図 1 文学の広がり文学の広がり 5
応用: 映像・演劇と創作
文学は、本の中の文字だけではありません。舞台の台詞、語り継がれた昔話、映画やマンガ・アニメの物語も、文学の研究の対象です。自分で書いたり訳したりする創作も学べます。

ひとことで言うと
同じ原作を、小説・アニメ・舞台で比べる
人気のマンガがアニメになり、舞台になると、同じ場面でも見せ方が変わります。どこを残し、どこを変えたのかを比べると、それぞれの表現の得意なことが見えてきます。文字で書かれた文学と、ほかの表現とのつながりを考えるのが、この分野です。

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演劇: 600 年続く舞台と、劇場の形をした博物館
日本には、長い歴史をもつ舞台芸術があります。能は室町時代に観阿弥・世阿弥の親子が大成した芸能で、能と狂言を合わせた能楽は 2008 年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。人形浄瑠璃文楽と歌舞伎も、同じ年に登録されています。
江戸時代の大坂では、1703 年に近松門左衛門の人形浄瑠璃『曽根崎心中』が竹本座で初めて上演されました。その 1 か月ほど前に大坂で実際に起きた心中事件をもとにした作品で、大きな評判を呼びました。台本(戯曲)を読むだけでなく、語りや音楽、人形の動きと合わせて作品を考えるのが、演劇の研究です。
東京の早稲田大学には、1928 年に開館した演劇博物館があります。坪内逍遥が 70 歳を迎えたことと、シェイクスピア全集全 40 巻の翻訳が完成したことを記念して建てられました。建物は 16 世紀イギリスの劇場「フォーチュン座」を模していて、正面の張り出しが舞台に見立てられています。錦絵や舞台写真など、100 万点以上の資料が集められています。
演劇は、台本の言葉と、声・音楽・動きが合わさって生まれる文学です。
図解日本の 3 つの古典芸能
能
- 室町時代に観阿弥・世阿弥が大成
- 謡と囃子に合わせて舞う。主役は面をつけることが多い
人形浄瑠璃文楽
- 江戸時代の大坂で発展
- 太夫の語り・三味線・人形遣いで演じる
歌舞伎
- 江戸時代の初めに始まる
- 役者の演技と音楽・舞踊で見せる


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口承文芸: 語り継がれた物語を聞き取る
文字で書かれる前から、物語は人の声で語り継がれてきました。『平家物語』も、琵琶法師が琵琶を弾きながら語って広めた物語です。昔話や伝説、わらべうた、ことわざのように、口から口へ伝わる言葉の作品を口承文芸と呼びます。
1910 年に出た柳田國男の『遠野物語』は、岩手県遠野の出身で、当時早稲田大学の学生だった佐々木喜善が語った話を、柳田が書き留めた本です。河童や座敷童子、天狗などの話が、119 話収められています。遠野には、いまも河童が住んでいたと伝わる「カッパ淵」があります。
大学によっては、地域のお年寄りから昔話を聞き取って記録する調査も行われています。同じ昔話でも、語る人や地域によって筋や言い回しが少しずつ違います。録音と書き起こしを重ねて、消えかけている言葉の文化を残していきます。
声で伝わる物語には、文字の本とは違う工夫と変化があります。
図解昔話が語り継がれる輪
- 1聞く家族や地域の人から話を聞く
- 2覚える自分の言葉で筋を覚える
- 3語る次の世代に語って聞かせる
- 4少し変わる語る人ごとに、言い回しや筋が変わる


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マンガ・アニメ・映画: 物語を絵と動きで読む
日本学術会議の参照基準は、口承文芸や演劇、映画、マンガ・アニメも、文学としての面をもつ限り、文学の研究の対象になるとしています。コマ割りやカメラの動き、音楽も、物語を伝える表現の一つとして読み解きます。
京都精華大学は 2006 年度に、日本の大学で初めてマンガ学部を開きました。同じ年の 11 月には、京都市と京都精華大学が共同で運営する京都国際マンガミュージアムが開館しています。昭和 4 年に建てられた元小学校の校舎を使い、約 30 万点のマンガ資料を収めています。
小説や古典が映画やアニメになるとき、どこが変わるかを比べる研究を「アダプテーション(翻案)研究」と呼びます。原作の文章では登場人物の心の中が書かれていても、映像では表情や音楽、間の取り方で表すことになります。比べてみると、それぞれの表現が得意なことが見えてきます。
マンガや映画も、物語のしくみを考える大事な材料です。
図解原作と映像を比べる
- 1原作で、その場面の文章を読む
- 2映画で、同じ場面の映像と音を見る
- 3足された部分と削られた部分を書き出す


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創作・翻訳: 書く人、訳す人になる
文学部や文芸学部・文芸学科には、小説や詩、脚本を書く授業を開いている大学があります。作品を書いて、ゼミの仲間や教員から講評を受け、書き直すことをくり返します。参照基準も、卒業論文のほかに、創作や翻訳などを学びの成果として挙げています。
高校生が参加できる場もあります。愛媛県松山市で全国大会が開かれる「俳句甲子園」は、5 人 1 チームで出場する大会です。俳句を作り、相手チームの句について議論し合って、作品と鑑賞の力を競います。2026 年の大会で 29 回目を迎えました。
翻訳も創作の一つです。外国の小説を日本語に、日本のマンガや小説を外国語に訳すとき、言葉遊びや方言、敬語をどう移すかに、訳す人の工夫が表れます。大学では、同じ文章を何人かで訳し、訳し方の違いを話し合う授業もあります。
高校生のうちに試せること
俳句甲子園に挑戦する
高校生 5 人でチームを作り、地方大会で優勝するか投句審査で選ばれると、松山市の全国大会に出られます。兼題(お題)や申し込みの方法は、公式サイトで年度ごとに確かめましょう。
俳句甲子園(全国高等学校俳句選手権大会)演劇博物館を訪ねる
東京・早稲田にある演劇博物館では、錦絵や舞台の衣装、人形などの資料を見られます。建物そのものも、劇場の形をした展示物です。開館時間や展示の内容は、公式サイトで確かめましょう。
早稲田大学坪内博士記念演劇博物館原作と映像化の作品を見比べる
原作のある映画やアニメを 1 つ選び、同じ場面を原作と見比べてみましょう。足された部分と削られた部分を書き出し、なぜ変えたのかを考えてみてください。
身近な人から昔話を聞き取る
祖父母や地域の人に、子どものころに聞いた昔話や言い伝えを聞いてみましょう。許可をもらって録音し、書き起こすと、方言や言い回しの面白さに気づきます。
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よくある質問
演劇や映画を学びたい場合、文学部と芸術系の学部のどちらがよいですか?
作品を分析し、歴史や理論から考えたい人には、文学部の演劇・映像の専攻が合っています。演じる・撮るなどの実技を中心に学びたい人は、芸術系の学部や学科も調べてみてください。両方を組み合わせた授業を開いている大学もあります。
小説を書く授業では、どんなことをしますか?
多くは、短い作品を書いて提出し、ゼミの仲間や教員から講評を受けて書き直すことをくり返します。名作の文章を分析して、書き方の工夫を学ぶこともあります。内容は大学によって異なるので、シラバスで確かめてください。