大学カタログ

図 3 仕事での生かし方仕事での生かし方 4

研究者

大学院に進み、大学や研究所で、素粒子や宇宙、新しい物質の謎に挑む仕事です。世界中の研究者とチームを組み、加速器や望遠鏡、地下の巨大な観測装置で、まだだれも知らない自然の姿を探ります。

満天の星の下に並ぶパラボラアンテナと、地下の巨大な空洞に並ぶ丸いセンサー、その手前で画面を囲んで議論する若い研究者たち

ひとことで言うと

最後のページがない推理小説

推理小説では、手がかりを集めて犯人を突き止めます。物理の研究者も、実験や観測で集めた手がかりから、自然がどうなっているかを推理します。違うのは、答えの書かれた最後のページが、まだどこにもないことです。

01

どんな仕事?: 謎を解き、世界に発表する

物理の研究者の仕事の中心は、自然についての問いを立て、それを確かめることです。理論の研究者は、紙と鉛筆やスーパーコンピュータで、現象を説明する式や予言を導きます。実験の研究者は、装置をつくり、測定や観測で予言が正しいかを確かめます。

成果は論文にまとめ、ほかの研究者の審査(査読)を受けて学術誌に載せます。学会で発表して議論することも大切な仕事です。日本物理学会は 1877 年に創立された学会で、会員は約 1 万 5,000 人います。大学の研究者なら、講義や学生の指導、研究費の申請も受け持ちます。

研究の道具は、問いによってさまざまです。物質を絶対零度近くまで冷やす装置、宇宙から届く電波をとらえる望遠鏡、地下深くに置かれた検出器などを使います。まだだれも見たことのないデータを最初に見ることは、研究者ならではの喜びです。

研究すること、発表すること、次の世代を育てることが組み合わさった仕事です。

図解物理の研究者の仕事

物理の研究者
  • 研究する理論・実験・観測で謎を確かめる
  • 論文を書く査読を経て、学術誌に載せる
  • 学会で発表国内外の研究者と議論する
  • 学生を育てる講義や研究室で指導する
  • 研究費を得る計画を書いて申請する
  • 社会に伝える講演や一般公開で話す

02

世界のチームで、巨大な装置を動かす

いまの物理学の最前線では、1 つの国ではつくれない大きな装置を、世界の国々が協力してつくります。南米チリの標高 5,000 m の高地にあるアルマ望遠鏡は、日本を含む 22 の国と地域が協力して運用しています。66 台のアンテナを結んで、1 つの巨大な電波望遠鏡として働かせます。

日本はこの計画のおよそ 4 分の 1 を担い、66 台のうち 16 台のアンテナを開発しました。国立天文台のスタッフ十数名が現地に赴任し、世界から集まった研究者や技術者と一緒に望遠鏡を動かしています。

岐阜県飛騨市の地下 600 m では、次の世代の素粒子の観測装置、ハイパーカミオカンデの建設が進んでいます。2028 年の観測開始を目指し、2026 年 9 月の時点で 23 か国から約 680 人の研究者が参加しています。国内外の大学院生も加わり、第一線で研究をしています。いまの高校生が大学院に進むころには、観測が始まっている予定です。

大きな謎ほど、国や分野をこえたチームで挑みます。

クイズ研究の世界のクイズ

答えを 1 つ選んでください。

  1. Q1アルマ望遠鏡の 66 台のアンテナのうち、日本が開発したのは何台?

  2. Q22026 年 9 月の時点で、ハイパーカミオカンデに参加している研究者はおよそ何人?

  3. Q3日本物理学会の会員で、ノーベル物理学賞を受けた人は何人?

0 / 3 問に回答
満天の星空の下、高地の平原に並ぶ白い大きなパラボラアンテナの群れ
チリのアタカマ砂漠の高地に並ぶ、アルマ望遠鏡の直径 12 m のアンテナ。66 台を結んで、1 つの巨大な電波望遠鏡として働かせます。写真: ESO/C. Malin(CC BY 4.0・Wikimedia Commons)

03

実験の若手研究者の 1 日(例)

ここでは、大学の研究室に所属し、地下の観測施設で実験に加わる若手の研究者(ポストドクター)の 1 日の例を紹介します。大きな実験では、装置を止めずに動かし続けるため、研究者が交代で見守る「シフト」を組みます。

日中は、装置の点検や、データを解析するプログラムづくりをします。海外の共同研究者との会議は、時差のため夕方や夜になることもあります。会議の言葉は英語がふつうです。

解析で予想と違う結果が出たら、まず装置やプログラムのまちがいを疑います。それでも違いが残ったとき、そこに新しい発見が隠れているかもしれません。慎重さと好奇心の両方が求められる仕事です。

装置を守り、データを疑い、発見を確かめる。その積み重ねです。

図解実験の若手研究者の 1 日(例)

  1. 8:30シフトの引き継ぎ夜のあいだのデータの質を確かめる
  2. 10:00装置の点検センサーや電子回路の調子を見る
  3. 12:00昼休み
  4. 13:00データの解析解析のプログラムを書いて走らせる
  5. 16:00グループの会議解析の結果を報告し、議論する
  6. 18:00海外との会議時差に合わせ、英語で打ち合わせる
  7. 19:30学会の準備発表のスライドを作る

04

研究者への道と、働く場所

物理の研究者を目指す人は、大学院に進みます。2025 年 3 月に物理学の修士課程を修了した 980 人のうち、約 3 割の 292 人が博士課程などに進学しました。同じ年に物理学の博士課程を終えたのは、全国で 285 人です。そのうち 82 人が、ポストドクターなど任期つきの研究員として研究を続けています(学校基本調査)。

理学(物理学・化学・数学など)の分野全体では、博士課程を終えて就職した 856 人のうち、409 人が研究者として働き始めました。任期つきの研究員として経験を積みながら、公募に応募して大学や研究所の職を目指すのが、よくある道のりです。研究者の公募は、科学技術振興機構の「JREC-IN Portal」などに載ります。

働く場所は大学だけではありません。KEK(高エネルギー加速器研究機構)や国立天文台のように、全国の大学の研究者が共同で使う研究所や、理化学研究所のような国の研究所があります。企業の研究所で、新しい材料や量子コンピュータを研究する人もいます。1 つの謎を何年も追いかけられる人に向いた仕事です。

大学院の 5 年ほどで、自分の研究を世界に発表できる力を身につけます。

図解物理の研究者への道(例)

  1. 1学部4 年で研究室に入る
  2. 2修士課程多くは 2 年。実験や計算の基礎
  3. 3博士課程多くは 3 年。自分の成果をまとめる
  4. 4ポストドクター任期つきで研究の経験を積む
  5. 5大学・研究所・企業公募に応募し、研究を続ける

高校生のうちに試せること

  • ハイパーカミオカンデの地下を見学する

    東京大学宇宙線研究所は、建設中のハイパーカミオカンデの地下の空洞を、3 次元で見て回れるバーチャルツアーを無料で公開しています。地下 600 m に掘られた巨大な空間の大きさを、画面の中で確かめましょう。

    3D バーチャルツアー(東京大学宇宙線研究所)
  • 日本物理学会のオンライン物理講話を聞く

    日本物理学会は、毎月オンラインで物理の講演を配信しています。偶数月は、学生にも分かりやすい解説の講演です。中高生は会友の年会費が免除され、会友になると参加費が無料になります。

    公開講演会等(日本物理学会)
  • 研究者の公募をのぞいてみる

    JREC-IN Portal で、研究分野を「物理学」にしぼって求人を探してみましょう。大学や研究所、企業が、どんな研究をする人を募集しているかが分かり、研究者の仕事の具体的な姿が見えてきます。

    JREC-IN Portal(科学技術振興機構)

「研究者」に関連するコミュニティ

研究室・部活・サークルなど、全国の 265 件から探せます。

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よくある質問

研究者の仕事は、ずっと任期つきなのですか?

博士の学位を取ったあと、任期つきの研究員として経験を積む人が多くいます。そのあと公募に応募して、任期のない大学や研究所の職に就く人もいれば、企業の研究職に移る人もいます。

英語が苦手でも、研究者になれますか?

論文や国際会議は英語が中心です。大学院で論文を読み、発表を重ねるうちに慣れていく人が多くいます。高校の英語で身につける、読む・書く力が土台になります。

物理学科に入れば、大きな実験に参加できますか?

多くの大学では、4 年で研究室に入り、その研究室が参加している実験に加わります。どの実験に関われるかは研究室によって異なるので、志望する大学の研究室の一覧を見ておくと、入学後の姿をイメージしやすくなります。