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図 1 機械工学の広がり機械工学の広がり 2

材料の強さ

部品はどこまでの力に耐えられるのか。何万回もくり返す力で壊れないか。材料の性質と形から強さを計算し、壊れない機械を設計する分野です。材料力学・機械材料・破壊と疲労・強度の計算(CAE)を学びます。

材料試験機で金属の棒を引っ張る学生、立てた定規と寝かせた定規、角の丸い飛行機の窓の模型、色分けされた部品の図を映すパソコン

ひとことで言うと

針金は、何度も曲げるとポキッと折れる

針金は 1 回曲げただけでは折れませんが、同じ所を何度も曲げ伸ばしすると、やがてポキッと折れます。小さな力でも、くり返すと壊れることがある。材料の強さを学ぶ分野は、こうした壊れ方を数字で予測して、壊れない形と材料を選びます。

01

応力: 力を「面積あたり」で考える

同じ人が歩いても、スニーカーより細いヒールの靴のほうが、床に跡が残りやすくなります。材料力学では、力をそれがかかる面積で割った応力で、材料にとっての厳しさをはかります。

体重 50 kg の人(重さは約 490 N)が、面積 1 cm² のヒールに全体重をかけると、応力は 1 mm² あたり約 4.9 N です。靴底を仮に 150 cm² とすると約 0.033 N。ヒールの先は、靴底の約 150 倍も厳しい状態です。

機械や建物によく使う一般構造用の鋼(SS400)は、規格で強さが決められています。引っ張って切れるまでの強さ(引張強さ)は、1 mm² あたり 400〜510 N です。直径 1 cm の棒なら、約 3 トンの重さで引っ張るまで切れません。

ただし、それより小さな力で、元に戻らない伸び(降伏)が始まります。そこで設計では、壊れる力に対して何分の 1 までしか使わないかという余裕(安全率)を見込んで、部品の太さや形を決めます。

力の大きさだけでなく「面積あたり」で考えるのが、材料力学の第一歩です。

図解ヒールとスニーカーの応力を比べる

入力体重 50 kg(約 490 N)の人が、片足に全体重をかける
  1. 1ヒールの先 1 cm² = 100 mm²: 490 ÷ 100 = 4.9 N/mm²
  2. 2靴底(仮に 150 cm²): 490 ÷ 15,000 mm² ≒ 0.033 N/mm²
  3. 34.9 ÷ 0.033 ≒ 150
結果同じ体重でも、ヒールの先は靴底の約 150 倍の応力を床に加える

02

形で強くする: 定規は立てると曲がりにくい

定規を平らにして端を押すと、すぐにしなります。同じ定規を縦に立てて押すと、ほとんど曲がりません。材料も重さも同じなのに、向きを変えるだけで曲がりにくさが大きく変わります。

曲がりにくさは、断面の形で決まる断面二次モーメントで表します。長方形なら「幅 × 厚さ³ ÷ 12」です。幅 3 cm・厚さ 1 mm の定規を立てると、寝かせたときの (30 ÷ 1)² = 900 倍、曲がりにくくなります。

鉄道のレールや、ビルの柱や梁に使う H 形の鋼材が、上下に厚い部分をもつ形をしているのはこのためです。自転車のフレームのパイプや鳥の骨が中空なのも、軽さを保ちながら曲がりにくくする形です。

材料を増やさなくても、形を工夫すれば強くできます。

図解同じ定規でも、向きで大違い

寝かせる

  • 幅 30 mm・厚さ 1 mm
  • 端を押すとすぐにしなる

立てる

  • 幅 1 mm・高さ 30 mm
  • 曲がりにくさは 900 倍

H 形・パイプ

  • 材料を上下や外側に集める
  • 軽くて曲がりにくい

03

破壊と疲労: くり返す力で壊れる

1 回なら平気な力でも、何万回もくり返すと小さな亀裂が生まれ、少しずつ広がって壊れることがあります。これを金属の疲労と呼びます。直径 60 cm のタイヤは、1 km で約 530 回転します。10 万 km 走ると、軸には約 5,300 万回も力がくり返しかかります。

疲労の怖さを世界に知らせたのが、イギリスの旅客機コメットです。1952 年 5 月、世界初のジェット旅客機として営業運航を始めました。ところが 1954 年 1 月と 4 月、飛行中の機体が地中海で空中分解する事故が続き、全機が飛行を止めました。

調査チームは、別のコメットの胴体を大きな水槽に沈め、飛行のたびに機内にかかる圧力を水圧でくり返し再現しました。それまでの飛行と合わせて約 3,000 回分の加圧で、角ばった窓の角から胴体が裂けました。角に、予想よりはるかに大きな応力が集中していたのです。

いまの旅客機の窓の角が丸いのも、力を角に集中させないための形です。事故の原因を突き止め、次の設計に生かすことも、この分野の大切な仕事です。

壊れた理由を確かめて形を直すことで、いまの安全な乗り物ができています。

図解コメット機の疲労を突き止めるまで

  1. 11952 年世界初のジェット旅客機として就航
  2. 21954 年空中分解が続き、全機が飛行を停止
  3. 3水槽の試験胴体に圧力をくり返しかけて再現
  4. 4約 3,000 回角ばった窓の角から胴体が裂けた
博物館の格納庫に展示された、窓の穴が並ぶ飛行機の胴体の外板
水槽の試験で裂けたコメット機の胴体の一部(イギリス空軍博物館コスフォード館)。角ばった窓の角から、疲労の亀裂が広がっていました。写真: Alan Wilson(CC BY-SA 2.0・Wikimedia Commons)

04

選び、試し、計算する: 機械材料と CAE

鉄は強くて安く、アルミニウムは軽くてさびにくく、炭素繊維を樹脂で固めた材料(CFRP)は軽くて強い。機械材料の授業では、金属の中の結晶の並び方や、熱処理で硬さが変わるしくみまで学び、用途に合う材料を選べるようにします。

材料の強さは、実際に引っ張って確かめます。多くの大学の機械工学実験では、試験機で金属の棒を引っ張り、力と伸びを記録しながら、切れるまでを観察します。1908 年に神戸の造船所に置かれたバックトン万能試験機は、日本の材料強度試験の原点を示すとされます。現存する最も古いバックトン試験機で、機械遺産(第 20 号)に認定されています。

いまは、部品をコンピュータの中で細かい要素に分け、どこにどれだけ応力がかかるかを計算する有限要素法が欠かせません。こうした計算(CAE)で、試作の前に弱い所を色分けで見つけ、形を直してから作ります。

クイズ材料の強さクイズ

本文を思い出しながら答えてください。

  1. Q1幅 3 cm・厚さ 1 mm の定規を、寝かせた向きから立てると、曲がりにくさは何倍?

  2. Q2旅客機の窓の角が丸い形になっている、いちばんの理由は?

  3. Q31 回なら平気な力でも、くり返すうちに亀裂ができて壊れることがあります。これを何と呼ぶ?

0 / 3 問に回答
材料試験機。上下のつかみ具に、2 枚の金属板をつないだ試験片が取り付けられている
材料試験機で、接着した 2 枚の鋼板を引っ張る試験。力と伸びを測りながら、壊れるまでの様子を調べます。写真: Cjp24(CC BY-SA 3.0・Wikimedia Commons)

高校生のうちに試せること

  • クリップの「疲労」を数える

    ゼムクリップを伸ばし、同じ所を曲げ伸ばしして、折れるまでの回数を数えましょう。曲げる角度を大きくしたときと小さくしたときで回数を比べると、疲労の性質が見えてきます。曲げた所は熱くなるので気をつけてください。

  • 紙 1 枚で「形の強さ」を試す

    紙を平らに机の端から出して消しゴムをのせると、すぐに垂れます。同じ紙をじゃばらに折ったり、筒に丸めたりして、どこまでのせられるかを比べましょう。

  • 失敗知識データベースで事故の原因を読む

    失敗学会が公開しているデータベースで、機械や航空・宇宙の事故がなぜ起き、どう対策したかを読めます。原因と対策を自分の言葉でまとめると、設計の考え方が身につきます。

    失敗知識データベース

「材料の強さ」に関連するコミュニティ

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よくある質問

材料力学は、高校のどの科目とつながっていますか?

物理の「力のつり合い」と「ばね(フックの法則)」が入口です。大学では、力と変形の関係を、微分積分や行列を使って部品の形ごとに計算します。多くの大学では 2 年生で学ぶ、機械工学の柱の一つです。

材料工学科とは何が違うのですか?

材料工学科は、新しい合金やセラミックスなど、材料そのものを作って性質を調べることが中心です。機械工学では、材料の性質を使って、部品が壊れない形や大きさを決めることに重心があります。両方にまたがる研究室も多くあります。