図 1 物理の広がり物理の広がり 4
電気と磁気
家のコンセント、スマートフォンのタッチパネル、IH 調理器、電子レンジ。毎日使う道具の多くは、電気と磁気の法則で動いています。電気の流れ方と、電気と磁気が互いを生み出すしくみを学ぶ分野です。

ひとことで言うと
電位は高さ、電流は水の流れ
水は高い所から低い所へ流れ、高さの差が大きいほど勢いよく流れます。電気も、電位の高い所から低い所へ電流が流れます。同じ高さの 2 か所の間を水が流れないように、電位の差がなければ電流は流れません。

01
電気回路: 家のコンセントは並列つなぎ
物理基礎の「電気」では、金属の中の電流が自由電子の流れであることや、電気抵抗が導線の長さや太さ、物質の種類で決まることを学びます。物理の「電気回路」では、キルヒホッフの法則を使って、枝分かれした回路の電流を計算できるようになります。
家の電気製品は、並列につながっています。どの製品にも同じ 100 V の電圧がかかり、流れる電流は製品の数だけ足し合わされます。電力(W)は電圧(V)× 電流(A)なので、1,200 W のオーブントースターには、100 V で 12 A の電流が流れます。
製品評価技術基盤機構(NITE)によると、一般的な家の壁にある二口のコンセントは、二口の合計で 1,500 W までしか使えません。テーブルタップにも「合計 1500 ワットまで」のような表示があります。1,200 W のトースターと 1,240 W の炊飯器を 1 つのテーブルタップにつなぐと、合計は 2,440 W です。
上限を超えると、プラグと差し込み口の接触部分などが異常に発熱し、火災につながるおそれがあります。NITE は、2022 年に埼玉県で、二口のコンセントに合計約 1,850 W の製品をつなぎ、差込口が焼けた事故を紹介しています。並列では電流が足し算で増えると分かれば、たこ足配線の危なさを数字で説明できます。
並列つなぎでは、つなぐ製品が増えるほど電流が足し算で増えます。
図解テーブルタップの電流を計算する
- 1並列なので、どちらにも 100 V がかかる
- 2トースター: 1,200 ÷ 100 = 12 A
- 3炊飯器: 1,240 ÷ 100 = 12.4 A
- 4コードには 12 + 12.4 = 24.4 A が流れる

02
電界と電位: 電線の鳥と、スマートフォンの画面
物理の「電界と電位」では、電気を帯びた物のまわりにできる電界と、電気の世界の「高さ」にあたる電位を学びます。電流は、電位の高い所から低い所へ流れます。2 点の間の電位の差が、電圧です。
電線に止まった鳥が感電しないのは、両足が同じ 1 本の電線に乗っているからです。両足の間の電位の差はほぼ 0 なので、鳥の体にはほとんど電流が流れません。反対に、電線と地面、または 2 本の電線に同時に触れると、大きな電位の差がかかって体に電流が流れます。切れて垂れ下がった電線に近づいてはいけないのは、このためです。
学習指導要領の解説は、電位の学習とあわせて、家庭用電気製品の接地(アース)や避雷針の役割に触れることを例に挙げています。洗濯機などのアース線は、製品からもれた電気を、人の体ではなく地面へ逃がすための通り道です。
スマートフォンの画面にも、物理の「電気容量」の考え方が生きています。タッチパネルに広く使われる静電容量方式では、画面の下に透明な電極が並んでいます。指が近づくと、電極にたまる電気の量(静電容量)がわずかに変わり、その変化から触れた場所を読み取ります。コンデンサーと同じ考え方です。
電流が流れるかどうかは、電位の差で決まります。
図解感電するかどうかを電位で考える
1 本の電線の上の鳥
- 両足の電位がほぼ同じ
- 電圧はほぼ 0
- 体に電流がほとんど流れない
電線と地面に触れる
- 電線と地面で電位が大きく違う
- 大きな電圧がかかる
- 体に電流が流れて危険


03
電流と磁界: 方位磁針の針が動いた日から、スピーカーまで
電気と磁気がつながっていることが分かったのは、1820 年のことです。デンマークの物理学者エルステッドは、導線に電流を流すと、近くの方位磁針の針が動くことに気づきました。講義で実験を見せていたときの、偶然の発見だったと伝えられています。
物理の「電流による磁界」では、まっすぐな導線、円形の導線、コイルのまわりにできる磁界の向きと強さを学びます。電流の向きと磁界の向きの関係は、ねじを回す向きと進む向きにたとえて覚えます(右ねじの法則)。
続く「電流が磁界から受ける力」では、磁界の中を流れる電流が力を受けることを学びます。モーターは、この力でコイルを回し続けるしくみです。スピーカーも同じ力を使います。磁石のそばのコイルに音の信号の電流を流すと、コイルと振動板が細かく前後に動き、空気を震わせて音になります。
力の向きは、電流・磁界・力の向きを左手の 3 本の指に当てはめる「フレミングの左手の法則」などで確かめます。この決まりを使うと、モーターが回る向きや、スピーカーの振動板が押される向きを、作る前に予想できます。
電流は磁界をつくり、磁界の中の電流は力を受けます。
図解スピーカーが音を出すまで
- 1音の電気信号音に合わせて強さと向きが変わる電流
- 2コイルに流すコイルは磁石の磁界の中にある
- 3コイルが力を受ける電流の向きで押される向きが変わる
- 4振動板が震える空気を震わせて耳に届く


04
電磁誘導: IH 調理器と、東と西で違う周波数
物理の「電磁誘導」では、コイルを貫く磁界が変わると、コイルに電圧が生まれることを学びます。2 つのコイルを近づけ、一方の電流を変えると、もう一方に電流が流れる現象は、相互誘導と呼ばれます。
IH 調理器の IH は、電磁誘導加熱を表す英語の頭文字です。三菱電機の解説によると、天板の下のコイルに電流を流すと磁力線が生じ、それが金属の鍋を通るときに、鍋の底に渦電流が流れます。この電流と鍋の電気抵抗で、鍋そのものが発熱します。電気を通さない土鍋やガラスの器には渦電流が流れないので、そのままでは温まりません。
置くだけで充電できるスマートフォンのワイヤレス充電も、相互誘導の応用です。充電台のコイルに交流を流すと、向きが入れかわる磁界がスマートフォンの中のコイルを貫き、電磁誘導で電流が生まれます。コイルどうしが離れると磁界が届きにくくなるので、充電台の決まった位置に置いて使います。
発電所の発電機も、電磁誘導で交流をつくります。家に届く交流は、東日本では 1 秒間に 50 往復(50 Hz)、西日本では 60 往復(60 Hz)の変化をくり返します。日本原子力研究開発機構の解説によると、この違いは明治時代にさかのぼります。電気事業が始まったころ、東京はドイツ製の 50 Hz の発電機を、大阪はアメリカ製の 60 Hz の発電機を採用しました。今も静岡県の富士川を境に、周波数が分かれています。
変わる磁界は電流を生みます。IH も充電台も発電機も、同じ法則で動いています。
図解同じ電磁誘導で動くもの
IH 調理器
- コイルの磁界が変わる
- 鍋の底に渦電流が流れる
- 鍋そのものが熱くなる
ワイヤレス充電
- 充電台のコイルに交流を流す
- スマートフォンのコイルに電流
- その電流で電池を充電する
発電機
- 磁石かコイルを回す
- 交流の電気が生まれる
- 東は 50 Hz、西は 60 Hz


05
電磁波と大学: 電子レンジから通信の仕事まで
物理の「電磁波」では、電気の振動から電磁波が生まれ、情報やエネルギーを運ぶことを学びます。日本機械学会誌の解説によると、電子レンジのマイクロ波の周波数は、国際的に 2,450 MHz と決められています。1 秒間に 24 億 5,000 万回の振動です。このマイクロ波が、食品の中の水の分子を激しく動かして温めます。
同じ解説によると、マイクロ波を生む部品「マグネトロン」では、磁石の磁界の中を飛ぶ電子が、ローレンツ力で通り道を曲げられて回ります。扉の内側の金属の網は、穴がマイクロ波の波長の約 12 cm より小さいので、マイクロ波を外に出しません。1 台の電子レンジに、電流と磁界、電磁波の単元がそろっています。
大学では、物理学科の電磁気学で、高校で別々に学んだ法則を、少ない基本の式にまとめて学び直します。電気電子工学科では、電気回路、電子回路、電力、通信などの授業に進みます。科目の名前や順番は大学によって異なります。電気と磁気の知識を生かす仕事は幅広くあります。発電や送電を支える電力会社の技術者、家電や半導体の開発者、携帯電話の通信を設計する技術者などです。
つまずきやすいのは、目に見えない電界や磁界の向きを考えるところです。方位磁針を導線のまわりに置いて針の向きを確かめたり、電気力線や磁力線を図に描いたりすると、向きの決まりが身につきます。
高校生のうちに試せること
方位磁針で電流の磁界を見る
乾電池と豆電球を導線でつないで回路を作り、導線の一部を南北の向きにして、方位磁針の真上に近づけましょう。豆電球がつくと針が振れ、電池の向きを逆にすると反対に振れます。豆電球を入れるのは、電流が流れすぎて導線や電池が熱くならないようにするためです。
家電の表示から電流を計算する
家の電気製品の本体や取扱説明書で「定格消費電力」を探し、100 V で割って電流を計算しましょう。同時に使う製品の値を足して、テーブルタップの「合計 1500 W まで」と比べてみてください。コンセントやコードには触らず、表示を読むだけで計算できます。
NITE「PS マガジン」配線器具の事故(2024 年 12 月)紙コップスピーカーを作る
エナメル線を数十回巻いてコイルを作り、紙コップの底に貼ります。コイルの近くに磁石を置き、端のエナメルを紙やすりではがして、イヤホン端子に差せるプラグつきのコードにつなぎましょう。音楽プレーヤーなどで音を流すと、紙コップから小さな音が聞こえます。強い磁石は、指をはさまないように気をつけてください。
「電気と磁気」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 68 件から探せます。
電動機システム工学/電子制御工学
岡山大学(岡山県)
工学部 情報・電気・数理データサイエンス系 エネルギー・エレクトロニクスコース・電気機器・制御工学・竹本 真紹 教授
電気自動車や航空機用の高出力モータの開発と、電子制御システムの最適化を研究する。
自然エネルギー・高電圧
新潟大学(新潟県)
工学部 工学科 電子情報通信プログラム・電力工学・高電圧工学・菅原 晃 准教授
風力発電の雷保護や揚水発電を組み合わせた電力安定化、直流遮断を研究する。
辻研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 電子情報システム教育プログラム・電力システム工学・辻 隆男 教授
電力と情報通信を融合し自己修復できるシステムを目指す。
電気エネルギー応用教育研究分野
千葉大学(千葉県)
工学部 総合工学科 電気電子工学コース・電気機器・磁気応用・宮城 大輔 教授
電気エネルギーを磁気や機械のエネルギーへ効率よく変換する応用技術を研究する。

佐野研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 電子情報システム教育プログラム・アンテナ工学・佐野 誠 准教授
電磁波を効率よく使う高性能・多機能なアンテナを研究する。

パワーエレクトロニクス研究グループ
名古屋大学(愛知県)
電気工学・山本 真義 教授
学生団体・機関はまだ掲載していません
よくある質問
電気と磁気は、なぜ難しいと言われるのですか?
電界や磁界は目に見えず、向きを立体的に考える場面が多いためです。方位磁針や、磁石と砂鉄で磁界の形を実際に見たり、電気力線や磁力線を図に描いたりすると、考えやすくなります。物理のどの学年で学ぶかは、学校によって異なります。
物理学科と電気電子工学科では、電磁気の学び方は違いますか?
物理学科では、電気と磁気の法則そのものを深く学び、光や物質の性質の理解につなげます。電気電子工学科では、法則を使って回路や電力の設備、通信の機器を設計する授業が中心になります。多くの大学では、どちらの学科でも 1・2 年で電磁気学を学びますが、科目の名前や内容は大学によって異なります。
家で電気の実験をしてもよいですか?
乾電池や豆電球、磁石、方位磁針を使う実験なら、家でも試せます。家のコンセントの電気は、感電や火災の危険があるので、実験には使わないでください。乾電池も、導線で + 極と − 極を直接つなぐと熱くなるので、豆電球などを間にはさんでください。



