
ひとことで言うと
遠くの雷は、光ってから音が届く
雷が光ってから音が聞こえるまでの秒数で、雷までの距離が分かります。宇宙でも、光が届くまでの時間から距離を考え、届いた光の色や強さから、星の温度や中身を読み取ります。地上で確かめた物理の法則を、宇宙のかなたに当てはめるのがこの分野です。

01
光で見る宇宙: 見ている星は過去の姿
光は 1 秒間に約 30 万 km 進みます。地球 1 周は約 4 万 km なので、1 秒で地球を 7 周半する速さです。それでも宇宙はとても広く、遠くの星の光は、何年もかけて地球に届きます。
太陽と地球の距離は約 1 億 4,960 万 km。光でも約 8 分 19 秒かかります。いま見ている太陽は、約 8 分前の姿です。国立天文台によると、宇宙は 138 億年前に生まれたと考えられています。120 億光年先の天体を見ることは、宇宙が生まれて 18 億年のころの姿を見ることになります。
日本の国立天文台は、ハワイ島マウナケアの山頂域に、口径 8.2 m の鏡をもつすばる望遠鏡を置いています。1999 年に初めて星の光をとらえてから 25 年以上、遠い宇宙の銀河を調べ続けています。
遠くを見るほど、昔の宇宙を見ていることになります。
図解太陽の光が届く時間を計算する
- 1149,600,000 ÷ 300,000 ≒ 499 秒
- 2499 秒 ÷ 60 ≒ 8.3 分
- 3正確な光の速さ(秒速 299,792 km)で計算すると約 8 分 19 秒


02
相対性理論: スマートフォンの地図を支える
アインシュタインの相対性理論によると、時間の進み方は、動く速さや重力の強さで変わります。速く動く時計は遅れ、重力の弱い所にある時計は速く進みます。ふだんの暮らしでは気づかないほどの、わずかな差です。
ところが、スマートフォンの位置を決める GPS では、この差が問題になります。GPS の衛星は、高度約 2 万 km を時速約 1 万 4,000 km で回っています。オハイオ州立大学の解説によると、衛星の時計は、速さの効果で 1 日に約 7 マイクロ秒遅れ、重力の効果で約 45 マイクロ秒進みます。差し引きで、1 日に約 38 マイクロ秒進むのです。
38 マイクロ秒は 100 万分の 38 秒。光はこの間に約 11 km 進みます。補正しなければ、位置は 1 日に約 10 km ずつずれていきます。そこで GPS は、相対性理論の効果を見込んで時計を調整しています。地図アプリで迷わずに歩けるのは、100 年以上前の理論のおかげでもあります。
宇宙の理論が、毎日使う道具の正確さを支えています。
図解GPS 衛星の時計のずれ
- 1速さの効果1 日に約 7 マイクロ秒遅れる
- 2重力の効果1 日に約 45 マイクロ秒進む
- 3差し引き1 日に約 38 マイクロ秒進む
- 4補正しないと位置が 1 日に約 10 km ずれる

03
ブラックホールを撮る: 地球サイズの望遠鏡
ブラックホールは、重力が強すぎて光さえ抜け出せない天体です。相対性理論から存在が予言されていましたが、自分では光を出さないため、長いあいだ姿を見ることはできませんでした。
2019 年 4 月 10 日、国際チームのイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)が、ブラックホールの撮影に成功したと発表しました。写したのは、5,500 万光年先の銀河 M87 の中心にある、太陽の 65 億倍の質量をもつブラックホールです。まわりで光るガスが、黒い影をリングのように縁取っています。
EHT は、世界 8 か所の電波望遠鏡を結んで、地球サイズの望遠鏡を仮想的に作りました。国立天文台によると、その解像度は人間の視力 300 万に相当し、月面に置いたゴルフボールが見えるほどです。日本の研究者も、データから画像を作る手法の開発などで貢献しました。2022 年には、天の川銀河の中心のブラックホールも撮影されています。
世界の望遠鏡をつなぐと、地球 1 個分の大きさの目になります。


04
重力波: 時空のさざ波をとらえる
重力波は、重い天体が激しく動いたときに生まれ、空間そのものが伸び縮みしながら伝わる波です。アインシュタインが約 100 年前に予言しましたが、あまりに弱いため、本人も測れるとは考えていませんでした。
2015 年 9 月 14 日、アメリカの LIGO が初めて重力波をとらえました。2 つのブラックホールの合体で生まれ、13 億年かけて届いた波です。LIGO は、原子核の大きさの数千分の 1 という、わずかな長さの変化を測りました。この成果は 2017 年のノーベル物理学賞に選ばれています。
日本の重力波望遠鏡 KAGRA は、岐阜県飛騨市の神岡鉱山の地下にあります。長さ 3 km の腕でレーザー光を往復させ、揺れの少ない地下で、サファイアの鏡をマイナス 250 度まで冷やして観測するのが特徴です。アメリカの LIGO やヨーロッパの Virgo と協力して観測しています。


05
大学での学び方と、宇宙につながる仕事
天文学は、物理学科の中で学ぶ大学が多くあります。1・2 年で力学・電磁気学・熱力学を、3 年以降に量子力学・統計力学、宇宙物理学や相対性理論を学びます。星の光の色から温度や成分を知るには、原子の物理が欠かせません。
研究のスタイルは、観測・理論・シミュレーションの 3 つに大きく分かれます。すばる望遠鏡のデータは一般にも公開され、高校生や大学生の学びにも使われています。
大学院を出て研究者になる人のほか、人工衛星や望遠鏡の機器を作るメーカーに進む人もいます。観測データを扱う力はデータ分析や IT の仕事に、宇宙の面白さを伝える力は科学館やプラネタリウムの仕事に生かせます。
図解宇宙を調べる 3 つの方法
観測
- 望遠鏡で光や電波を集める
- データを解析して天体を調べる
- すばる望遠鏡・アルマ望遠鏡
理論
- 数式で天体のしくみを考える
- 相対性理論や量子力学を使う
- まだ見ぬ現象を予言する
シミュレーション
- コンピュータで宇宙を再現
- 銀河や星の誕生を計算する
- 観測と理論をつなぐ
高校生のうちに試せること
Mitaka で宇宙を旅する
国立天文台が公開している無料のソフト Mitaka では、地球から飛び立ち、太陽系や天の川銀河、宇宙の大規模構造まで自由に移動できます。光が届くまでの時間と距離の関係を、目で確かめましょう。動作環境は公式サイトで確認してください。
国立天文台 4D2U「Mitaka」雷の距離を計算する
雷が光ってから音が聞こえるまでの秒数を数え、音の速さ(秒速約 340 m)をかけてみましょう。光はほぼ一瞬で届くので、10 秒なら約 3.4 km 先です。同じ考え方で、天文学者は光の届く時間から星の距離を考えます。雷が鳴ったら、計算は建物の中で。
ジュニアセッションで研究を発表する
日本天文学会の年会では、中学生・高校生が自分たちの観測や研究を発表する「ジュニアセッション」が開かれています。部活や授業で調べたことを、研究者の前で発表できます。
日本天文学会「ジュニアセッション」
「宇宙・天文」に関連するコミュニティ
研究室・部活・サークルなど、全国の 216 件から探せます。
宇宙論(C研)
名古屋大学(愛知県)
天文・宇宙物理学
佐藤・廣島研究室
横浜国立大学(神奈川県)
理工学部 数物・電子情報系学科 物理工学教育プログラム・素粒子論・宇宙物理・佐藤 丈 教授
一般相対論・量子宇宙論(QG研)
名古屋大学(愛知県)
素粒子・ハドロン物理学
高エネルギー宇宙・可視赤外線天文学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 物理学プログラム・物理学・深澤 泰司 教授
人工衛星/キューブサット/大気球による天体観測、ブラックホール、中性子星などを研究している。
宇宙物理学
広島大学(広島県)
先進理工系科学研究科 物理学プログラム・物理学・岡部 信広 准教授
多波長天文学、暗黒物質、銀河団などを研究している。

宇宙物理学
岡山大学(岡山県)
理学部 物理学科・宇宙物理学・石野 宏和 教授
宇宙背景放射の偏光を精密に測るため、科学衛星の準備や超伝導検出器の開発を行う。
よくある質問
自分の望遠鏡を持っていなくても、天文学の研究はできますか?
できます。多くの研究者は、大きな望遠鏡に観測を申し込んだり、公開されたデータを解析したりして研究しています。すばる望遠鏡などのデータは一般にも公開されていて、パソコンでの解析から始められます。
相対性理論は、大学の何年で学びますか?
特殊相対性理論は、多くの大学で 1・2 年の力学や電磁気学の中で学びます。一般相対性理論は数学の準備が必要なため、3・4 年の専門科目や大学院で学ぶことが多く、大学によって異なります。



