理学では波の式に三角関数を、放射性物質が減っていく様子に指数関数を使います。情報学では、手順の回数の増え方を対数で見積もります。経済学では、値段と売れる量の関係を関数で表します。放物線の式はゲームのジャンプの動きに、波の式は音や電波の技術に生かされています。
つまずきやすいのは、式とグラフを行き来するところです。式を見たら、まず x に 0、1、2、−1 を入れて点を打ち、グラフの形を手で描いてみてください。形が見えると、式の数が何を表しているかが分かりやすくなります。
高校生のうちに試せること
グラフのつまみを動かして形を確かめる
無料のグラフ作成ツール Desmos に y = a(x − p)² + q と入力すると、a・p・q を動かすつまみ(スライダー)を追加できます。つまみを動かして、放物線の頂点や開き方がどう変わるかを確かめましょう。
Desmos グラフ計算機厚紙でハノイの塔を作って解く
大きさの違う円を 4〜5 枚、厚紙で切り抜き、3 か所の置き場を決めます。最少の手数で全部を移せるか試しましょう。4 枚で 15 手、5 枚で 31 手なら成功です。漸化式どおりに手数が増えることを確かめてください。
過去の地震のマグニチュードを比べる
気象庁の「震度データベース検索」では、過去の地震の発生日時やマグニチュード、各地の震度を調べられます。2 つの地震を選び、マグニチュードの差から、エネルギーがおよそ何倍違うかを計算しましょう。
気象庁 震度データベース検索
「数と式・関数」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 40 件から探せます。
機械波動音響学研究室
九州大学(福岡県)
機械工学・雉本 信哉 教授

物理統計学分野
京都大学(京都府)
情報学研究科情報学専攻・数理物理学・梅野 健 教授
大井研究室
新潟大学(新潟県)
理学部 理学科 数学プログラム・関数解析学・大井 志穂 准教授
Banach環の間の写像が距離や代数構造を保つときに何が言えるかという保存問題を研究する。

応用解析学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 数理データサイエンスコース・数理生物学・佐々木 徹 教授
微分方程式を中心とする解析学と、個体数変動やウイルス動態など数理生物学への応用を研究する。

音響システム研究室(センシングシステム研究室)
筑波大学(茨城県)
知能機能システム・土屋 充志 特任助教

音響知能研究室
筑波大学(茨城県)
知能機能システム・坂東 宜昭 准教授
よくある質問
二次関数や三角関数は、文系に進んでも使いますか?
経済学では、値段と売れる量の関係や、費用がいちばん小さくなる生産量を関数で考えます。心理学や社会学でも、データの傾向をグラフや式で表します。入試で数学 II までを課すかどうかは大学や学部によって異なるので、志望校の募集要項を確かめてください。
式は分かるのに、グラフになると分からなくなります。
x に 0、1、2、−1 などを入れて表を作り、点を打ってつなぐところから始めると、式とグラフの関係が見えてきます。Desmos などのグラフのツールで、式の数を 1 つずつ変えたときに形がどう変わるかを見るのも効果があります。
