図 1 機械工学の広がり機械工学の広がり 4
設計・制御・生産
4 つの力学で確かめた考えを図面にし、思いどおりに動くよう制御し、実際の形に作り上げる。機械設計・製図、制御工学、加工・生産、CAD を学ぶ、ものづくりの中心の分野です。

ひとことで言うと
プラモデルは、だれが組んでも同じ形になる
プラモデルは、説明書の図と、ぴったり合うように作られた部品があるから、だれが組み立てても同じ形になります。機械づくりも同じです。設計で形と寸法を決めて図面で伝え、正確な加工で部品を作り、制御で思いどおりに動かします。

01
機械設計: 壊れず、作れて、使いやすい形を決める
機械設計は、4 つの力学の計算をもとに、部品の形・寸法・材料を決める仕事です。壊れないことに加えて、作りやすく、組み立てやすく、使う人が安全で、値段に見合うことまで考えます。
部品どうしをぴったり合わせるには、寸法の「ずれてよい範囲」(公差)を決めます。たとえば軸の直径を「20 mm、ずれは 0.01 mm まで」のように指定します。ねじやベアリングのように、規格で寸法が決まった部品を上手に使うのも設計の基本です。
小さな寸法を測る道具の一つがマイクロメータです。1930 年代の日本は輸入に頼っていましたが、1936 年に 0.01 mm まで読める国産品が完成しました。最初の合格品 100 個から、さらに選び抜いた 17 個のうちの 1 個が、2026 年に機械遺産(第 134 号)に認定されています。
設計は、計算と現実のものづくりをつなぐ仕事です。
図解設計から完成まで(例)
- 1構想何を、だれのために作るかを決める
- 2計算強さ・動き・熱を力学で確かめる
- 3図面CAD で形・寸法・公差を決める
- 4試作・試験作って測り、壊して確かめる
- 5改良結果を図面に戻して直す

02
製図と CAD: 形を正確に伝える共通の言葉
図面は、設計した人の考えを、作る人に正確に伝える言葉です。日本の機械製図の規格(JIS B 0001)では、品物を正面・上・横から見た図を決まった位置に並べる「第三角法」で描きます。国によっては「第一角法」を使い、図の並べ方が逆になるため、海外の図面を読むときは注意が要ります。
かつては製図板に向かい、手で線を引いていました。1953 年に日本で生まれた製図機械「ドラフター MH-I」は、ベルトとプーリーで定規の平行を正確に保ちます。製図を速く、正確にした機械で、これも機械遺産(第 21 号)です。
いまは 3D CAD で、画面の中に立体の部品を組み立てます。部品どうしがぶつからないか、動かしたときに当たらないかを確かめ、そのデータを強さの計算や加工にも使います。多くの大学では、1 年生で図学や製図の基本を学び、上の学年で CAD を使った設計の演習に進みます。
図面は、だれが読んでも同じ物が作れるように描くのが決まりです。
図解図の並べ方の 2 つのルール
第三角法
- 日本の機械製図(JIS)で使う
- 上から見た図を正面図の上に置く
- 右から見た図を正面図の右に置く
第一角法
- 国によってはこちらを使う
- 上から見た図を正面図の下に置く
- 右から見た図を正面図の左に置く


03
制御工学: 測って、比べて、直す
エアコンは、部屋の温度を測り、設定温度と比べ、差が大きければ強く、小さければ弱く運転します。結果を測り、目標との差をなくすように動かし方を直し続けるしくみをフィードバック制御と呼びます。
その原点の一つが、18 世紀の終わりにジェームズ・ワットが蒸気機関に取り付けた遠心調速機です。回転が速くなると、回る 2 つの球が遠心力で外へ開き、蒸気の弁を絞って回転を落とします。1868 年には物理学者マクスウェルがこの調速機の動きを数式で分析し、制御理論の出発点となる論文を書きました。
いまの制御は、目標との差、差がたまった量、差が変わる速さの 3 つを組み合わせる PID 制御が基本です。ドローンが風の中で同じ場所に浮いていられるのも、傾きを細かく測って、プロペラの回転を直し続けているからです。大学では、微分方程式を使って、揺れずに速く目標に近づける調整のしかたを学びます。
「測って、比べて、直す」をくり返すことで、機械は目標どおりに動きます。
図解フィードバック制御の輪
- 1測るセンサーで温度や速さを測る
- 2比べる目標との差を計算する
- 3直す差が小さくなるように命令を変える
- 4動くモーターやヒーターが動く


04
安全のしくみ: 両手で押さないと動かないプレス機
金属の板を型で打ち抜くプレス機は、大きな力で一気に動くため、手を挟まれる事故が起きてきました。そこで、左右 2 つのボタンを両手で押したときだけ動く「両手操作式」のしくみがあります。両手がボタンの上にあれば、型の間に手が入ることはありません。
これは、条件がそろったときだけ動かす論理回路の考え方です。「左のボタン AND 右のボタン」で、両方が押されたときだけ動きます。厚生労働省の規格には、片方を押したままにする不正な使い方を防ぐ決まりもあります。左右を押す時間の差が 0.5 秒以内でないと、動かない構造が求められています。
工場の機械は、決められた順番と条件で動作を進める「シーケンス制御」でも動いています。安全カバーが閉じていなければ動かない、非常停止ボタンを押せば必ず止まる。こうした安全の設計も、機械工学の大切な仕事です。
人がまちがえても危なくならないように作るのが、安全の設計です。

05
加工・生産: 図面を形にする
図面の形を実際の部品にするのが加工です。材料を削る切削、型で押して形を作るプレス、溶かした金属を型に流し込む鋳造、金属どうしをつなぐ溶接など、方法はさまざまです。どの方法で作るかによって、設計できる形も変わります。
金属を回しながら刃物を当てて削る旋盤は、機械を作るための機械(マザーマシン)の代表です。1889 年に池貝庄太郎と弟の喜四郎が、自分の工場のために作った旋盤があります。動力で動く国産の旋盤として現存最古のもので、機械遺産(第 53 号)に認定されています。
材料を少しずつ積み重ねて形を作る 3D プリンタの考え方は、日本で生まれました。1980 年、名古屋市工業研究所の小玉秀男さんは、展示会で新聞の版下作りの装置を見ました。紫外線で固まる液体を使う装置で、層を重ねれば立体ができると思いついたのです。最初の実験では、厚さ 2 mm の層を 27 層重ね、高さ 54 mm の家の模型を作っています。
小玉さんは特許の手続きがうまくいかず、権利を得られませんでした。後の講演では、自分の失敗を「反面教師にしていただければ嬉しい」と語っています。3D プリンタはいま、試作品づくりから医療、航空機の部品まで広がっています。

高校生のうちに試せること
無料の 3D CAD で部品を作る
Tinkercad は、ブラウザで使える無料の 3D CAD です。箱や円柱を組み合わせて、スマートフォンのスタンドなど身近な物を設計してみましょう。利用の条件は、サービスの案内で確かめてください。
Tinkercad身のまわりの「測って直す」を探す
エアコン、炊飯器、自動ドア、エレベーターなどが、何を測って、どう動き方を直しているかを書き出してみましょう。センサーと動く部分を見つけると、制御のしくみが見えてきます。
高専ロボコンの試合を見る
高専ロボコンは、1988 年から続く、全国の高専生によるロボットコンテストです。毎年変わる競技の課題に、設計・制御・加工の工夫で挑みます。大会の様子は公式サイトで確かめられます。
高専ロボコン
「設計・制御・生産」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 204 件から探せます。
よくある質問
絵を描くのが苦手でも、製図や CAD はできますか?
製図は、決まったルールに従って形と寸法を正確に表す作業で、絵の上手さとは別の力です。多くの大学では図学の基本から学び、CAD では線をコンピュータが正確に引いてくれます。大事なのは、立体を頭の中で回して考える練習です。
制御工学は、機械工学と電気電子工学のどちらで学べますか?
どちらでも学べます。機械工学では、ロボットや自動車など、動く機械の特徴を踏まえた制御を学びます。電気電子工学では、モーターや回路、センサーの側から学ぶことが多くあります。両方を組み合わせる分野はメカトロニクスと呼ばれます。






