大学カタログ

図 1 物理の広がり物理の広がり 3

波(音と光)

音も光も、水面のさざ波と同じ「波」です。救急車の音が通り過ぎると低くなるわけ、虹が見える方向、偏光サングラスで水の中が見えるわけを、同じ考え方で説明できる分野です。

虹がかかる雨上がりの川辺で、走り抜ける救急車を振り返る高校生、偏光サングラスで水面をのぞき込む高校生、ストローの笛を吹く高校生

ひとことで言うと

スタジアムの観客席のウェーブ

観客席のウェーブは、1 人ひとりが立って座るだけなのに、波の形がぐるりと一周します。音や光の波も同じで、空気や水そのものが遠くへ運ばれるのではありません。揺れの形が、次々と隣へ伝わっていきます。

01

波の性質: 進むのは形で、水は進まない

物理基礎では、まず「波」の単元で、波の基本的な性質を学びます。池に石を投げると、輪になった波が広がります。ところが、水面に浮かんだ葉は、その場で上下に揺れるだけで、波と一緒に岸へは流れていきません。波で伝わるのは、揺れの形とエネルギーです。

揺れる向きと進む向きで、波は 2 種類に分かれます。弦の振動のように、揺れる向きと進む向きが垂直な波が横波です。音のように、空気が押し縮められたり広がったりしながら伝わる波が縦波です。授業では、長いばねや波動実験器で、2 つの波の違いを目で確かめます。

波の速さ、1 秒間に揺れる回数(振動数)、波 1 つ分の長さ(波長)の間には、速さ = 振動数 × 波長 という関係があります。気温 15℃ ほどの空気中で、音の速さは秒速約 340 m です。1 秒間に 340 回振動する音なら、波長は 1 m になります。

両端を固定した弦では、行きと帰りの波が重なって、その場で揺れるだけの波(定在波)ができます。弦楽器の弦の長さや張り方で音の高さが決まるのは、このためです。速さ = 振動数 × 波長 の 1 本の式が、音の高さや光の色を考える出発点になります。

波で伝わるのは物そのものではなく、揺れの形とエネルギーです。

図解横波と縦波

横波

  • 揺れる向きと進む向きが垂直
  • 例: 弦の振動、光

縦波

  • 揺れる向きと進む向きが同じ
  • 空気の濃い所と薄い所が進む
  • 例: 音

02

音: ストローの笛と、音で音を消すヘッドホン

物理基礎の「音と振動」では、気柱の共鳴やうなりを学びます。片方の端をふさいだ管の口を吹くと、中の空気が共鳴して音が鳴ります。閉じた端では空気が動けず、開いた端ではよく動くので、いちばん低い音では管の長さが波長の 4 分の 1 になります。

わずかに高さの違う 2 つの音を同時に鳴らすと、「ウワン、ウワン」と音が大きくなったり小さくなったりします。これがうなりで、1 秒あたりの回数は 2 つの振動数の差に等しくなります。吹奏楽部で音を合わせるとき、うなりがゆっくりになって消えたら、高さがそろった合図です。

物理の「音」の単元では、波が重なって強め合ったり弱め合ったりする干渉を学びます。ノイズキャンセリング機能のあるヘッドホンは、マイクで周りの騒音を拾い、山と谷が反対になった逆位相の音を出して騒音を打ち消します。電車や飛行機のように一定に続く低い音は打ち消しやすく、人の会話のように急に変わる音は苦手とされています。

塀の向こうの人の声は聞こえるのに、姿は見えません。波が障害物の裏に回り込む回折のためです。人の声の波長はおよそ数十 cm から数 m で、塀や建物の角と同じくらいの大きさなので、よく回り込みます。目に見える光の波長は 0.0004〜0.0008 mm ほどと音の 100 万分の 1 ほどしかなく、ほとんど回り込みません。

管の長さや 2 つの音の差から、聞こえる音を計算で予想できます。

図解ストローの笛の音の高さを計算する

入力片方の端をふさいだ長さ 20 cm のストロー。音の速さは秒速 340 m
  1. 1ふさいだ端は空気が動かず、開いた端はよく動く
  2. 2いちばん低い音では、長さが波長の 4 分の 1
  3. 3波長は 20 cm × 4 = 80 cm
  4. 4振動数 = 速さ ÷ 波長 = 340 ÷ 0.8
結果約 425 Hz。10 cm に切ると約 850 Hz で、1 オクターブ高くなる(実際は計算より少し低め)
片側に穴の開いた細長い木の箱の上に、金属のおんさが立てて取り付けられている
共鳴箱にのせたおんさ。片側が開いた箱の中の空気が、おんさと同じ振動数で共鳴して、音を大きくします。ドイツのマックス・コール社製で、アメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学の物理学科の所蔵品です。写真: Brian0918(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

03

ドップラー効果: 救急車の音と、雨雲のレーダー

物理の「音のドップラー効果」では、音を出す物や聞く人が動くと、聞こえる音の高さが変わるしくみを学びます。救急車が近づくときは、前に出した波を追いかけながら次の波を出すので、波の間隔が詰まって高い音に聞こえます。遠ざかるときは間隔が広がり、低く聞こえます。

東京消防庁の研究報告によると、救急車の「ピーポー」は、1970 年の消防庁の通知で定められた音です。「ピー」は 960 Hz、「ポー」は 770 Hz で、0.65 秒ずつ鳴ります。秒速 20 m(時速 72 km)で走る救急車で計算してみます。ピーは、近づくとき約 1,020 Hz、遠ざかるとき約 907 Hz に聞こえます。

ドップラー効果は、天気予報にも使われています。気象庁の気象ドップラーレーダーは、雨粒に当たってはね返った電波の周波数のずれから、風で流される雨粒の動きをとらえます。2013 年 3 月には、全国 20 か所の気象レーダーがすべてドップラーレーダーになり、竜巻などの突風の監視に役立てられています。

この効果は、1842 年にオーストリアのドップラーが原理を発表しました。1845 年 6 月 3 日、オランダのボイス・バロットがこれを確かめました。ユトレヒトとマールセンの間を走る列車にホルン奏者を乗せ、耳のよい人たちに音の高さを聞き分けてもらったのです。彼はのちにオランダ王立気象研究所(KNMI)を創設しました。なお、音源が音より速く動くと、波が重なって衝撃波になります。

聞こえる音や電波の振動数のずれから、相手の動きが分かります。

図解救急車のピーは何 Hz に聞こえる?

入力960 Hz のピーを鳴らす救急車が、秒速 20 m で走る。音の速さは秒速 340 m
  1. 1近づくとき: 1 秒分の波が 340 − 20 = 320 m に詰まる
  2. 2聞こえる振動数は 960 × 340 ÷ 320 = 1,020 Hz
  3. 3遠ざかるとき: 1 秒分の波が 340 + 20 = 360 m に広がる
  4. 4聞こえる振動数は 960 × 340 ÷ 360 ≒ 907 Hz
結果目の前を通り過ぎた瞬間に、ピーは約 1,020 Hz から約 907 Hz へ下がって聞こえる
緑の畑の向こうに立つ、白い球形のドームをのせた細長い鉄骨の塔
静岡県の牧之原台地に立つ、気象庁の静岡気象レーダー。富士山頂のレーダーに代わって 1999 年に運用を始め、2012 年 12 月にドップラーレーダーになりました。写真: 静岡の暇人(CC0・Wikimedia Commons)

04

光: 虹は太陽を背にして探す

物理の「光」の単元では、光の屈折、分散、偏光、干渉などを学びます。光が水やガラスに斜めに入ると、進む向きが曲がります(屈折)。曲がり方は色によって少しずつ違うので、白い太陽の光は色ごとに分かれます。これが分散です。

虹は、空中の水滴がプリズムの役目をしてできます。名古屋市科学館の解説によると、水滴に入った太陽の光は屈折と反射をして、入ってきた向きと約 42 度の角度で戻ってきます。そのため虹は、太陽と正反対の点を中心にした半径約 42 度の円の上に、外側が赤、内側が紫の順で見えます。虹は太陽を背にして探すのが正解です。

光は横波で、揺れる向き(偏光)をもっています。大阪市立科学館の解説によると、水面に浅い角度で当たって反射した光は、ほとんどが横向きに揺れる光です。偏光サングラスは横向きの光を通さないので、水面のぎらつきが減り、水の中が見やすくなります。釣り道具の店で偏光サングラスが売られているのは、このためです。

液晶テレビやパソコンの液晶画面にも、偏光板が必ず使われています。偏光サングラスで液晶画面を見ながら頭を傾けると、ある角度で画面が暗くなります。水面の反射がいちばん強く偏光する角度(水面から約 37 度)には、物理学者ブリュースターの名前がついています。ブリュースターは、万華鏡を発明した人でもあります。

虹も偏光サングラスも、光が波であることから説明できます。

図解光の性質と、身近な例

屈折と分散

  • 色によって曲がり方が違う
  • 例: 虹、プリズム

偏光

  • 揺れる向きがそろった光
  • 例: 偏光サングラス、液晶画面

干渉

  • 波が重なって強め合い・弱め合う
  • 例: レンズの反射防止コート
田畑と道路の向こうに、大きな虹が 2 本、平行に弧を描いている
秋田県北秋田市で見られた二重の虹。内側の明るい虹は外側が赤で、外側のうすい虹(副虹)は、色の並びが逆になります。写真: Marho(CC BY-SA 4.0・Wikimedia Commons)

05

光の干渉と、大学で続く波の学び

物理の「光の干渉」では、薄い膜の表と裏で反射した光が重なり、強め合ったり弱め合ったりする現象を学びます。眼鏡やカメラのレンズの反射防止コートは、この干渉を使っています。屈折率 1.5 ほどのガラスでは、何もしないと 1 つの面で光の約 4% が反射します。

そこで、レンズの表面にごく薄い膜をつけます。膜の厚さを、膜の中での光の波長の 4 分の 1(およそ 0.0001 mm)にします。すると、膜の表とレンズの表面で反射した 2 つの光は、山と谷がずれて打ち消し合います。カメラのレンズは何枚ものレンズを重ねているので、1 枚ごとの反射を減らすことが、明るくくっきり写す決め手になります。

大学では、波の学びがさらに広がります。物理学科では、振動と波動や電磁気学を学び、光が電磁波の一種であることを式で確かめます。工学部では、通信のアンテナ、医療の超音波診断装置、建物の音の設計などに波の知識を使います。九州大学芸術工学部の音響設計コースのように、音を専門に学べるコースもあります。科目の名前や学ぶ時期は大学によって異なります。

波の単元でつまずきやすいのは、ある瞬間の波の形を表すグラフと、ある 1 点の揺れの時間変化を表すグラフの区別です。どちらのグラフかを最初に確かめ、ばねや動画で実際の揺れを見てから式に戻ると、理解しやすくなります。

クイズ波(音と光)クイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1秒速 20 m で近づいてくる救急車の「ピー」(960 Hz)は、およそ何 Hz に聞こえる?

  2. Q2雨上がりの空に虹を探すとき、どちらを向けばよい?

  3. Q3偏光サングラスで、水面のぎらつきが減るのはなぜ?

0 / 3 問に回答

高校生のうちに試せること

  • ストローの笛で気柱の共鳴を確かめる

    ストローの片方の端をセロハンテープでふさぎ、開いた口を下くちびるに軽く当てて、横から息を吹きかけましょう。長さを 20 cm、15 cm、10 cm と変えて、音の高さを比べます。音の高さ(周波数)を表示するスマートフォンのアプリがあれば、計算の値と比べてみてください。

  • 偏光サングラスで液晶画面を見る

    偏光レンズのサングラスがあれば、かけたままパソコンや電卓の液晶画面を見て、頭をゆっくり傾けましょう。ある角度で画面が暗くなります。透明なクリアファイルにセロハンテープを何枚か重ねて貼り、画面との間にかざすと、色がついて見えることも確かめてください。

  • ホースの水で虹をつくる

    晴れた日の朝か夕方に、太陽を背にして、ホースの先から細かい霧のように水をまきましょう。自分の頭の影のあたりを中心にした円の上に、虹が現れます。太陽を直接見ないように気をつけてください。

  • シミュレーションで波の干渉を見る

    コロラド大学ボルダー校が公開している無料のシミュレーション PhET の「波の干渉」を使いましょう。蛇口の水滴やスピーカー、レーザーで波を出し、2 つの波が重なる模様を観察できます。2 つの波源の間隔や振動数を変えて、強め合う所と弱め合う所の変わり方を確かめましょう。

    PhET「波の干渉」

「波(音と光)」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 69 件から探せます。

研究室をすべて見る(55 件)

よくある質問

音と光は、どちらも波なのに何が違うのですか?

音は空気などの物質が揺れて伝わる縦波で、物質のない真空中は伝わりません。光は電磁波という横波で、真空中も秒速約 30 万 km で進みます。波長も大きく違い、人に聞こえる音はおよそ 2 cm から 17 m、目に見える光は 0.0004〜0.0008 mm ほどです。この差が、回り込みやすさなどの違いになります。

波の単元が苦手です。どこから復習すればよいですか?

まず物理基礎の「速さ = 振動数 × 波長」と、横波・縦波の違いを確かめてください。次に、波形のグラフが「ある瞬間の形」なのか「ある 1 点の時間変化」なのかを区別します。シミュレーションで波を動かして見ると、グラフの意味がつかみやすくなります。

波の分野は、どんな仕事につながりますか?

スピーカーや楽器などの音響機器の開発、カメラや眼鏡のレンズの設計、通信機器やレーダーの開発、医療の超音波診断などがあります。建物の音の響きを設計する仕事や、気象レーダーで雨を観測する仕事にも、波の知識が生かされています。